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長崎県の離島・対馬から福岡市の福岡和白病院に患者を搬送していた医療搬送用ヘリコプターが海上で転覆した状態で見つかった事故で、同病院での勤務時に医療用ヘリの導入に関わった米盛(よねもり)病院(鹿児島市)の冨岡譲二副院長(63)が取材に応じた。冨岡さんは「離島やへき地に住むことが医療面で不利にならず、どんなところでも安心安全に暮らせることが理想だ。民間ヘリはそのツールの一つ」と語った。
ドクターヘリは運営費を国と都道府県が半分ずつ負担し、主に重症患者に対応している。一方、福岡和白病院が運用している医療用ヘリは2008年に病院が独自に導入した。
冨岡さんは05〜13年に福岡和白病院で勤務し、医療用ヘリ導入のプロジェクトリーダーを務めた。その背景の一つとして、当時、対馬では心筋梗塞(こうそく)などの死亡率が島外に比べて数倍高いという状況があったという。
離島では、島外に出る船の便数も限られ、すぐに必要な医療を受けられないことも多い。早期に治療したほうが合併症などのリスクを軽減できるが、病状などによってはドクターヘリが使えない場合があり、冨岡さんは「ドクターヘリの恩恵を受けられない人のために民間ヘリがある」と強調する。
福岡和白病院によると、医療用ヘリの導入以降の搬送件数は年間40〜102件。病院と長崎県の壱岐の間を約15分、対馬との間を約40分で移動することができ、離島医療を支える。担当者によると「8割ほどが壱岐・対馬からの搬送になる」という。
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壱岐と対馬は、博多港(福岡市)との間に高速船やフェリーの定期便があり、行き来する人も多い。福岡県のドクターヘリは県域を越えるため対応できないが、民間のヘリは柔軟な運用ができる。
冨岡さんが現在、副院長を務める米盛病院でも救急医療用ヘリ「レッドウイング」を運航している。鹿児島県のドクターヘリが対応できない場合に出動する補完的な役割を担い、離島が多い県内の地域医療を支えている。事業としては赤字だが、「救える命のために」と飛び続けている。
今回の事故には冨岡さんも大きな衝撃を受け、「亡くなられた患者らに哀悼の意を表するとともに、今後ヘリに乗る医師らのトラウマにならないようケアも必要だ」と話す。
本来は離島などでも高度な医療が受けられる社会が理想だとするが、現状ではヘリが不可欠だと考える。冨岡さんは「事故は本当に残念。民間の医療機関がヘリを運航するメリットはあり、この瞬間も対馬で治療できない人がいるかもしれない。事故で事業が途絶えることがないよう祈る」と語った。【宗岡敬介】
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