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富山市の電気設備工事会社に勤めていた男性(当時62歳)が出血性胃潰瘍で死亡したのは長時間労働による心身の負荷が原因だったとして、遺族が勤務先の会社に約7300万円の賠償を求めた訴訟の和解が14日、富山地裁で成立した。遺族側代理人によると、会社側は安全配慮義務違反があったことを認めているといい、「消化器系疾患で、会社側が賠償責任を受け入れるのは異例」としている。
厚生労働省は脳・心臓疾患と精神障害について労災の認定基準を設けている。ただ、消化器系疾患は認定基準がなく「仕事に従事したことで被った疾患」であることを立証するハードルは高い。
過去には十二指腸潰瘍を発症した貿易会社員の男性が労災と認められた最高裁判決(2004年)があるが、消化器系疾患が過労によるものかが争われた裁判例はほとんどないとされる。
訴状によると、男性は1986年に北陸電気工事(富山市)に入社し、技術者として勤務した。19年8月の定年退職後、再雇用されて放送局の建設現場の責任者を務めていたが、21年12月に自宅で出血性胃潰瘍を発症して死亡した。
遺族側の集計では、時間外労働は死亡前日までの1カ月間で約176時間、その前月は約145時間に上り、過労死ライン(直近1カ月で100時間、直近2〜6カ月の平均80時間)を上回っていた。
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富山労働基準監督署は23年5月、男性の死亡を労災と認定したが、遺族側は「過重な業務と出血性胃潰瘍による死亡には因果関係がある。従業員の健康を守る義務を怠っており、民事上の賠償責任がある」として会社を相手取った訴訟を起こしていた。
遺族側代理人によると、和解条項には、男性の死亡について会社側が安全配慮義務に違反していたことを認め、遺族側に解決金を支払うことが盛り込まれたという。代理人の松丸正弁護士(大阪弁護士会)は「同種事案への影響は大きいだろう。過労やストレスが消化器系疾患を発症・悪化させることは明らかで、国は認定基準を設けるべきだ」と話した。
北陸電気工事は「二度とこのような災害を起こさないよう時間外労働時間削減に努める」とのコメントを出した。【戸上文恵】
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