“雨の日の万博”はほとんど苦行? 事前準備を怠った筆者が後悔したこと

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2025年05月28日 08:00  リアルサウンド

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「せっかく大阪出張に来たのだから、ついでに話題の万博も取材して帰ろう。万博の『公式ガイドブック』を片手にマイナーな国のパビリオンなどを紹介すれば、リアルサウンド ブックならではの有意義な記事になるのでは?」と考えて、5月25日(日)の昼間に万博会場を訪れたのだが、完全に見立てが甘かった!


参考:大阪・関西万博を徹底解説!「わかりやすい」「行きたくなった」の声続々『大阪・関西万博ぴあ』重版決定


 やまない雨、どこに行っても避けられない人混み、延々と続く行列、濡れたベンチには座ることもできず、重く肩に食い込むバックパックは容赦無く体力を奪っていく……図らずも苦行のような万博観覧となってしまったが、これから訪れる方のために、雨の日の万博での注意点などをレポートともにお届けしたい。


■荷物は入場前にロッカーに預けるべし


 Osaka Metro中央線で夢洲駅に着き、群衆に流されるように進んでいくと東ゲートが見えてくる。ゲート前はなかなかの混雑ぶりで、11時に入場の予定だったが30分以上は並びそうだ。まぁ中に入ってしまえば大丈夫だろう。会場に入ったら、一泊二日の荷物がパンパンに詰まったバックパックをロッカーに預けて、まずは国内パビリオンが立ち並ぶ東ゲートゾーンを散策してみようかな……なんて呑気に構えていたが、ここですでに大きな過ちを犯していた。会場内にロッカーはなく、ゲート付近もしくは駅のロッカーに預ける必要があったことを知ったのは、残念ながらすべてを諦めて帰ろうとしたときだった。万博はとにかく歩け歩け地獄なので、大きな荷物は必ず入場前に預け、できるだけ身軽な状態にしておくのを忘れないでほしい。


 群がる人々をかき分けて、なんとかミャクミャクの写真を納めた後は、長蛇の列が並ぶ国内パビリオンの数々をスルーして大屋根リングへ。人気のパビリオンはスマホでの予約が必須で、それでもかなり並ぶということが入場してすぐに理解できたのは、不幸中の幸いか。『パナソニックグループパビリオン「ノモの国」』や『電力館 可能性のタマゴたち』などはいかにも先端テクノロジー満載というイメージで興味があったが、外観を眺めることができただけでも良しとするしかあるまい。


■大屋根リングで雨宿り


 世界的建築家・藤本壮介氏による大屋根リングは圧巻だ。高さ、幅、円周、どれをとっても映像や写真では伝わらないダイナミズムがあって、よくぞ木造でこれほどの規模の建築物をつくりあげたものだと感銘を受ける。携わった職人の方々には頭が下がる思いだ。建築が好きな方はこれを体感するだけでも、万博に行く価値があるといえるだろう。本当にすごい!


 大屋根リングの下は雨を凌げるので、避難民のように人々が集っており、地面にシートを敷いて休む外国人の方もいて、不思議なお祭り感があった。大屋根リング添いに移動すれば、あまり雨に当たらずに済むのは計算のうちだろう。雨の日は大屋根リングを十分に活用されたい。しかし、せっかく万博に来たとなれば登ってみたくなるのが人情。雨に濡れる覚悟で階段を登った。


 大屋根リングの上に登り、会場を眺めてすぐに確信した。「これは一日や二日、取材したくらいじゃあロクな記事は書けやしない……手に負えない規模感だ」と。目に入るパビリオンはどれも工夫が凝らされた立派なもので、一つ取材するだけでも十分な記事が書けそうだ。それでいて、どのパビリオンにも長蛇の列ができていて、とてもじゃないが雨の日に並ぶ気力は湧いてこない。


 あとから知ったことだが、この日の来場者は約12万人で、博覧会協会によると10月までの会期中に2820万人の来場を想定しており、想定の人数に達するには1日平均で約15万人のペースが必要とのこと。マックスの来場者数の際はこの日よりも混むということなので、相応の覚悟が必要だ。どうしても見たいパビリオンをひとつかふたつに絞って予約をして、あとは会場内を散策したり、入りやすい小さなパビリオンを見ていくという余裕を持ったプランを立てるのが良さそうだ。地元の人によると、晴れた日の平日夜などがオススメだという。


 そして雨の日の大屋根リング上を歩くのは、やはりなかなかに辛いものがある。一度登ったら次の階段までの距離が結構あるので、風雨に耐えて10分以上は歩かなければいけない。通路の水捌けはあまり良くなく、気づけば靴下までびしょ濡れになってしまった。雨が予測できる日なら、最初からフジロッカーのように長靴&ポンチョで参戦した方が良いかもしれない。


■マイナーな国のパビリオンも興味深い


 とにかく、早く屋根の下へ……人気のパビリオンをすっかり諦めて、どうにか入れそうなところを探してウロウロしていると、比較的空いている列があった。『セネガル館』の列だ。本当は隣のエジプト館に興味があったが、入場規制がかかっているので選択の余地はない。迷わず並んで、5分ほどで中に入ることができた。


 セネガルはアフリカの西海岸に位置する国で、フランス領時代の遺物やさまざまな自然公園があるという。入り口付近の映像では、日本風の衣装を着た男性が刀を振るいながら、これからのセネガルの発展を宣言している。ボードにはセネガルの歴史や未来のビジョンが写真と文章で説明されているのだが、これは日本語訳も欲しかったところだ。過去には奴隷貿易の拠点となったゴレ島の絵も飾られており、歴史を振り返る上でも貴重な展示となっているはず。来場者からも翻訳を希望する声があるそうなので、開催中に日本語訳が付くことを期待したい。


 セネガル館の他にも、伝統的な織物で民族の宇宙観を表現するチリ館、ヒンドゥー教徒が多く独自の若者文化が生まれているバングラデシュ館、ガイアナや東ティモールなどさまざまな国の展示を一挙に鑑賞できるコモンズB館などは鑑賞することができた。もともと見たかったパビリオンには残念ながら入れなかったが、これまで興味を抱く機会もなかった国の文化に触れることができたのは収穫だ。むしろ、偶然に入ったからこそ、世界の国々の多様性をリアルに感じることができたのではないかと思う。


■雨天時の休憩や食事には工夫が必要


 ところで、大屋根リング以外の会場内での休憩所というと、至るところにベンチなどが設置してあるものの、雨の日はびしょ濡れでほとんど座れる状態ではない。大屋根リングに囲まれた会場内は方向感覚を失いがちで、目当てのポイントに辿り着くのに想定以上に時間がかかることもある。あまりゆっくり休める状況ではないので、体力には十分に留意されたい。


 また、話題となった『スシロー 未来型万博店』はじめ、会場内のさまざまなところにユニークな飲食店があるものの、予約が必要な店舗も多く、食料の調達には苦労するはずだ。値段も高い(弁当ひとつ2,500円!)。会場内にセブンイレブンなどのコンビニも出店しているが、こちらも1時間待ちはザラだ。食料調達で時間を失いたくないという方は、食べ物の持ち込みも可能なので、事前にコンビニのおにぎりやペットボトルのお茶などを準備していくのが良いだろう。


 さて、あいにくの雨でほとんど苦行のような万博観覧だったが、要領がわかったので次回はもっとエンジョイできそうだと感じた。良くも悪くも想像以上のスケール感で、辛いこともあったけれど、やっぱりもう一度行ってみたいと思う。


 以下、筆者が気づいたポイントをまとめておくので、これから行こうと考えている方はご参考に。


・会場内にはロッカーがないので、重い荷物は駅やゲート付近のロッカーに預ける。
・どうしても見たいパビリオンは絞る。そしてしっかり予約する。
・雨天時は休憩できる箇所も減るので、大屋根リングを活用する。レジャーシートなどがあると便利。
・移動にも大屋根リングを活用する。これもあとから知ったのだが、会場内の移動はEVバスを活用すると良いらしい。
・足元も濡れる。雨の降り具合によっては長靴にしたほうが良いかも。
・パビリオン内に傘を持ち込めないケースが多い。パッと収納できる雨具があると便利。
・飲食店は並ぶし高い。弁当やコンビニ飯などの持ち込みを推奨。
・とにかく予習が大事。行き当たりばったりで行くと、筆者のようになる。冒頭で紹介した『公式ガイドブック』の他にも、万博のガイドはいろいろと出ているので、以下を参照されたい。会場内で販売されている「公式スタンプパスポート」もおすすめだ。


(松田広宣)



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