「ねるねるねるね」はなぜ生き残った? 40年愛され、大人も取り込んだ知育菓子の秘密

50

2025年05月29日 08:51  ITmedia ビジネスオンライン

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

ITmedia ビジネスオンライン

懐かしいのに新しい? 「ねるねるねるね」の今

 2026年に発売40周年を迎える「ねるねるねるね」。多くの知育菓子を手掛けるクラシエのロングセラー商品だ。2025年時点で、累計販売数は9億食を超えた。国内だけでも約65億円規模といわれる知育菓子市場において、10%以上の売り上げを占める。


【その他の画像】


 近年は子ども向けの商品だけでなく、大人をターゲットにした商品も展開しているが、どのような戦略で商品開発を進めているのか。長年多くのファンを抱える人気の秘訣(ひけつ)とは。商品開発を担当しているマーケティング室 菓子部の部長・菊池光倫さんに話を聞いた。


●「砂場遊びをする子どもたち」からヒントを得て生まれた


 「ねるねるねるね」の誕生は1986年。その数年前から、同社では子ども向けの粉末ジュースを発売していた。粉末を水で溶かすとシュワシュワした飲料になるものだが、その技術を生かしたお菓子を開発できないかと模索していた。


 そんな中、当時の開発担当者が砂場で泥遊びをしている子どもを発見。楽しそうに泥を混ぜる動作を見て、「これをお菓子に取り入れられないか」と考えたという。粉末の色が変わって膨らむ。そんな驚きの要素を加えて「子どもが笑顔になれる商品をつくりたい」との思いで誕生したのが、「ねるねるねるね」だ。


 「普通のお菓子はパッケージの中に食べるものだけが入っているが、『ねるねるねるね』は専用トレイを付けて、そこでつくっていく。トレイ自体が小さな遊び場となっている」(菊池さん)


 商品名の「ねるねるねるね」は、「ねりんちょ」や「ねるねるね」など数ある候補の中から、最終的に語呂の良さで決まったという。


 商品の特徴は「色代わり」と、重曹と酸の反応を生かして実現している「ふくらみ」の2点。特にこだわっているポイントはフレーバー展開だ。さまざまな色とフレーバーを展開しており、その数は約40年で累計50種類ほどに上る。


 「時代のトレンドに合わせてメロン味やチョコバナナ味、変わり種だと梅あられ味などにもチャレンジしてきた」


 味だけでなく、保護者の声を反映してトレイの形状を変更したり、袋に記載する作り方を子どもにも分かりやすく工夫したりと、改良を重ねている。


●大人数向けや大人向けの「ねるねるねるね」も展開


 主な販売チャネルはスーパーやコンビニ、ドラッグストアだ。「ねるねるねるね」は、2025年5月現在で9品をラインアップしている。


 定番で最も売れている「ぶどう味」とラムネ入りの「ソーダ味」のほか、人気キャンディ「チュッパチャプス」とコラボした「ストロベリーヨーグルト味」、4〜5人で楽しめる大容量のDXねるねる「ブドウ味」、大人をターゲットにした大人のねるねるねるね「りんごのカラメリゼ味」を展開。お土産用のご当地フレーバーとして、北海道限定の「北海道ミラクルメロン味」、沖縄限定「沖縄パイン味」も販売している。


 さらにラムネ商品の「ねるねるねるね超固めちゃいました」では「ぶどう味&ソーダ味」、子どもの服薬を補助するものとして「おくすりパクっとねるねる」からは「メロンソーダ&イチゴ味」を展開している。


 同社が2021年10月に実施したWeb調査(対象者は19〜34歳男女1223人)では、「ねるねるねるね」を小学生までに食べたことのある人は8割に上っていた。大人向けやラムネ商品については、子どものころに「ねるねるねるね」を楽しんだ人に懐かしさを感じてもらい、再び思い出してもらうための接点づくりを狙っているようだ。


 メインターゲットは約40年間変わらず、3〜12歳の子どもと、一緒に買い物に行く保護者となる。近年は昭和レトロブームやお酒を飲まない学生、若手ビジネスパーソンが増えたことで、20代以上の人にもリーチを広げている。


●売り上げがピーク時の約半分……なくなる危機も


 そんな「ねるねるねるね」だが、常に順風満帆だったわけではない。発売から約20年が経過した2000年代には、売り上げがピーク時の約半分に減少したこともあった。


 消費者の健康志向が高まったこともあり、特徴である「色変わり」と「ふくらみ」といった面白さが逆に「なんとなく体に悪そう」と捉えられてしまったのだ。「当時、社内では『やめようか』という議論もあった」ほどだ。


 そこで同社ではパッケージおよび味の改良を実施。パッケージには保存料や合成着色料を使用していないことを示すマークを付けたほか、どんなお菓子が袋の中に入っているのか具体的にイメージできるデザインに変更した。


 味については、市場に出回っている子ども向けのお菓子やジュースの味を調査。それらと比較すると、当時の「ねるねるねるね」は少し酸味があり「すっぱさが子どもに受け入れられていないのでは」との声が挙がった。そこで甘味を増やした味に改良した。


 プロモーションでは、発売当時にCMで強い印象を残した“魔女”姿の女性を再起用。単に再登場させるのではなく、子どもと一緒に「ねるねるねるね」をつくるシーンを入れることで、発売当時子どもだった人が見ても、今の子どもにとっても、自分との関わりを感じられるような内容に変更した。


 こうした数々の工夫を重ねることで、見事にV字回復を果たした。


●「ねるねるねるね」ロングセラーの秘訣


 まもなく40周年を迎える「ねるねるねるね」だが、同社はロングセラーの秘訣をどのように分析しているのだろうか。


 菊池さんは「粉と水を混ぜると色が変わり、膨らむ。まずはそのインパクトがあったこと、自分でそれをつくって食べることで、記憶に残る体験ができたこと。あとはCMの“魔女さん”の印象もあり、記憶に残る商品だからこそ、ここまでロングセラーになったのではないか」と話す。


 消費者からは「おいしい」といった声のほか「やっていて楽しい」「色が変わるから面白い」「何でこんな風に膨らむのか不思議で興味が広がった」「何回も買う」といったポジティブな声が多く届いているという。


 一方で、日常的に買われるお菓子ではないという課題もある。子どもだけでもつくって食べられるが、大人が手伝うこともある。保護者からは「手伝うのが手間」「時間がない」といった声もあり、家族全体に時間の余裕があるときに購入しやすくなるよう、「家族のコミュニケーションをより豊かにする」といったメッセージも打ち出していきたいとしている。


●40周年プロジェクトも始動


 40周年に向けては、さまざまな新商品や企画を予定している。2025年には、顧客の声をもとに新商品を開発する「みんなでつくるねるねるねるねプロジェクト」を開始。味やトッピングなど、子どもから大人まで多くの人の意見を集め、子どもたちが意見を出し合える場も設け、商品開発を進めていく。このプロジェクトから生まれた商品は、2026年春ごろを目標に発売される予定だ。


 そのほか、大人向けや複数人向けの新商品、エリア限定商品の拡大なども検討している。IP(知的財産)を活用した商品展開も進めていきたい考えだ。40周年に向け、どのような新商品が登場するのか。今後の展開に注目が集まる。


(熊谷ショウコ)



このニュースに関するつぶやき

  • CMの魔女のおばさんの印象が強いからか…
    • イイネ!7
    • コメント 0件

つぶやき一覧へ(25件)

ニュース設定