「このままでは続けていけない」窮状を訴える農家も…高騰し続けているお米の“適正価格”はいくら?

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2025年06月21日 20:40  All About

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昨年から急速に値段が高騰し続けているお米ですが、それを作る農家はこれまでの価格では米づくりを続けていけないと訴えています。お米の適正価格はいくらなのか。米農家が苦しい状況に陥っている理由とは何か。宇都宮大学農学部助教の松平尚也が解説します。※画像:PIXTA
農家の所得補償などを訴えるため、米農家や酪農家らが2025年3月30日に「令和の百姓一揆」と銘打ってデモ行進を行ったのは記憶に新しいところ。日本人の国民食であるお米づくりを支えてきた農家もこれまでの米価格では農業を続けていけないといいます。お米の適正価格や米農家の所得事情、課題について、宇都宮大学農学部助教の松平尚也が解説します。

お米の適正価格はいくら? 課題は?

【今回の素朴なギモン】
デモやニュースで米農家の窮状を知りました。ここ最近は急速に米価格が高騰していますが、米農家には還元されていないと聞きます。一方でスーパーにならぶお米の価格は異常な高騰が続いています。お米の適正価格はいくらくらいなのでしょうか? そして何が課題なのでしょうか?

値上がりした分の恩恵を得ている農家は一部

【回答】
昨年から米価格の高騰が続いていますが、それまでのお米の値段は低迷が続いてきました。昨年からの米価格の値上がりでようやく米生産の現場では一服感が出ている状況ですが、価格高騰の恩恵を受けている農家は一部にとどまります。

というのも多くの農家は昨年の秋にお米を業者に売ってしまっているからです。農協にお米を販売する農家は追加払いという形で後から市場価格高騰分の一部が配分されますが、それほど大きな金額ではありません。一方で、エネルギーや肥料などの生産コストが上がっており、以前の米価格に戻すのは難しい状況です。

米農家が苦しい状況に陥っている背景

これまで長期にわたり低米価が続いてきた中で経営難に陥る米農家が続出し、米の生産基盤は弱体化してきました。価格高騰前は、米農家の半分は赤字経営の状態。米農家の減少も顕著に進んでおり、2020年の米農家の数は71万戸と2000年からなんと6割も減ってしまいました。

このまま減り続けると2030年代には、日本の米需要を国内生産では賄えない可能性も指摘されています。政府は米生産の大規模化や企業化を推進してきましたが、大規模な米農家は全体の3割台。小中規模含めた多様な米農家が米づくりを続けていけることが大切です。

米の適正価格は

そのためには、米の生産と消費が継続できるための“適正価格”を考えることが必要です。米価格が低いと生産が継続できず、逆に高すぎると米を買えない消費者が出てきてしまいます。

ポイントは適正価格と政策の関係です。関係者による複数の試算では、米生産のコスト上昇分を価格に反映すると店頭の小売価格で、5kg3000円〜3500円が妥当という結果が出ています。しかし、買う側の給与が上がっておらずこの価格を購買する力があるのかという問題もあります。

必要なのは欧州のように農家への対策として直接支払いや所得補償を行うことです。今こそ政策として米の生産と消費が持続するための適正価格を考えるべきと言えるでしょう。

【この記事の筆者:松平 尚也】
宇都宮大学農学部助教。持続可能な食料や農業について研究。実際に農業に従事してきた視点を生かし農業政策全般についても研究・情報発信している。専門分野のキーワードは、アグロエコロジー・有機農業・食と農の社会学。
(文:松平 尚也)

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  • 今の政府や役所を生まれ変わらせないと無理。もうそこまでダメになってる。他に気を散らされて、一応生きて行く程度に困ってないから気が付かんようにされてる。
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