迫る影、届かなかったSOS=殺害ほのめかすも、事件防げず―識者「逃げざるを得ない」・西東京市元妻殺人

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2025年06月30日 15:01  時事通信社

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時事通信社

殺害現場のスナックが入るビル=10日、東京都西東京市(一部、画像処理しています)
 東京都西東京市のスナックで3月、店長の徳山智美さん(37)がドメスティックバイオレンス(DV)の末、釈放直後の元夫に殺害された。元夫は事件の1週間前から自殺を図り、周囲に徳山さんの殺害をほのめかすなど、執着心をあらわにしていた。徳山さんは迫る元夫の影におびえ、殺害される前日まで警察などに助けを求め続けたが、事件を防ぐことはできなかった。DV対策の専門家は「加害者が自暴自棄になっている場合、逃げるしかないのが現状だ」と吐露する。

 元夫で韓国籍の康恩哲被告(41)=殺人罪などで起訴=は昨年5月、スナックが入る建物に車で突っ込み、徳山さんを殴ったとして、傷害容疑で現行犯逮捕された。同8月に離婚が成立。徳山さんは居場所を悟られぬよう子どもたちと共に引っ越した。

 暗転したのは今年3月。同被告は保護観察付き執行猶予4年の有罪判決後に釈放され、徳山さんらの転居先から徒歩3分の距離で生活を始めた。4日後の17日には町中で偶然子どもを見掛けたが、裁判所から接近を禁止されていたため声を掛けられなかった。「家族に会えないなら生きている意味がない」と自暴自棄になり、自殺を図った。

 徳山さんは同被告の言動に危機感を募らせ、21日までに「SNSに自身の性的な動画が投稿されている。元夫だと思う。捕まえてほしい」と警視庁に相談。22日には「元夫からメールや電話が来た」、23日には「元夫が知人に『家族を殺して俺も死ぬ』と言っていたようだ」と訴えたが、24日夜〜25日未明、スナックに現れた同被告に顔や胸などをナイフで刺され、死亡した。同被告は逮捕、鑑定留置を経て、今月23日に起訴された。

 一連の相談を受け、警視庁は保護観察所に執行猶予取り消しを申し入れたが、条件に該当しないと判断された。リベンジポルノ防止法違反容疑での逮捕も検討したが、投稿者の照会などに時間を要し、即座に対応できなかった。徳山さんには生活圏を変え、出勤を控えるよう勧めたが、シングルマザーとして子ども2人を育てる徳山さんにとって、現実的な選択肢ではなかった。

 NPO法人「全国女性シェルターネット」の北仲千里・共同代表は、康被告の言動について「相手との境界がなくなる典型的なパターン。かなり危険度の高い人物だ」と指摘。加害者が自暴自棄になっている場合は逃げるしかないのが現状だが、シェルターに避難すれば通勤や通学などこれまで通りの生活はできなくなるという。

 ある警察幹部は「被害者側が全てを犠牲にして逃げなければいけないのはおかしい。加害者をどうするかがポイントだ」とした上で、行動を常に監視するのは難しく、「なんとかしなければいけないが妙案はない」と頭を抱えた。 

このニュースに関するつぶやき

  • 警察は発生した事件を処理する事は出来ても事件を未然に防ぐ機関にはなり得ない事が国民誰でも理解できてると思うので別の道を模索するしかない。合掌
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