
「最高気温の予報が35度を越えたら出勤停止」というルールを設けた企業がSNS上で話題になっている。
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件の企業は、強い臭いが特徴の缶入りのニシン塩水漬け「シュールストレミング」の輸入販売を行うことで知られる三幸貿易株式会社。コロナ禍で在宅勤務が一気に普及したが、「出社回帰」として在宅勤務を禁止、または出社重視の方針へ移行する大企業が増える中での決断の理由とは。三幸貿易株式会社代表、伊藤謙さんに話を聞いた。
――35度以上で出勤停止とする決断のきっかけは?
伊藤:通勤中に見かけた多くの救急車です。おそらく熱中症の搬送と思われます。「熱帯より厳しい環境の中で、健康を害してまで会社に行く必要があるのだろうか?」と疑問を持ったことが1番の理由でした。
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――葛藤や悩みはありましたか?
伊藤:全くありませんでした。コロナ禍でやっていたことを応用すれば良いだけですから。むしろ「なぜ今まで気付かなかったのか」と反省したくらいです。
――必要だった準備や工夫は?
伊藤:基本的にはコロナ禍と同じ仕組みなので導入までスムーズでした。郵便物の受け取りや出荷作業など、最低限の出社は必要になりますが、チームで手分けし、できるだけ涼しい時間帯に済ませるようにしました。ただ個人的には、社内で大切にしている FIKA(おやつ休憩) の時間が減ってしまったのが、とても残念です。
――現在の従業員の様子は?
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伊藤:出勤日の業務量が増えたり、家にいる時間の電気代がかさむなどマイナス面はあります。 それでも従業員が元気であることが何よりうれしいです。家に残る家族やペットを心配せずに済むという点も大きいでしょう。毎日顔を合わせるより、たまに会う方が新鮮でいい――そんな発見もありました。
――今後の経営方針、組織運営で大切にしていることは?
伊藤:時代や気候の変化は、私たちが想像するよりずっと速い。かつて「誰よりも早く出社して、掃除とお茶を用意して、スポーツ新聞を持った上司を迎える」ことで頑張っていると評価された時代がありましたが、私たちは違う。自分たちが楽しんでいなければ、消費者に幸せを届けることはできない。だからこそ時代や気候の変化に素早く対応し続け、率先して美味しいもの楽しいことを追求したいです。
そして私たちが在宅勤務できるのは、通信や配達などインフラを支える方々のおかげ。厳しい環境の中でも懸命に社会を支えてくださる皆さまへの感謝を忘れないようにしたいです。
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SNSでは「素晴らしい取り組み。」「他の企業にも広まってほしい。」「健康を害したら働けなくなるから会社にとっても良いはず」「台風でも来いと言われる会社で働いてるからうらやましい」などの反響が集まった。気候や時代に合わせ、既存の常識・ルールを変化させていく必要がありそうだ。
(まいどなニュース特約・米田 ゆきほ)