
残暑が続くなか、旬を迎えている秋の味覚・サンマ。今年は獲れすぎて漁が“制限”される事態となっています。海に起きている変化、「黒潮大蛇行」の終息がもたらした影響とは?
秋の味覚「サンマ」大漁で13年ぶり“制限”も炭火の上でじっくり焼かれているのは秋の味覚「サンマ」。東京・築地の飲食店「白銀屋」では9月から提供を始めたサンマ定食が人気です。
注文した客は、焼きたてのサンマを噛みしめるように旬を味わっていました。
40代 会社員
「初サンマですね。すごく嬉しいです。秋が来たなという感じがします。今年はいっぱい食べたいと思います」
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店員
「背中のこの丸み。ここが脂がのっている証拠」
2025年のサンマは2024年より大ぶりで脂もたっぷり。さらに価格にも変化が…
白銀屋オーナー梶川拡史さん
「去年は細くてもすごく高かった。今年はその半値くらいで買えるようになった。私どもも慌てて仕入れをしているところです。嬉しい誤算でしたね」
安価な理由は好調なサンマ漁です。岩手県大船渡市の魚市場では、大量のサンマが水揚げされていました。
全国さんま棒受網漁業協同組合によると、全国のサンマの漁獲量は9月に入り、すでに1万2000トン以上と推計され、2024年8月と9月の累計に匹敵する量だといいます。
このため全国一斉に、水揚げした漁船が再び出港する際は24時間あけるなどの休漁措置がとられる事態に。この措置の発動は13年ぶりです。
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買受人
「一つ一つの船が大量だから、量が多いから予定以上に漁獲量がいっている。でも最高、いい事だよね。このまま続けばいいですね」
突如、獲れるようになったサンマ。関連があるとみられているのが「黒潮大蛇行」の“終息”です。
黒潮大蛇行とは、本来、日本の太平洋側に沿って流れ込んでいる暖かい海流「黒潮」が、発生した冷たい渦を避けるように、南へ大きく曲がってしまう現象。
今回終息した大蛇行は2017年に発生し、過去最長の7年9か月続きました。
どんな変化をもたらしたのでしょうか。
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海洋研究開発機構 美山透 主任研究員
「(大蛇行発生時は)黒潮は北の方で強かったので、東北のあたりでは水温が高くてサンマが不漁だった」
大蛇行の終息などで漁場に変化が生まれ、サンマの漁獲量が増えた可能性もあるといいます。
しかし、大蛇行の影響が残るとみられる地域もあります。三重県沖で素潜り漁をする海女からは..
海女
「(Q.アワビですか?)いいや、“フクダメ”(貝類のトコブシ)」
海水温が高い状態が続いて海藻が減る“海の砂漠化”が進み、名産のアワビやサザエなどが獲れなくなっているといいます。こうした漁場が元に戻る可能性はあるのでしょうか。
海洋研究開発機構 美山透 主任研究員
「地球温暖化は進んでいるので全く元通りというわけではない。(魚が)たまたま獲れたから黒潮大蛇行終息のせいだと喜びすぎないで、慎重に見極めたうえで資源を守りながら漁業はやっていく必要がある」