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東京商工リサーチがまとめた2025年1〜9月の「病院・クリニック」の倒産状況によると、倒産件数は27件に達し、過去20年間で2番目に多い水準となった。このペースで推移すれば、2009年の42件以来、16年ぶりに年間40件を超える可能性があるという。
●リーマン・ショック後以来の高水準に
過去20年間で最多の倒産件数だったのは、リーマン・ショック後の2009年で36件(前年同期比100.0%増)だった。コロナ禍の2020年は資金繰り支援策により11件(同56.0%減)と大幅に減少。その後も10件台で推移していたが、2024年は27件(同68.7%増)と前年同期の約1.7倍に急増した。2025年も同様に27件と高水準で推移している。
●中堅病院の苦境が顕著に
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原因別では、「販売不振」が16件(前年同期比23.0%増)で最多。「既往のシワ寄せ」が5件(同37.5%減)、「他社倒産の余波」が3件(同25.0%減)と続いた。
地域医療を担う中堅規模の倒産が目立ち、「クリニック」は18件(同14.2%減)と前年同期を下回ったものの、ベッド数20床以上の「病院」は9件(同50.0%増)と前年同期の1.5倍に増加。過去20年間では2010年(11件)に次ぐ4番目の多さとなった。
●大型倒産や雇用への影響も
負債額別では、医療法人福慈会(三重県名張市)の負債66億円を含む「10億円以上」が5件(前年同期2件)、「5億円以上10億円未満」が3件(同2件)と、大型倒産が増加。従業員数別では、前年同期にはなかった「従業員300人以上」が2件、「50人以上300人未満」が8件(同4件)と中堅規模の医療機関での倒産が増え、地域の中核となる病院が相次いで苦境に陥っている。
東京商工リサーチは、「総務省が9月30日に発表した令和6年度地方公営企業等決算によると、自治体が運営する公立病院の約8割が赤字だった」と指摘。
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そのうえで「医療機関は、理事長や院長の高齢化、医師や看護師の不足、医療設備の老朽化など課題が山積している。さらに人件費や電気代、備品・消耗品などの物価上昇が経営を圧迫している」と分析した。
「医療業務のコストと診療報酬のバランスが崩れ、採算が悪化する医療機関は少なくない。医療の空白地帯が増えることも現実味を帯びており、診療報酬の見直しやM&Aなど、医療機関の存続に向けた取り組みが急がれる」と警鐘を鳴らしている。
本調査は、日本標準産業分類の「病院」「一般診療所」から、負債1000万円以上の倒産を集計・分析したもの(歯科医院を除く)。
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