名古屋高裁金沢支部の判決後、「違憲状態」などと書かれた紙を掲げる升永英俊弁護士(中央)ら=29日午後、金沢市 「1票の格差」が最大3.13倍だった7月の参院選は投票価値の平等に反して違憲だとして、升永英俊弁護士らのグループが選挙無効を求めた訴訟の判決が29日、名古屋高裁金沢支部であった。大野和明裁判長は「違憲状態」と判断。無効請求は棄却した。7月参院選で違憲状態判決は初めて。原告側は上告する方針。
二つの弁護士グループが全国14の高裁・支部に起こした計16件の訴訟で2件目の判決。大阪高裁は「合憲」としていた。
最高裁が「合憲」とした2022年の前回参院選から制度の見直しはなく、格差が最大3.03倍からやや拡大したことの評価が焦点だった。
大野裁判長は、格差は15年の公選法改正で5倍前後から3倍程度に縮小したが、「徐々に拡大傾向にある」と指摘。前回参院選について最高裁が「格差是正は喫緊の課題」として国会に立法措置を求めたにもかかわらず、「さらに拡大させたことは看過し難く、選挙制度の仕組みを抜本的に見直すことを検討すべきだった」とした。
「鳥取・島根」「徳島・高知」の4県の合区についても一時しのぎに過ぎず、現時点で評価はできないと述べた。その上で、国会が具体的な対策を取らなかったことから、「投票価値の平等に反し、著しい不平等状態にあった」と判断した。
合憲とした大阪高裁は24日の判決で、今回の格差は「有意な拡大とまでは言えない」と指摘。ただ、前回から0.1ポイント広がっており、「喫緊の課題がさらに切迫した」としていた。
今回の参院選では、1議席当たりの有権者数は福井県選挙区が最も少なく、神奈川県選挙区が最多だった。
判決後に金沢市内で記者会見した升永弁護士は「国会議員の地位の正当性に憲法上の疑問があるとした、極めて重要な判決だ」と評価した。

名古屋高裁金沢支部の判決後、記者会見する升永英俊弁護士=29日午後、金沢市