和菓子店の店頭に並ぶ「温泉ないまんじゅう」=11月28日、滋賀県草津市 日本屈指の温泉地、群馬県草津町と混同されることが多い滋賀県草津市が、知名度向上に力を入れている。地元に温泉がないことを逆手に取り考案した「温泉ないまんじゅう」はヒット商品に。マスコットキャラクターも作ってPRに躍起だ。
「お勧めの温泉宿を教えて」。市観光物産協会によると、観光案内所などには年100件ほど、約300キロ離れた草津温泉と混同した「誤訪問」や問い合わせがある。10月にも台湾人女性が温泉を求め案内所を訪れた。
県内では人口規模2位の草津市だが、混同解消には県外での知名度向上が欠かせない。
対策を話し合った協会職員が「間違いを逆手に取ってはどうか」と提案したのが「温泉ないまんじゅう」だ。市内の和菓子店に依頼し、6月に商品化。発売告知のX(旧ツイッター)の投稿には約4.4万件の「いいね」が寄せられ、大きな反響を呼んだ。
温泉マークに「ない」を意味する斜線入りの焼き印があり、こしあんのやさしい甘みが特徴。いまや「月1000個は注文が舞い込むヒット商品」(和菓子店)で、群馬県から買いに来る客もいるという。
立命館大の学生とともに、マスコットキャラクター「おんせんどろぼう」も考案した。琵琶湖を温泉にするため、全国から温泉を盗むというコンセプトで、着ぐるみ制作費はクラウドファンディング(CF)で集めた。県外のPRイベントなどでの活用を検討している。
琵琶湖に面し、湖上交通の要衝だった草津市は江戸時代、東海道と中山道が交わる宿場町として発展した。田園風景やグルメなど見どころも多い。協会職員の荒木駿太さん(27)は「『温泉がない方』をきっかけに市の魅力に気付いてもらえればうれしい」と語る。
草津市の取り組みについて、草津町の温泉観光協会の福田俊介事務局長(39)は「面白いことをやっているなというのが本音。(町にとっても)ありがたい」と話す。「同名」のよしみで友好交流協定を結ぶ両自治体の発展に向け、「さらなる連携ができたらいい」と笑顔を見せた。

まんじゅうを手に撮影に応じる滋賀県草津市のキャラクター「おんせんどろぼう」(左)と同市観光物産協会の職員=11月28日、同市