「近くにあるとお金が減りにくい店」がスーパー・コンビニの脅威に? ドラッグストア大再編の行方

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2026年01月28日 06:00  ITmedia ビジネスオンライン

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業界再編の行方は?

 ドラッグストア業界最大手のウエルシアホールディングス(以下、ウエルシアHD)と、ツルハホールディングス(以下、ツルハHD)が、2025年12月に経営統合した。これにより、売上高2兆円を超える巨大ドラッグストアグループ「新生ツルハHD」が誕生。店舗数は5680店舗に上る。


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 これまでドラッグストア業界は、上位6社の売上高が1兆円前後で拮抗(きっこう)する構図が続いてきた。そのうちの2社が統合したことで、新生ツルハHDの規模はほぼ倍となり、売り上げ・店舗数ともに他社を大きく引き離す存在となった。


 この統合は、コンビニ業界で見られた再編とは様相が異なる。新生ツルハHDの傘下に入った後も、「ウエルシア薬局」のブランドは存続し、店名や売り場の大きな変更は行われていない。今後も「ツルハドラッグ」へ看板が切り替わる可能性は低いだろう。ファミリーマートによる買収後、「am/pm」「サークルK」「サンクス」が同一ブランドに統合されたのとは対照的だ。


 ウエルシアHDはツルハHDの完全子会社となり、上場も廃止されたものの、現時点では両社が一体となった運営に移行した印象は薄い。巨大チェーン同士の統合であるため、短期間で大きく運営体制を変更するのは現実的ではなく、統合効果がどこまで発揮されるのかは未知数だ。


 大手ドラッグストア各社を見ると、コスモス薬品のようにM&Aに慎重な企業も存在する一方で、地方の中小チェーンを積極的に買収し、規模拡大を進める企業も多い。


 統合が進みつつも、しばらくは群雄割拠が続きそうなドラッグストア業界。本稿では、その構造をコンビニやスーパーなどと比較しながら、今後起こる統合の可能性について考察していきたい。


●スーパーやコンビニと戦うドラッグストア業界


 薬品や健康食品を取り扱うドラッグストア業界は、日本の小売業界の中で数少ない成長分野の1つだ。


 日本チェーンドラッグストア協会によれば、2024年度の市場規模は10兆307億円と、初めて10兆円を超えた。店舗数も2万3723店舗と増加傾向が続いている。直近5年を見ると、市場規模は約30%、店舗数は約15%増加している。これは、単に出店が増えているだけでなく、店舗の大型化や坪効率の向上によって、1店舗当たりの売り上げが伸びていることを示している。ドラッグストアの市場規模は百貨店の約2倍に達し、コンビニ業界にも肉薄、場合によっては追い抜く勢いだ。


 成長産業ともいえるドラッグストア業界の主たる競合相手は、スーパーとコンビニである。近年、ドラッグストアは食品に力を入れており、特に郊外型店舗では、日配品や冷凍食品が食品スーパーに引けを取らないほど充実している例も多い。そこにサプリメントや健康食品といった強みを掛け合わせることで、独自の立ち位置を築いている。


 ウエルシア薬局では、健康志向のプライベートブランド(PB)商品「からだWelcia」を展開し、独自性のある商品開発によって差別化を進めてきた。ドラッグストア全体を見ると、弁当・総菜や生鮮三品の品ぞろえは限定的な店舗が多いものの、近年はスーパーと見間違えるほど、それらの商品を強化するチェーンも現れている。日用雑貨を幅広く扱う店舗も多く、ホームセンターや100円ショップとも競合する。


●“あるサービス”と食品販売の組み合わせが強み


 ドラッグストアの売り上げに占める食品の割合は、各社の戦略によって大きく異なる。日本チェーンドラッグストア協会によれば、「フーズ・その他」は2兆8329億円と、全体売り上げの約28%を占めている。コスモス薬品のように、売り上げの約60%を食品が占める「食品強化型」のチェーンも存在するほどだ。


 一方で、医薬品は病気やけががなければ需要が生まれにくいものの、利益率が高い。特に、医師の処方箋に基づき薬剤師が調合する調剤は、ドラッグストアにとって“稼げる”サービスだ。利用者が調剤を待つ間に、店内を回遊して食品や日用品を購入するため、売り上げアップも見込める。


 ウエルシア薬局やスギ薬局は、調剤薬局を併設することで、地域医療の一端を担い、「かかりつけ薬局」としての役割を果たしている。薬剤師や登録販売者が常駐しているため、家庭の常備薬についても気軽に相談できることが、消費者からの信頼にもつながっている。


 医薬品の販売には専門知識が不可欠であり、コンビニやスーパー、ホームセンターなどが専門家を常駐させるのは容易ではない。この点は、ドラッグストアならではの強みといえる。


●激安スーパーと戦う企業も


 コスモス薬品は、自らをディスカウントドラッグストアと位置付け、九州では食品の安さを武器に「ドラッグコスモス」を展開し、ディスカウントスーパーの「トライアル」と競合している。両社とも全国展開が進んでおり、特に関東以西では、店舗が重なる競合エリアが増えつつある。PB化を進め、自社で製造・企画を行い、卸売りを経由する中間流通を省いて安価な商品を供給している点は、両社に共通している。


 コスモス薬品の展開する店舗では、そばやうどんの生麺、豆腐、ミネラルウォーターといった日常使いの商品が極端に安く設定されるケースもあり、3〜4品を購入しても100円に満たないことすらある。「近くにあるとお金が減りにくい店」という意味では、「ラ・ムー」や「サンディ」といった関西の超激安スーパーと肩を並べる水準に達しているといえるだろう。


 コスモス薬品の決算を見ると、売上高営業利益率は約4%と、ウエルシアHDやスギHDと大きな差はない。調剤への本格参入は2021年であるため歴史が浅く、設置店も限られているが、一見すると無謀に見える価格設定の裏側では、厳しいコスト管理を行っている。調剤が拡大すれば、利益率の改善余地はまだまだありそうだ。


 食品価格を武器にするこうしたドラッグストアは、同業他社だけでなく、コンビニやスーパーにとっても無視できない競合となっている。


●免税品需要と戦うドラッグストアのライバルは?


 ドラッグストアには、都市部を中心に展開する免税強化型という、もう1つの有力なビジネスモデルが存在する。訪日観光客を主なターゲットに、化粧品や、いわゆる「神薬」と呼ばれる人気が高い一般医薬品を販売することが収益の柱となる店舗だ。このモデルが競合するのは百貨店である。


 この分野を得意とするのが、マツキヨココカラ&カンパニー(以下、マツキヨココカラ)の「マツモトキヨシ」と「ココカラファイン」だ。大阪を地盤とする「ダイコクドラッグ」に加え、北海道を拠点とする大手のツルハドラッグも、大阪の難波・心斎橋・道頓堀、東京・渋谷センター街などに店舗を構え、免税需要を取り込んでいる。


 業績を見ると、マツキヨココカラの2025年12月の既存店売上高は、中国からの渡航自粛の影響もあり、前年同月比4.6%減、既存店客数は5.1%減。しかし、4月から11月までの既存店売上高は、いずれの月も前年を上回っている。


 ツルハHDも同様だ。2025年12月の既存店売上高は、12月からウエルシアHDのデータを含めて算出しているとはいえ、0.3%増とわずかながらプラスを維持。一方、ツルハHD単独で算出した11月の既存店売上高は5.2%増と、インバウンドの駆け込み需要と推定される爆上げで、3〜10月に比べても突出している。12月にかけての落ち込みが大きい点からも、免税・インバウンド需要への依存度が高いことが読み取れる。


 ドラッグストアはアパレルやインテリアをほとんど扱わず、百貨店はインストアを除いて医薬品を基本的に取り扱わないなど、すみ分けは一定程度なされている。しかし、化粧品分野では明確に競合しており、ドラッグストアはプチプラから高価格帯まで幅広く展開することで、高価格帯・中価格帯中心の百貨店との差別化を図っている。


●ドラッグストアの再編はどこへ向かうのか


 スギHDとトライアルHDは、今年1月8日より包括的協業により、トライアルや系列の西友に、「スギ薬局」がインストアとして入居していくことになった。


 イオンはドラッグストア部門の強化に向けて、業界6位のクスリのアオキホールディングス(以下、クスリのアオキHD)への関与を強めているが、思わぬ反抗に遭った。


 イオンとクスリのアオキHDは2003年から資本業務提携を結んできたが、戦略面で折り合いがつかず、1月16日に提携を解消した。一方で、イオンも反撃。イオンが子会社化したツルハHDも、クスリのアオキHDの株式を保有している。内訳は、イオンが約10%、ツルハHDが約5%で、合計約15%。両社は「物言う株主」として、経営への提言を行っていく構えだ。


 クスリのアオキHDは、売上高約5000億円と、規模では上位5社に及ばないものの、成長意欲は強い。1月5日には、新潟県の食品スーパー「ピアレマート」など12店舗を展開するスポット(新潟県長岡市)を含む5社をまとめて買収するなど、地方の食品スーパーを巻き込んだ拡大路線を鮮明にしている。


 イオンとツルハHDを合わせた15%という株式保有比率は決して小さくない。しかし、こうした動きを見ると、イオンが描くツルハHDとの経営統合に、クスリのアオキHDが応じる可能性は高くなさそうだ。もしクスリのアオキHDがイオンとの距離を置くようであれば、意外なアライアンスが生まれる余地すらある。


 ドラッグストア業界は、コンビニのように明確な勝者が決まる段階には至っていない。クスリのアオキHDの動きを見ても、今後は中小の地場スーパーや地域チェーンを巻き込みながら、再編が進む可能性が高いだろう。


(長浜淳之介)



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  • 私が住んでる羽後町にもツルハドラッグあるが、私は薬王堂派
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