
日本三大朝市として知られ、多くの人で賑わった石川県輪島市の朝市通り。能登半島地震で大規模火災に見舞われた地域だ。震災から2年。焼け跡は更地となり、膝丈ほどの草が生い茂る。その横で、営業を再開した酒蔵がある。この場所で店を守り続ける理由、復興にかける思いを聞いた。
【写真を見る】「助けて欲しいが…」声をあげられない 輪島朝市 唯一の酒蔵が営業を続ける理由 藤森祥平が見た能登半島地震2年【news23】
震災後”賑わい”を失った街朝市通り唯一の酒蔵・日吉酒造店。大正元年の創業以来、100年以上、この街を見つめてきた。かつて賑わいのあった朝市通りは震災後どうなっているのか。
藤森祥平キャスター
「普段、人は集まりますか?」
「日吉酒造店」日吉童子さん(47)
「ほとんどありません。ほとんどというか全くないと言っていい」
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能登半島地震に伴う大規模火災で住宅や店舗など、約300棟が焼失。
輪島朝市は一晩で別世界となった。
火は店の目の前まで迫っていた。
「日吉酒造店」日吉童子さん(47)
「火の手は真横で止まったんです。本当に手前で火は止まったっていう感じですね」
店は残ったが、地震で酒蔵は全壊。営業再開までは長い道のりだった。水道が復旧したのは震災から5か月が経ったころ。電気はさらに2か月遅れ、7月末にやっと復旧した。
「日吉酒造店」日吉童子さん(47)
「それから試験的に営業していったんですが、店できなかったり、お休みしたり。ようやく一定数、日数を決めて営業できる形にやっとなってきた」
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震災から1年が経ったころ営業を再開。日吉さん一家は震災後、住まいを失い金沢へ避難したため、いまは金沢と輪島を往復する生活だ。子どもが金沢の学校に通うため二拠点生活を続けている。
「残った以上は…」朝市通りで店を続ける理由藤森祥平キャスター
「拠点を一時的に離れて戻って来るという選択肢はなかったのですか。ここで店を続けることが大事だったのですか」
「日吉酒造店」日吉童子さん(47)
「ここに…店が残ったので。残った以上は、ここで少しでも皆さんにお話したり、ご奉仕していくことが、この町の復興に役に立つんではないかと思い、店をしているんです」
「酒屋というのは、昔から地域のシンボルと言われますけども、街の中心と言うか…皆さんを見守って行く立場でありたいなと私は思っています」
しかし、店を続ける決意の裏には複雑な葛藤もあった。
「日吉酒造店」日吉童子さん(47)
「生き残ってしまったという負い目というのはありますけど、いっそ燃えてしまえばよかったのではないかと思ったりもしました。でも、ここで(火災が)終わったということは、あちらの街まで燃えなかったということにもなりますし…色んな思いがあって整理が追いつかないんです」
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周りの店が焼失した中で、自分の店が残ったことに負い目を感じていたという。「残ったからには、店を再建しなくてはならない」。そんな思いが重荷になっていた。
「助けて欲しいが…」声をあげられない藤森祥平キャスター
「2年経って言いづらくなっていることは」
「日吉酒造店」日吉童子さん(47)
「あちこちで震災・災害が起きている中で、助けてと手をあげづらい。やっぱり次に震災や災害が起きたときに、逆に助けてあげなきゃいけない立場じゃないかなと、私達も思っているので」
日本各地で次々と起こる災害。それらを目にするたびに「助けてもらった分、助けなくては」、そんな思いを抱えていた。
「日吉酒造店」日吉童子さん(47)
「今までたくさん助けていただいている。それ以上の事を言える立場でもないと思っている。だけど…本当を言うと…助けて欲しい。けど、やっぱり言えないというか。青森の地震にしても、他の災害も、ああいう災害があると私達も頑張らないかんなと思ってしまうし、逆に声をあげにくくなってきてます。助けと言えない…本当に頑張らなきゃと思ってしまう」
震災からの時間の経過も声をあげづらい状況を作っていた。
「未来はまだ見えない」けれど一つずつ前へ日吉さんに今年の展望を尋ねると…
「日吉酒造店」日吉童子さん(47)
「元には戻らない。まだまだ全然先が見えないですし未来も見えません。だから目の前のことを一つずつをこなして、ちょっとずつですけど、前にいけたらいいなと思います」
夫の智さんは、店の再建にはまだ時間がかかると見ている。
「日吉酒造店」日吉智さん(51)
「もう2年経ちますけど、まだまだ再建という話だと、もう1、2年、数年先だと思っているので。復興がまだ全然進んでいない状況を実際に来られる方は来ていただいて、今の現状を見て、知り合いに伝えてくれるのが、一番の応援かなと思っています」
近い未来も、まだ見通せない。それでも、日吉さんは、いま出来ることを積み重ねている。ストップしていた酒造りを県内外の事業者との共同醸造で再開。まだ本格的な再建には時間がかかるが、一歩ずつ歩みを進めている。
(news23ディレクター 横山菜穂)
