「世界のユニクロ」も夢じゃない? 欧米で大苦戦してたのに、気付けば世界47位のブランド 大躍進を実現した戦略に迫る

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2026年02月27日 06:00  ITmedia ビジネスオンライン

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ITmedia ビジネスオンライン

ロンドンにあるユニクロの店舗(出典:ゲッティイメージズ)

 今、欧米でユニクロブームが起きている――。そんな話を海外の友人から聞きました。


【画像】ユニクロ飛躍のきっかけとなった米・ユニクロ ソーホーニューヨーク店


 ユニクロは日本では知名度が高く、アパレル業界の勝ち組として確固たる地位を築いています。ただ、欧米でも人気というのは本当なのでしょうか。2000年代に欧米での店舗展開に大苦戦していたユニクロを知っている方からすると驚くべき話ですが、どうやら事実のようです。


 なぜ、ユニクロは世界でも指折りの日本ブランドに成長できたのか。流通小売り・サービス業のコンサルティングを35年以上続けているムガマエ代表の岩崎剛幸がマーケティングの視点から分析していきます。


●明らかに多くの人が集まる欧米のユニクロ


 私は2024〜2025年にかけて、米国のニューヨークや英国など、欧米各国の流通小売業を視察しました。そこで驚いたのが、主要都市にはほぼ必ずユニクロの大型店舗があったことです。路面店もあればモール内のインショップもありましたが、いずれも売り場面積が大きく、日本のユニクロとほぼ同じようなパターンで出店していました。


 2000年代にユニクロの海外店舗を見てきた私ですが、明らかにユニクロの海外でのポジションや認知度が変わったことを実感させられました。 


 ブランドコンサルティング大手の米インターブランドが2025年10月に発表したブランド価値ランキング「ベストグローバルブランド2025」において、ユニクロは47位と初めてトップ100入り。日本ではトヨタ(6位)、ホンダ(29位)、ソニー(34位)に次いで4番目でした。小売業でトップ100に入った日本企業はユニクロが初めてです。それだけ世界での認知度が向上しているという証でしょう。


●欧州と北米売り上げが中国を抜く


 ユニクロを展開するファーストリテイリングの売り上げを見てみると、56.2%は海外ユニクロが稼いでいることが分かります。営業利益では59.1%と6割近い数字です。2025年度は前期比で111.6%と2桁成長しており、国内ユニクロよりも伸びています。ユニクロが海外で存在感を高め、もうかるブランドになっていることがうかがえます。


 直近の2026年8月期の第1四半期(2025年9〜11月)の地域別売り上げでは欧州、北米地域が大幅増収を達成しました。中国市場が伸び悩む中、欧州と北米市場の売り上げが中国市場を抜くまでになりました。この勢いは今後も続きそうです。


●北米での出店数増


 北米での店舗数増加も、ユニクロの海外での業績拡大の大きな要因となりました。2025年8月期末時点での北米の店舗数は106店舗と、100店舗を超えています。さらに、2026年度は25店舗の出店を計画しており、これは前年を上回るペースです。欧州でも15店舗を新規出店する予定です。


 2025年10月の記者会見で「世界の主要市場で認知され始めている。新たなスタンダードとしてブームを起こせる」と柳井正会長兼社長が語っていたのもうなずける出店戦略と言えます。


 すでにユニクロは日本の一小売業ではなく、グローバル展開している世界の製造小売業(SPA)へと進化しています。その勢いは、今年に入ってさらに加速しているように感じます。


 私は1990年代から海外でも仕事をしてきましたが、当時海外で展開できていた日本ブランドは「コム・デ・ギャルソン」や「ISSEY MIYAKE」など、一部に限られていました。日本人の作るブランドを見かけることは極めて少なく、日本のアパレル小売業の店舗を欧米で目にすることなどほとんどありませんでした。


 唯一あったのは、1991年にロンドンや香港に進出した無印良品(以下、無印)です。しかし当時の無印の海外事業はなかなか軌道に乗らず、海外店舗も伸び悩んでいました。同社が海外事業を黒字化したのは2002年度と、10年以上の歳月を費やしていることからも、日本の小売業が海外で成功する難しさが見て取れます。


 ユニクロが初めて海外進出したのは2001年9月。ユニクロも無印同様、ロンドンに1号店を出店しました。


 ロンドンはトレンドに敏感な消費者が多いため、ロンドンで成功すれば世界で店舗展開が可能だと言われていました。世界中のファッションブランドは、ロンドンの有名百貨店「ハロッズ」や中心地のオックスフォードストリートなどに路面店を出店することで、ブランドイメージを上げていました。


 ユニクロは2001〜2002年にかけてロンドンに21店舗を展開しました。しかし、当時は圧倒的に知名度が不足。販売不振で2003年までに16店舗を閉鎖することになり、非常に厳しいスタートとなりました。その後2002年に中国・上海、2005年に米・ニュージャージー州の大型モールに出店しましたが、米国出店当初は苦戦続きでした。


 当時のユニクロの商品はアジア人の体型をイメージしてデザインされていたため、サイズ感が合わなかったことが主な原因でした。また、トレンドを意識する傾向の強い海外では、ユニクロのデザインは地味で特徴がないと思われていた面もあったと感じます。


 ユニクロの海外進出の歴史を見ると、広く認知されるまでに25年かかっています。今でこそ海外にユニクロがあるのは当たり前ですが、海外事業を成功させるのはそう簡単ではなかったのです。


 では、同社はどのように海外での知名度を高めていったのでしょうか。


●ユニクロの知名度向上のきっかけは3つ


 ユニクロが海外での知名度を一躍向上させたきっかけは、2006年の「ユニクロ ソーホー ニューヨーク店」と2009年の「パリ オペラ店」、そして2011年の「ニューヨーク 5番街店」の出店です。世界の超一流ブランドが集まる5番街でユニクロの店舗を初めて見た時は、「ついに日本の小売業が5番街に出店したか」と感動したのを覚えています。


 当時はそれほどにぎわっている印象はありませんでしたが、それでも米国の消費者が店内でユニクロの洋服を選ぶ姿を見てうれしく感じたものです。


 これらの店舗がユニクロのブランド価値を高め、H&MやZARAのような独特の世界観を持ったブランドがあると認識されるきっかけとなったのは間違いないでしょう。この出店を機に、ユニクロは世界中に大型旗艦店舗の積極的な出店を行いました。


 こうした店舗展開に加えて北米市場でのシェアアップに集中投資したことも、ユニクロの存在感向上に大きな影響を与えています。


 米国市場の攻略が難しいのは、その多様性と国土の広さです。地域によって気候は異なり、人々の体型や価値観、消費スタイルもさまざま。だからこそ、米国で商売を成長させていくのは非常に難しいのです。


 そこでユニクロは、各都市レベルでの集中出店戦略を採用しました。ニューヨークのソーホーに始まり、5番街やマンハッタンなどの有名観光スポットや商業施設に集中して出店することで、知名度を飛躍的に向上させることに成功しました。現在はサンフランシスコやシカゴ、ボストンやワシントンなどの各都市でも集中出店戦略を採用しています。


 また、ユニクロブームが世界で広がっている理由として、「ユニクロの商品力」も挙げられます。余分な装飾をそぎ落とし、流行に左右されない「ミニマルベーシック」な商品を基本としている点が、世界で支持され始めているのです。


 これまでは、超低価格で商品を販売するファストファッションがもてはやされてきました。しかし、今ではそれが「大量生産し、大量廃棄する環境破壊の代表者」とまで言われるようになっています。ユニクロはこうしたファストファッションとは一線を画し、「品質を妥協せず、使い捨てではないタイムレスな服」(同社)と表現しています。


 「値段の割に生地が良い」「洗っても崩れにくい」「ロゴが控えめでどんなブランドとも合わせやすい」といった意見も、ユニクロ公式サイトやSNSなどで多数見かけます。同社のラウンドミニショルダーバッグは、低価格であるにもかかわらずおしゃれで高価に見えることからSNSで大きな話題となり、世界的な大ヒット商品にもなりました。


●売り上げ10兆円は実現可能?


 このようなヒット商品の誕生には、同社が東京本部に加えてニューヨークにも世界本部(グローバルヘッドクオーター)を置き、商品開発やマーケティングを強化してきたことが大きく寄与しています。


 現地の顧客特性を把握しながら、地域性を取り入れた店舗づくりを行うこと。それに加えて、丁寧な接客体制やクレンリネスといった日本のサービス力を浸透させていったことが、海外での人気につながりました。


 英国や米国のユニクロで買い物をすると、日本よりもやや高く感じます。しかし、現地の物価と比較すると比較的買いやすい価格であり、日常生活に必要な服が手頃な価格で購入できることも、海外でユニクロが支持されている理由でしょう。


 ユニクロの認知度は確実に上がってきたとはいえ、欧州でのシェアはまだ0.5%と、売り上げはまだ低いのが現状です。


 ただ、親会社のファーストリテイリングが日本市場で10%以上のシェアを獲得していることを見ると、海外市場はまだまだ成長余地があると言えます。実際ユニクロは、将来的に北米だけで売り上げ1兆円を達成することも可能だと述べています。


 今後、ユニクロが目標とする売り上げ10兆円実現のためには、海外市場のさらなる開拓と拡大が必要となります。そのためには、品切れや色欠けを起こさない在庫コントロールや、オンラインでのスムーズな配送・返品、世界各地の事業を牽引(けんいん)するリーダー人材の育成などを実現すること。そして、世界各国で均一なオペレーションを構築することがカギとなるでしょう。


 まずは2028年8月期に、売り上げ目標5兆円を達成できるのか。今後の動向に、引き続き注目していきたいと思います。


※下記の関連記事にある【完全版】では、配信していない欧米ユニクロの写真や、豊富な図版とともに記事を閲覧できます。


(岩崎 剛幸)



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