債務超過&赤字から大復活→海外に積極進出 値上げによる客離れに苦しんでいた「大戸屋」が息を吹き返せたワケ

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2026年03月26日 06:00  ITmedia ビジネスオンライン

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出所:大戸屋公式Webサイト

 大戸屋ホールディングス(HD)の業績が好調だ。2026年3月期の業績は第3四半期時点で売り上げが前年同期比18.2%増、営業利益は同19.5%増となった。通期では売上高337.2億円、営業利益17.3億円を見込んでおり、ともに過去最高を記録した前期を上回る可能性が高い。


【画像】人気が高いメニュー


 大戸屋はかつて、値上げにより客離れが進み、債務超過に陥った経緯がある。だが外食大手のコロワイド傘下で改革が進み、業績が回復した。定期的にフェアを展開し、飽きさせない工夫も凝らしている。定食業態はフランチャイズ離れにより規模を縮小する流れにあるが、大戸屋は質を高める方向に舵(かじ)を切っている。


●火災で建て替えた店舗が女性にヒット、現在の原型に


 大戸屋は1958年に東京・池袋で開業した「大戸屋食堂」をルーツとする。全品50円を標榜し、客に親しまれた店を長男が事業を継承し、1992年に「大戸屋ごはん処」のモデルとなる店舗を開業した。


 新店は火災にあった店舗を清潔感のある明るい店舗に変えたもので、女性客も多く来店したことから、後の大戸屋の原型となった。揚げ物や肉類を提供する定食店が多い中、大戸屋は「鶏と野菜の黒酢あん定食」のように鶏・魚を中心としたメニューを充実させ、健康志向の定食屋というブランドを確立した。


 主に都市部の駅周辺やビル内に直営とフランチャイズの両軸で店舗数を増やし、ピーク時には350店舗超を展開した。海外でもタイや台湾、米国などに進出している。


●お家騒動や値上げで経営がガタガタに


 創業者が2015年に死去すると、経営陣と創業家が対立する“お家騒動”が発生した。だが、それ以上に業績悪化が大戸屋の懸念材料となっていた。


 段階的に値上げをしたため客離れが起き、2019年3月期以降は減収に転じた。定食業態の中では低価格な上、店内調理を実施していたため営業利益率が低く、減収により2020年3月期は赤字に転落もした。その後、都市部偏重の立地が影響してコロナ禍では大幅な減収となり、250億円規模だった売り上げは、161億円に縮小した(2021年3月期)。業績悪化でフランチャイズ店の離脱も続き、店舗網も縮小を余儀なくされた。


 2020年9月末で約15億円の債務超過に陥った際、手を差し伸べたのがコロワイドだ。お家騒動に乗じる形で創業家から株式を取得し、大戸屋を子会社化した。これにより大戸屋は債務超過を解消し、再起を図ることとなった。


●大戸屋を復活させた施策とは?


 冒頭の通り近年は好調が続いているが、コロワイド傘下での改革がその下地を作った。


 セントラルキッチンを導入するなど工程を見直し、負担を低減。以前は配膳が遅いなどの課題もあったが、提供時間を短縮している。人件費の抑制にも貢献した。セントラルキッチン方式を導入した現在でも「大戸屋の質が低下した」などの意見はあまり見られない。質を維持しながらオペレーションの改善に成功した形だ。食材の共同調達も実施し、原価率低減を進めた。


 メニュー削減を進めつつ男性客を取り込む狙いで肉類などを充実させた。チキン南蛮や唐揚げなどの場合、追加料金でおかずの量を増やすことが可能で、しっかり食べたいニーズに対応している。一部報道によると、こうした施策は30〜50代男性客の増加につながったという。「韓国食堂」のようなフェアも随時実施し、客を飽きさせない施策も展開する。


 外食全体の値上げで大戸屋の割高感が薄まったことも好調の一因と考えられる。大戸屋の定食メニューは段階的な値上げにより、以前の600〜800円台から1000円以上に膨らんだ。だが、主力とする首都圏でラーメンの1000円超えが当たり前となった現在、小鉢などおかずの豊富さを考慮すると妥当な価格帯といえる。今期の既存店業績は2月末までの累計で、客数は前年比7.1%増、売上高は同15.5%増となった。


●今後は国内よりも海外で成長か


 復活しつつある大戸屋だが、店舗数を拡大する余地は限定的だ。


 国内の店舗数は近年、300店超で横ばいに推移している。大都市圏に集中しており、ロードサイドにあまり進出していない。一方のやよい軒はロードサイドと都市部の両軸で出店し、東京都内の店舗は約380店舗中約60店舗にとどまる。やよい軒は1000円未満のメニューを充実させ、大戸屋と比較して地方の店舗数が多いのが特徴だ。所得基準の都合上、大戸屋が地方で多店舗展開するのは難しいとされる。


 地方を見ると、フジオフードシステムが展開する「まいどおおきに食堂」でフランチャイズ撤退が相次いだ。家系ラーメンなど麺類の加盟店が増える一方、定食業態は事業者にとって手間のかかる業態であり、その魅力は薄れつつある。需要側、供給側双方の理由から、大戸屋の新規出店は都市部かつ直営方式が中心となるだろう。


 なお大戸屋は海外事業では直営で模索しつつ、可能性が見込める場合は現地の外食大手と手を組むなど、主にフランチャイズ方式で展開している。2024年に「みつもり」ブランドでマレーシアに進出したほか、2025年には大戸屋業態でカンボジアに進出、2026年もフィリピンに初出店した。日本国内と同価格帯で提供するなど、東南アジアとしてはやや高めの設定で展開している。インバウンドの増加で和食文化の認知度は高まっており、成長の可能性が大きいのは海外といえそうだ。


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●著者プロフィール:山口伸


経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。



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