写真 2010年にTBSに入社し、『朝ズバッ!』『報道特集』などを担当したのち、2016年に退社したアンヌ遙香さん(40歳・以前は小林悠として活動)。
20年間生活した東京をあとにして、故郷北海道で自然や犬との気ままなシンプルライフを楽しむアンヌさん。本連載では、40代の今だから感じる日々のあれこれを綴ります。
第84回となる今回は、AIとの付き合い方について考えます(以下、アンヌさんの寄稿です)。
◆LINEに現れた「AI機能」
ベタな話題過ぎて申し訳ありませんが、AIとの付き合い方について。
最近(でもないのかな?)連絡ツールとしておなじみのLINEにもAI機能が搭載されましたが、使われたことありますか?
当初はなんとなーく「ああ、また便利になったのね」くらいにしか思っていなかったのですが、ところが最近、その“便利さ”にちょっとゾッとする出来事があったのです。
LINEを開くと、返信入力欄の下に「返信を提案」「話題を提案」「ムードを分析」などの文字が表示されるようになりました。どうやらAIが会話内容を分析し、「最適な返事」を考えてくれるというすごすぎる機能が加わったようなのです。
正直、私はそういう機能については無縁かなと感じていました。だって返信は瞬時に自分で考えられますし、AIが思いつかないくらいのオモシロ返信ができる自信がありますし(おい)、ていうかそもそもLINEの機能をそこまで使いこなせていないという現実も。
ところが、ある日、親友とLINEでチャットしていた際にそのAI機能のすごさを思い知ることになったのです。
◆AIが考えた返信が“彼女そのもの”
親友は言葉遣いがとても丁寧で、絵文字の使い方もかわいらしく、話をしていてとても気持ちの良いお上品さがあります。
長年付き合っているからこそ、私は彼女の“文体”を完全に把握しているわけです。
その日、私は「愛犬が少し体調を崩していて心配」という旨をLINEしていました。文章を打つ場所の下にはあいかわらず「返信を提案」の文字が。
すると友人は「この返信を提案ってなんなんだろ、ちょっと間違えて押しちゃいそうなんだけど」と思いながらも試しにその箇所を押してみたというのです!
すると彼女が押した「返信を提案」機能が、4つほど返答候補を出してきたらしく、その内容をスクリーンショットしたうえで私に見せてくれたのです。
それを見て、私は思わず「えっ!」と声をあげてしまいました。なぜなら、全部“彼女そのもの”だったから。
「リリーちゃん体調不良なの!? それは心配すぎます涙」
「今日はもうゆっくりコースでいきましょう♡」
というメッセージ。彼女の普段の口癖、語尾、絵文字の温度感まで完全再現されていたのです。
怖くないですか。もしこれが彼女からそのまま送られてきたとしたら、私、多分これ、AIが作った文章だと気づかないと思うのです。
◆人は「自分の言葉」をどこで鍛えるのか
たしかに最近、「好きな人へのLINEをChatGPTに考えてもらう」という話はよく聞くし、逆に、「苦手な相手への断り文句を作ってもらう」という人もいるとのこと。
最初は「いやいや」と思っていたけれど、実際、AIが作る文章は驚くほど自然で、しかも角が立たない。なんかウマーい表現を教えてくれて感心するのは確か。
そもそもLINEって難しいもので、絵文字がないだけで「怒ってる!?」と言われるリスクもあるし、人によっては「泣き笑い」の絵文字の使い方ひとつで「バカにされている?」なんて感じる人もいたりするんですよね。「了解です」と「了解です!」ですら空気が変わるわけで。
だから、AIが空気を読んで“無難な返信”を作ってくれることに安心する人がいるのもわかるのです。
特に今は、人を怒らせることへの恐怖がとても強い時代。電話が苦手、雑談が苦手、返信内容を考えるだけで疲れる――そんな人にとって、AIは救世主なのかもしれませんが。
でも私は、少しだけ怖くなったのが本音。もし普段からAIが全部返信してくれるなら、人は「自分の言葉」をどこで鍛えるのでしょう。
◆日常会話や絵文字選びまでAIが代行してしまったら…
LINEでは感じがいいのに、会うと全然話せない、もしくは想定外の話題になるとフリーズする。そんな人がこれから増えるんじゃなかろうか、なんて余計な心配をしてしまいました。
実際、人間関係って予定調和じゃないですよね。
相手が予想外の反応をした時、気まずい空気になった時、とっさに言葉を探す力って、結局“自分で会話してきた経験”の蓄積からしか生まれない気がするのです。
もちろん、AIを否定したいわけではないですが。
恋人と少しもめたときにわかりやすく自分の気持ちを伝えたいとき、自分がなににもやもやしているのか整理したい時、AIは驚くほど頼りになったりします。私も困ったら使っちゃう。いざというとき「傷つけずに伝える」ことを手伝ってくれる存在としては、本当に優秀。
でも、日常会話のやりとりや絵文字選びまでAIが代行し始めた時、それって本当に自分のコミュニケーションなんだろうかと感じてしまいました。
◆すべてが最適化された先に残るのは?
かつてテレビが普及し始めた頃、「一億総白痴化」という言葉がありましたね。テレビばかり見ていたら、人間は考える力を失うんじゃないか、と。
実際にはそこまで単純な話ではなかったですが、しかし今度はAIが“会話する力”まで肩代わりし始めている……うーん、今こそちょっといろいろ心配だなあ。
でもね、便利なのは間違いないのです。でもでも、人間同士の不器用なやり取りまで、全部最適化されてしまったらその先に残るのは、“誰も傷つけないけれど、誰の言葉でもない無味無臭の会話”ということになりませんか。
本当、便利すぎるってむずかしいね。
<文/アンヌ遙香>
【アンヌ遙香】
元TBSアナウンサー(小林悠名義)1985年、北海道札幌出身、在住。現在はフリーアナウンサーとしてSTV「どさんこWEEKEND」メインMCや、情報番組コメンテーターして活動中。北海道大学大学院博士後期課程在籍中。文筆家。ポッドキャスト『アンヌ遙香の喫茶ナタリー』を配信中。Instagram: @aromatherapyanne