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トリドールホールディングス(HD)の主力業態「丸亀製麺」が好調だ。
同社の2026年3月期連結決算における丸亀製麺の売上収益は約1372億円(前年同期比7.1%増)、事業利益は約220億円(同5.1%増)となった。計画比で見ると売上収益は0.1%増、事業利益は0.7%減であり、ほぼ計画通りの着地だった。今期に入ってからは4月と5月ともに、既存店の売上高、客数、客単価のいずれも前年同月を上回っている。
丸亀製麺はコロナ禍以降、複数回の値上げを実施している。人気の釜揚げうどん(並390円)に天ぷら1〜2品を付けてもまだ1000円を超えない。多くの外食が1食1000円以上になるのも珍しくない中で、節約志向が強まっている消費者から見るとまだ安価であり、選ばれている。
コストパフォーマンスだけでなく、コロナ禍以降は「丸亀うどん弁当」「丸亀シェイクうどん」「丸亀うどーなつ」といった、これまでの常識を打ち破る画期的な新商品を連発していて勢いがある。近年では、店に「麺職人」と呼ばれる社内資格を有する従業員の苗字を掲げ、プロが責任を持って、打ち立てのうどんを提供する姿勢をアピールしている。
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丸亀製麺を真似て「○○製麺」「○○製麺所」と名乗るうどん店が一時期は乱立したものの、現在では淘汰されてほとんど見られなくなってしまった。なぜ、丸亀製麺だけが生き残れたのか。
●コロナ禍からのV字回復を実現した「うどん弁当」
丸亀製麺の大きな強みは、商品開発力が優れていることだ。
2021年4月に発売した「丸亀うどん弁当」は、これまでに5000万食超を記録している。コロナ禍でのテークアウト需要に応えた商品として、落ち込んでいた業績を立て直すきっかけになった。
そばをはじめとする麺類には出前のイメージもあるが、麺が伸びてしまうという課題があった。そのため、デリバリーの売り上げもそこまで芳しくなかった。コロナ禍で店内飲食する人が減って丸亀製麺もテークアウトに力を入れたが、うどん、つゆ、天ぷらを別々の容器に入れるのは持ち運びが面倒だ。実際、なかなか販売が伸びなかった。
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そこで粟田貴也社長の提案で、うどんをコンパクトな一体型の弁当に入れた商品の開発を進めることになった。「のり弁」をヒントに、うどん専門店らしい天ぷらのトッピングを組み合わせ、容器も専用設計で開発。工夫を重ねて、麺とおかずと天ぷらをセットにして盛り付ける仕様で発売した。
これによって丸亀製麺の業績も急回復。2022年3月期の事業利益は前年同期比354.0%増で、前年の落ち込みから大きく戻した。
●新たに「うどんプリン」も登場
続いて2023年5月に登場したのが「丸亀シェイクうどん」だ。うどんが透明のプラスチックケースに1玉入り、具材、汁と一緒にシェイクすることで混じり合うという、全く新しい感覚のうどんだった。見た目もスマートで、おしゃれな印象を与えた。テークアウト専門の商品で、ワンハンドで持ち運び可能で公園のベンチでも気軽に食べられることもあり、初年度だけで約400万食を販売した。
2024年には「丸亀うどーなつ」を発売。うどんの特徴であるもちもちとした食感を生かした商品で、この4月末までの累計販売数は2600万食超を数える。原材料にうどんを30%以上使用しており、約3年の構想を経て登場した商品だ。
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直近では、7月7日に冷たいスイーツ「丸亀うどんプリン」を発売する。うどーなつと同様に、プリン生地にも30%以上のうどんを使用する。「ブルーハワイ」「あんみつ風」「マンゴー」「あんきなこ」の4種をそろえ、価格は290円〜。
こうした意欲的な商品の他にも丸亀製麺では期間限定でボリュームたっぷりの季節感あるメニューを提案している。夏の定番と化している「鬼おろし肉(豚しゃぶ、鶏から)ぶっかけ」、繰り返し復活している「タル鶏天ぶっかけ」「トマたまカレーうどん」シリーズは、今でも発売のたびに話題を呼び、リピーターの来店を促しながら、新規客の獲得にもつなげている。
●「無料」のトッピングも充実
丸亀製麺は無料のトッピングが多いのも特徴だ。
コロナ禍の前から「青ねぎ」「おろししょうが」「天かす」「香七味(かおりしちみ)」「すりごま」「わさび」と、6種類のトッピングを提供していた。さらに直近では「わかめ」と「しび辛ラー油」を加えて8種類となっている。
わかめは、他チェーンだと有料トッピングやわかめうどんとして、素うどんより50〜100円ほど高く提供していることも多い。それを追加料金なしでトッピングできるのは消費者にとってありがたい。
しび辛ラー油は、花椒や赤唐辛子など6種類のスパイスと、豆板醤、うどんのかえしなどを独自にブレンドしている丸亀製麺オリジナルの薬味だ。近年は、ラー油を入れる新感覚のそば店が増えているし、担々麺、麻辣湯、麻婆豆腐のようなラー油を使った“しび辛”料理の人気も高い。同社では温かい釜玉うどんに「味変」でしび辛ラー油を入れると、大人の味わいが楽しめるとアピールしている。
また、白ごはんを注文した人には、天丼用のたれを無料で提供している。店によって提供方法が異なり、店員に直接伝えるともらえる店もある。うどんだけでなく、白ごはんにえび天などを乗せ、天丼も楽しめる。
このように、無料のサービスを使って、自分好みのアレンジが多種多様に楽しめるのが、丸亀製麺の魅力の一つなのだ。
●丸亀製麺が「本場・香川」で受け入れられにくいワケとは?
丸亀製麺は100%国産の小麦粉と水と塩を使って、全ての店で打ち立てのうどんを提供している。つまり、中間流通に支払うコストを削減しているので、安価で提供できる。また、小麦粉、製麺機、打ち立て麺を湯がいたり天ぷらを揚げたりしているところを臨場感たっぷりに見せる、オープンキッチンの強みも際立っている。エンタメ性ある体験価値を提供しているのだ。
それに加えて、2016年から始めた「麺職人」制度を発展させ、2024年には国内全店舗に麺職人を配置。今では、店の内外に麺職人の苗字が掲げられるようになった。
麺職人になるには、筆記と実技の試験を通過する必要がある。また、職人の中でも「一つ星」から「四つ星」までランク付けされている。このように会社を挙げて高品質な麺を追求している姿勢が「ここのうどんは、生きている。」のキャッチフレーズに反映されており、顧客に伝わっていることが、丸亀製麺の強さの源泉になっている。
一方で、讃岐うどんの本場である香川県では丸亀製麺の評価は厳しい。高松市内に1店舗があるのみだ。現地の人からすると、特にだしやつゆが“違う”という感覚があるようだ。
全国チェーンのはなまるうどんをはじめ、香川県のうどんは、瀬戸内海にある伊吹島(香川県観音寺市)のカタクチイワシの稚魚の煮干し、いりこを使用している。一方、2025年4月にリニューアルした丸亀製麺のだしは北海道産の真昆布をはじめ、いくつもの素材をブレンドしている。
また、香川県のうどん店は基本、いりこだしの風味を最大限に引き出すため、県内の小豆島(小豆島町、土庄町)や坂出(坂出市)、引田(東かがわ市)のしょうゆを使っている。一方の丸亀製麺では、小麦の風味が強い自家製麺に合うよう、しょうゆにだしやみりんを調合した特製しょうゆを使用している。特に香川県産のしょうゆを使っているとは記されていない。
ただし、いりこだしを使ったうどんができないわけでない。トリドールHDでは丸亀製麺とは別に「いぶきうどん」という、いりこをメインに打ち出した店を展開している。東京都内には6月末時点で4店舗ある。
●まだ値上げしても、許される?
丸亀製麺は讃岐うどんのスタンダードであるかどうかは別にして、讃岐うどんのセルフ式というファストフードスタイルを、全国に受け入れられるように洗練させた。「製麺」の店名に違わず、フードコート内の店舗も含めて店内で製麺し、打ち立て麺を提供している。ここまで触れたように、麺の品質アップのために麺職人を全店に配置した。
そればかりでなく、テークアウト用のうどん弁当、シェイクうどん、うどんを使ったスイーツとしてドーナツやプリンなど、従来のうどんチェーンの枠にとらわれない新商品を次々と投入してきた。独自性の高いうどんチェーンに進化している。
価格も「激安」ではなくなったものの、外食では今でも相対的に安い。ランチを安価にさっと済ませたいビジネスパーソンや学生に支持されている。また、家庭向けのテークアウト需要や、伝統的な日本食を好むシニア層にも対応。若い人の間食や子ども連れのファミリーでの休日の外食など、あらゆる年齢層、食のニーズに対応する豊富な商品ラインアップを有している。
丸亀製麺は、このような理由により、日本を代表するうどんチェーンとして、値上げ局面でも選ばれやすいブランドを築いている。
(長浜淳之介)
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