アルファードでもノアでもない 三菱「デリカD:5」はなぜ19年目に過去最高を更新したのか

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2026年07月03日 08:20  ITmedia ビジネスオンライン

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19年選手のデリカD:5が今も売れ続けるワケ

 トヨタのアルファード/ヴェルファイア、そしてノア/ヴォクシーは、日本のミニバン市場で圧倒的な強さを誇る2大ブランドであることは間違いない。


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 しかしミニバン界には、そんな2強とは別次元の領域で高い人気を維持している車種もある。それは、三菱のデリカD:5だ。なんとデビューから19年が経過したにもかかわらず、高い人気を維持するばかりか、過去最高の販売台数を記録しているのだ。


 ブランド通称名別販売台数で、2025年度は2万6379台を販売し、デビュー直後の2007年度を上回って過去最高を更新した。これは新車販売としては異例のことだ。


 なぜデリカD:5の販売台数は、今になって伸びているのか。それは、走破性や独自の本格4WDミニバンというポジションが支持され続けていることや、長年の改良による熟成度の高さが評価されていることが大きい。


●ライバル不在、本格的4WDミニバンの系譜とは


 そもそもデリカは、トヨタのハイエースのライバルといえるキャブオーバー型(エンジンの上にキャビンを配置する)のワンボックス型小型貨物車が基本モデルだった。


 デビュー翌年の1969年には乗用車タイプの9人乗りワゴン、デリカコーチも発売されたが、個人用というより乗員輸送用のマイクロバスのような位置付けであった。


 1979年に2代目へフルモデルチェンジして、丸みのあるデザインから直線基調のボクシーなデザインへとスタイリングを一変。鋼板プレス技術の発展もあって直線的なデザインが可能となり、新鮮な印象を与えることから、このデザインが主流となったのだ。


 乗用車モデルはデリカスターワゴンという名称で、自家用車として本格的なワンボックスワゴンへと仕立て上げられた。そして三菱は、本格的な4WD(四輪駆動)車のパジェロと共にタフな4WD車をそろえるようになり、デリカスターワゴンにも4WDを設定した。


 そもそも三菱は、戦時中にジープ型の4WD車の開発を国から命じられ、戦後は米ウイリス社からライセンスを得てジープを生産販売してきた実績があった。トヨタのランドクルーザーも発端は同じだが、独自モデルとして発展してきたのに対し、三菱はジープの生産を続けたという点で立ち位置は異なるが、1980年代に入ると独自の4WD技術開発へと進路を変えるのだ。


 そうして1982年に登場したのがデリカスターワゴン4WDだった。これはピックアップトラック「フォルテ」のパートタイム式4WDシステムを、シャーシごと移植したものだった。


 「セミモノコックボディ構造」といえば聞こえはいいが、要は別のクルマのシャーシにボディを載せたような作りで、走破性を高める大径タイヤと、高い最低地上高を確保するための車高によって、通常のモデルとはまるで異なるシルエットに仕立て上げられた。


 しかし、それがタフで無骨なイメージを強調したことから、人気が集まった。パリ・ダカールラリーへの挑戦を続けるパジェロと同様に、誰もが買い求めるクルマではなかったが、憧れの1台へと成長したのだ。


●4WDブームで高い人気を維持


 2代目のデリカスターワゴンは、よりシャープなデザインで前衛的な印象になり、室内も高級感が高まった。


 この頃から国内では、本格的な4WDブームが起こり、トヨタのランドクルーザーや三菱のパジェロ、日産のサファリ、いすゞのビッグホーンなど、各社が本格4WD(不整地を走ることを目的とした4WD車)を開発し、人気を競うようになる。


 だが、デリカスターワゴン4WDは走破性は高いものの、エンジンが奥にあるレイアウトであったためスペースに制約があり、エンジン性能を高めにくかった。


 そこで次の世代では、構造を大きく変更。エンジンを前方に配置したセミボンネット型のミニバンへと変化するのだ。


 それが1994年に登場した、4代目となるデリカスペースギアであった。ボンネットを追加したことでボディは大幅に延長。ホイールベースも拡大したため、標準ボディでも全長は50センチ近く長くなり、ロングボディは全長5メートルを超えた。


 堂々としたボディが風格を感じさせ、デリカスペースギアも高い人気を維持した。しかし、4WDブームにも終わりが訪れる。その後、SUV人気へとつながっていくのだが、明らかに流れが変わった。


 ディーゼル規制が厳しくなったことが、本格4WDの存続を危うくさせたのだ。排ガス問題などでディーゼル車に対するイメージの低下もあり、4WDブームは収束。ミニバン、そしてSUVへとムーブメントが変化していく。


 デリカスペースギアには3リットルのV6ガソリンエンジンも設定されていたが、人気をけん引していたのは、低速トルクの強いターボディーゼルだったのだ。そのため三菱は、第5世代のデリカでは戦略を変える必要に迫られたのだろう。


●ガソリン車のみでデビューしたデリカD:5


 第5世代のデリカD:5となっても、本格4WDとしてのアイデンティティーを守り抜こうとしていたが、ディーゼルの排ガス規制をクリアすることは難しく、D:5はガソリンエンジン車のみでデビューすることになった。


 エンジンは、排気量2.4リットルで横置きにすることで、ボディをコンパクトにした。しかも、シャープなデザインで精悍(せいかん)さを高め、むしろカタマリ感のあるシルエットが好評を博した。


 ミニバンながらコストと走行性能を両立させるため、独自のボディ補強技術として、各ピラー部(屋根を支える部分)を環状構造とするリブボーンフレームを採用。強固で衝撃吸収にも優れたクルマに仕立てられた。


 保安基準の緩和によってカスタムを楽しみやすくなり、よりオフロードテイストを高めるカスタムが流行したことも、さらにD:5の人気を押し上げた。


 しかしガソリンエンジンでは非力な印象があることから、先代のスペースギアに乗り続けるユーザーも多く、ディーゼル待望論は大きかった。もちろん三菱もそんなムードを無視していたわけではなく、D:5のデビューには間に合わなかったものの、厳しい排ガス規制をクリアできる新型ディーゼルエンジンの開発を進めていた。


 そしてようやく2013年、デリカD:5にクリーンディーゼルが追加投入された。すでに欧州仕様のアウトランダーに導入されていたが、ミニバンのD:5ではエンジンルームの制約などがあり、時間がかかったようだ。


 低速トルクが強いクリーンディーゼルの搭載で走行性能が向上。登坂能力の高さなどをイベントやディーラー店頭でアピールし、本格4WDの復活を印象付けた。


●改良を重ね、技術とデザインの進化で完熟領域へ


 そして2019年には、フロントマスクを三菱のデザインコンセプト「ダイナミックシールド」を取り入れたデザインに大胆に変え、イメージを一変させた。登場時には評価が大きく分かれたようだが、他のモデルにもこのデザインが取り入れられたこともあり、今では高級感があると好評だ。


 そして、ディーゼルエンジンも尿素SCR触媒(尿素による化学反応で排ガスを処理する装置)を追加するだけでなく、エンジン内部も部品の5割を見直すなど大幅に改良。従来6速だったAT(オートマチックトランスミッション)が8速になり、燃費性能にはさらに磨きがかかった。


 ただし、これらはディーゼルエンジン車のみに施されたもので、2019年のマイナーチェンジ後もガソリンエンジン車は従来仕様のまま販売が継続されたが、同年に廃止となり、ディーゼルに一本化された。


 一方で、小規模な改良は毎年のように実施されてきた。


 2025年暮れには中規模な改良を実施。ボディにフェンダートリムを追加したことでスタイリングのメリハリが増し、より風格が高まった印象になった。


 パワートレインも、より充実させた。電子制御の4WDシステムはさらに進化し、S-AWD(スーパーAWD=三菱のさまざまな4WD制御を統合した4WDシステム)搭載で走破性と安定性が大きく向上した。


 インテリアもメーターパネルが全面液晶パネルとなって、運転時の印象は大幅に変わった。


●孤高の本格4WDミニバンの未来とは


 このようにリニューアルの印象を強く感じられることも、販売台数の増加につながったと思われる。というのも、現行モデルが登場して10年以上が経過しているのだから、D:5から新車のD:5へと乗り換えるケースが相当数あってもおかしくない。本格4WDミニバンは他にないため、気に入っていれば他のモデルを選択することはあまりないだろう。


 また、デリカD:5はクルマの残価率が高く、残価設定クレジットの利用も多い。利用しなくても、3年乗って8割以上の価格で下取りしてもらえるなら、頭金を追加するだけで、また新車のデリカD:5を買える。D:5オーナーが新型に買い替えるケースは当然多いはずだ。


 前述したインテリアや先進装備の充実によって、新しさを感じさせてオーナーの満足感を高めるのだ。このあたりは三菱が得意としてきた部分でもある。


 トヨタほどの中古車販売力は持ち合わせていないが、本格4WDミニバンという独自性を強みに残価率を維持し、生き残る術を築き上げたのである。


 これでD:5の進化は完熟状態ではないだろうか。となれば、今後のデリカシリーズがどうなっていくのか、気になるところだ。


 アウトランダーやエクリプスクロスなどのラインアップを考えれば、PHEV(プラグインハイブリッド車)への進化は避けられないと思うのだが、果たして新たなプラットフォームでPHEV化へと進むのだろうか。


 そしてもう一つ気になるのは、先日三菱が明らかにしたパジェロ復活との兼ね合いだ。常識的に考えれば、パジェロとデリカのすみ分けを図るのだろうが、そんな単純な話ではなさそうだ。


 むしろパジェロ復活により、デリカも6代目でなお本格4WDというオフロード重視のイメージを強調していくのだろうか。


 独自の領域を育てた三菱デリカには、当面ライバルはいない。ハイエースがキャブオーバーのバンとして独自の世界観を築き上げたように、デリカもまた孤高の本格4WDミニバンとして続いていきそうだ。


(高根英幸)


※下記の関連記事にある『【完全版】アルファードでもノアでもない 三菱「デリカD:5」はなぜ19年目に過去最高を更新したのか』では、配信していない豊富な写真とともに記事を閲覧できます。



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