牛丼3社で「松屋」だけ株価2割安、最高益なのになぜ? 増資後の展望に不透明感

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2026年08月12日 08:20  ITmedia ビジネスオンライン

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松屋の株価が冴えない……なぜ?

 大手牛丼チェーン3社のなかで、松屋フーズホールディングスがさえない。


【画像】松屋フーズHDと吉野家HDの株価チャート比較


 2026年3月期は売上高1844億7400万円(前期比19.6%増)、連結経常利益83億4000万円(同62.1%増)と、営業利益・経常利益・当期純利益のいずれも過去最高を更新した。


 競合の牛丼チェーンと比べると、その差は鮮明だ。ゼンショーホールディングスの「グローバルすき家」セグメントは売上高3144億5400万円(前期比6.3%増)に対し、営業利益は93億1700万円と同62.0%減。前期末に発生した害獣・害虫の混入事案を受けた安全衛生対策として、清掃の強化や老朽店舗の改装に取り組んだことが利益を圧迫した。


 吉野家ホールディングスの吉野家セグメントも、売上高1512億700万円(前期比9.7%増)に対しセグメント利益は76億2300万円と2.1%減。原材料を中心としたコスト上昇が響いた。


 3社の牛丼事業はそろって増収したが、増益を確保したのは松屋だけだ。


 ところが株価は逆を行った。松屋フーズHDの株価は年初来で20%を超える下げ幅を記録しているのに対し、吉野家は23%も株価が上昇している。 最高益を出した企業が、なぜ最も売られたのか。


●松屋、26年ぶりの増資がネガティブに


 松屋フーズHDは2月16日、公募増資などで最大101億円を調達すると発表した。


 公募による新株発行は140万株で、当時の発行済み株式総数(約1906万株)の約8%にあたる。同社の公募増資は1999年12月以来、26年ぶりだ。


 資金使途は「松屋」を中心とした新規出店費用だ。同社は1月につけ麺「六厘舎」などを手がける松富士を買収し、ラーメン領域にも手を広げている。牛丼一本足打法から脱却し、ゼンショー型の多ブランド展開モデルへかじを切る方向性は理解できる。


 だが、2027年3月期の連結経常利益予想は84億円と、前期比でわずか0.7%増にとどまる見込みだ。出店の加速に向けた先行投資が重荷となり、短期的には利益が押し下げられる形となっている。


 同社の30倍という高いPER(株価収益率)を支えていた成長シナリオに、増資による株式の希薄化と、横ばいの成長率が疑念をもたらしたのだ。


●9期にわたり据え置かれた配当


 株主還元への姿勢も、物足りない印象はぬぐえない。


 松屋フーズHDの2026年3月期の配当性向は12.2%で、1株当たり配当金は24円。EPS(1株当たり純利益)が196.74円と過去最高水準に達しても、配当は増えていない。この24円は2018年3月期から9期連続で据え置かれている。


 2027年3月期は26円に増配する予定だ。ただし増える2円の中身は、2026年6月に迎えた創業60周年を記念した「記念配当」であり、中間・期末にそれぞれ1円ずつ上乗せするもの。普通配当は24円のまま据え置かれる。


 吉野家HDの2026年2月期の配当性向はというと30.5%であり、18.3ポイントの差がある。


 つまり、松屋フーズHDの純利益は過去最高で、増資で発行済株式数は約8%増え、配当は9期据え置き。株主の取り分という観点では、増えたのは株式数だけだった。


●松屋は「一人負け」なのか?


 松屋の既存店売上高は3月が9.3%増、4月が8.0%増、5月が5.3%増と伸び率を落とし続け、6月はついに4.8%減とマイナスに転落。7月も0.0%と横ばいにとどまった。


 3月からの増収も中身を分解するとその実態が見える。3月の9.3%増は、客数が1.2%増にとどまる一方で客単価が7.9%増。売り上げ拡大のほとんどが客単価の上昇によるものだった。増収も過去最高益も、その多くは値上げで成り立っている。それが6月には客数4.5%減、客単価0.3%減。単価の押し上げ効果が消え、同時に客も減ったことが分かる。


 では、松屋は牛丼チェーンの中で「一人負け」状態なのか? 競合2社の業績も見ていこう。


 吉野家も6月は0.4%増と急ブレーキがかかったが、7月は6.5%増へ戻した。背景には7月2日に始まった「ドラゴンクエストウォーク」との初コラボが寄与した可能性が高い。本キャンペーンは、2週間ごとに切り替わるフィギュア付き牛丼セットを展開し、8月26日まで実施される。SNS上では、都心部の店舗を中心に行列が発生した様子や、フィギュアの在庫切れを伝える投稿が相次いだ。


 ちなみに松屋にそういった起爆剤がなかったのかというと、そうではない。松屋も6月30日からTVアニメ『ONE PIECE』とのコラボ「夏だ!宴だ!大まんぷく祭」を開始し、肉と玉ねぎを並の3倍にした「巨人盛りセット」やオリジナルグッズの配布を展開している。7月には定番メニューが何度でも割引になる「MATSUYA PASS」も200円で販売したが、大幅な増収にはつながらなかったとみられる。


 すき家はというと、既存店売上高は4月17.8%増、5月15.9%増、6月12.5%増、7月10.9%増と2桁の伸びが続いているが、これは「実力」と読むべきではない。すき家は2025年3月31〜4月4日にかけて店舗衛生対策でほぼ全店を一時閉店している。今年の増収はその反動による部分がかなり含まれていると考えられる。


 つまり、松屋が一人負けしているというよりは、吉野家がコラボキャンペーンに成功したと評価すべきであり、大手チェーン3社で勝負がついたとまでは言い切れない。


●問われるのは事業ではなく、ロードマップ


 株式市場が松屋に問うているのは、事業構造そのものではなく、成長へのロードマップだ。増資で調達した101億円を何に使い、いつ利益につなげるのか。値上げに頼らずに客数を戻す道筋はあるのか。9期連続で据え置いてきた配当金額を、今後どう扱うのか。


 最高益を出した企業の株価が下がるということは、市場からの「さらに成長する」という期待が薄れているということだ。松屋は明確なロードマップを提示し、市場の懸念を払拭できるか。その端緒は8月14日に予定される第1四半期決算に表れることだろう。



このニュースに関するつぶやき

  • 単なる一般客からすれば株価なんて知らん。株主配当が多いと聞けば「こんなに値上げしてムカつく」と思うだけ。で、後付けとも思える理由も客にはどーでもいい。
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