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近年、ドラッグストアの「スーパー化」が加速している。
ウエルシアを運営するウエルシア薬局(東京都千代田区)が推し進める「食品強化型店舗」では、入り口から入ると、棚一面に総菜や弁当、パンがズラリと並ぶ。ここだけを切り取ると、スーパーと何ら変わりがない。
ウエルシアホールディングス(HD) 秘書広報部 枝野彰彦氏は「スーパーほどの品ぞろえはありませんが、日常の食事には十分対応できます」と話す。全国2990店舗のうち、35店舗を食品強化型に改装済みで(2026年8月15日時点)、2027年2月期までに100店舗の拡大を目指しているという。
全国に1144店舗を展開するクスリのアオキでも、2020年頃から食品強化型店舗を精力的に増やしている。同社では、地方の食品スーパーを中心とするM&Aにより店舗網を拡大。2025年5月期までに700店舗を食品強化型店舗に改装済みで、2030年5月期までに400店舗の出店を見込んでいる。
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神奈川を中心に873店舗を展開するクリエイトSDホールディングスでも、食品スーパーのM&Aを進めている。2026年6月には、長野県出店への足がかりとして、同県の食品スーパー「やおふく」を子会社化した。
九州を基盤とするコスモス薬品も、1710店舗(2026年6月30日時点)のほぼ全店で食品を強化している。特売やポイントカードを設けず、原則現金払いとし、「365日毎日安い」を打ち出す。この徹底した低価格路線により、売上構成比は一般食品が62.9%と圧倒的だ。
ドラッグストアが次々と食品を強化する背景には、「集客」の狙いがある。食品は、医薬品や化粧品よりも粗利率が低いものの購入頻度は高い。そこで、食品を目当てに繰り返し来店してもらい、医薬品や化粧品の購入も促すことで全体の売上増につなげたいというわけだ。
ウエルシアの食品強化型店舗では、客数が約10〜15%、売上高が約10%増加するなど一定の成果が出ているという。同社の枝野氏に、「食品強化型店舗の戦略と反響」を聞いた。
●医薬品や化粧品は減らさず、生鮮や弁当を2.6倍
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ウエルシアでは、改装により食品強化型店舗を増やす「ドラッグ&フード戦略」を2025年8月から本格化している。まずは、2026年2月までに茨城や新潟などの郊外に10店舗を設置して検証。そこで一定の成果が得られたため、2027年2月期までに100店舗、2029年2月期までに400店舗の拡大を見込んでいるという。
立地は、ウエルシアの典型的な店舗面積である250〜300坪ほどの店舗の中で、「住宅街に近い」「周囲に食品が買える店が少ない」「競合の影響で売り上げが停滞している」といったところを選んでいるそうだ。
「食品強化店舗は、以前からポツポツと存在していましたが、多店舗展開ができる体制は整っていませんでした。コロナ禍を経てインフレが進み、日常食の需要が高まる中、従来のドラッグストアの強みである医薬品や化粧品に加え、食品を強化することで、来店頻度を高めたいと考えました」
食品強化といっても、ウエルシアでは医薬品、化粧品、ヘルスケア領域の製品取扱数は減らしていない。多くの売り場面積を割いていた酒類や菓子類を縮小・整理し、その他の食品を増やしたのだという。
「食品強化型店舗では、棚面積が日配食品1.5倍、生鮮・弁当・総菜2.6倍、冷凍食品・アイスクリーム1.6倍と大幅に増加しました。SKU(在庫管理上の最小単位)でいうと、日配食品が1.1倍、生鮮・弁当・総菜が3.0倍、冷凍食品・アイスクリームが1.5倍です」
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また、イオングループである強みを生かし、同社のPB「トップバリュ」の取扱数も改装前の約3倍に増やしている。中食需要を満たす目的から、昨今人気が高まっている「ワンプレート冷食」(ご飯とおかずを一皿に盛り付けた冷凍食品)もラインアップを拡充したそうだ。
店舗のレイアウトも大きく変えた。以前は、入り口の対角線上に高頻度で購入する日配食品を配置し、店内奥まで顧客を誘導し、そこから店内を回遊させようとしていた。また酒や菓子類は店内の奥まった場所やレジ横など複数箇所に置いていた。改装後は、入り口付近に食品類を広く並べ、店内全体を見渡せるようなレイアウトに変えている。
「店内を深く回遊せずとも直感的に食品を探せるよう、買い物の利便性を向上させました。改装後は、お客さまから『買い物がしやすくなった』という声が聞かれています」
●イオン傘下を強みに、競合と差別化
ウエルシアHDは、2025年12月のツルハHDとの経営統合により、業界最大手としての地位を固めている。ウエルシアの店舗数は2990に上り(2025年8月末時点、コクミンなど他ブランドも含む)、関東を中心に全国に店舗網を広げている。また、イオングループの傘下にあり、イオンのリソースを活用できることも同社の強みだ。
食品強化においては、クスリのアオキやコスモス薬品などの競合と比べて後発となるが、どのような点で差別化を図っているのか。
「スーパーマーケットを買収して業態転換している競合もいるなか、ウエルシアでは、イオングループのリソースを有効活用し、自社で調理を行っていません。これにより、コストを抑えています。また、管理栄養士やビューティーアドバイザーといった専門人材による商品提案も差別化の一つです」
また、食品を強化するにあたり、コンビニやスーパーと比較した価格競争力が求められる。この点については、「何でも安いディスカウント戦略ではなく、必要な商品は競争力のある価格に設定し、家計を応援する価格を実現している」と枝野氏は回答した。
ウエルシアHDの2026年2月期 第2四半期決算説明会の資料によると、食品の売上総利益率は、18.6%となる。一方、2025年スーパーマーケット年次統計調査によれば、スーパーマーケットの一般食品の売上総利益率は20.3%で、総菜は38.7%、青果は23.2%となる。
この数字を見ると、ウエルシアではスーパーよりも価格優位性が高いといえそうだが、枝野氏は「ドラッグストアとスーパーマーケットでは、食品の定義や会計上の扱いが異なる可能性があるため、一概には言えないと考えている」と明言を避けた。
結局のところ、食品強化型店舗を増やして、どんな変化が起きているのか。「一定の狙った効果が出ている」と枝野氏は明かした。
●食品を強化してどうなった?
「現状のざっくりとした数値にはなりますが、食品強化型店舗では客数が10〜15%、食品売上が約20%増加しています。また、食品以外の医薬品・化粧品・ヘルスケアのカテゴリー全体でも約7%の売上増が見られ、店舗全体として約10%の売上向上効果が確認されています」
客数が増加した背景には、新規顧客の来店や既存客の来店頻度の向上が予想されるという。スーパー代わりに通ったり、処方せんの薬の受け取りのついでに食品を購入したり、さまざまな利用シーンが考えられるそうだ。
現状の売れ筋は、弁当や総菜、バナナなどの果物、ワンプレート冷食だという。中食と呼ばれる、調理せずにそのまま食べられる食品が支持されている。
「弁当や総菜は、同じモノばかりだと飽きられてしまうので、お客さまの反応を見ながら新しいメニューに入れ替えるなど、都度見直しを図っています」
好調な一方で、食品の管理は課題となっている。生鮮や弁当・総菜の鮮度管理や品出しは、賞味期限の長い加工食品よりも現場の手間がかかる。魅力ある売り場づくりのために鮮度管理は欠かせないが、生鮮・畜産など分野ごとに担当者を配置するスーパーとは異なり、ウエルシアでは同じ従業員が売り場全体を担う。アルバイトやパートの従業員も多いなかで、効率的に管理するための仕組み化を図っているそうだ。
近年は、中食需要の増加からスーパー各社も弁当・総菜、冷凍食品などを積極的に強化している。薬局での買い物をするついでに手軽な価格で食品も購入できれば、消費者にとって利便性は高いが、スーパーから顧客を奪うのは容易ではないかもしれない。引き続き、ドラッグストア各社の試行錯誤は続きそうだ。
(小林香織、フリーライター)
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