『地球の歩き方』は“売上95%減”からどう立て直した? ホテルやお菓子、ディズニーまで広がるコラボ戦略

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2026年08月20日 05:41  ITmedia ビジネスオンライン

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地球の歩き方コラボルーム

 1979年創刊の旅行ガイドブック『地球の歩き方』が、旅行の枠を超えたコラボ企画に力を入れている。『地球の歩き方 ムー 〜異世界の歩き方〜』『地球の歩き方 JOJO ジョジョの奇妙な冒険』といったコラボガイドブックに加え、同誌の表紙デザインを活用したカプセル玩具やお菓子、ホテルの客室など、さまざまな企画を展開している。


【画像】『地球の歩き方 ムー 〜異世界の歩き方〜』


 なぜここまでコラボを広げるのか。背景には、コロナ禍による売り上げ95%減という危機があった。


●コロナ禍で学研傘下に


 『地球の歩き方』は40年以上、出版大手のダイヤモンド社(東京都渋谷区)の子会社であるダイヤモンド・ビッグ社(同)が発行してきた。しかし、コロナ禍で海外旅行需要が激減。事業の維持が難しくなったことから、2021年1月に学研グループに入り、現在は新会社「地球の歩き方」として事業を展開している。


 『地球の歩き方』でライセンスを担当している半田智志氏は当時について「一度死んだような大打撃を受けました。学研グループに入ったからといって、コロナが終わるわけではありません。海外のガイドブックを出すのは引き続き非常に難しい状況でした」と振り返る。


 旅行は「非日常」だ。1年365日のうち、旅行を通じて読者と接点を持てる時間は限られる。


 「旅行というシーンだけで、われわれが一般の消費者の方と接点を持てるのが年間30日くらいだとしたら、残りの335日は接点を持てません。コロナのような事態に襲われると、本当に立ち行かなくなってしまいます」(半田氏)


 そこで、旅行だけでなく、日常の中でも『地球の歩き方』と接点を持ってもらうため、ライセンス事業に取り組んだ。


 学研では、図鑑とコラボしたお菓子やアパレルなどのライセンス事業をすでに手掛けており、実績もあった。同社のライセンス担当者から「『地球の歩き方』だったら45年以上の歴史もあるから、絶対うまくいきますよ」と後押しされたことも、取り組みを進めるきっかけになったという。


●オカルト雑誌『月刊ムー』とコラボ


 こうして始まったライセンス事業で実現した企画の1つが、オカルト雑誌『月刊ムー』とのコラボだ。


 学研グループへの事業譲渡が発表された当時、『地球の歩き方』の公式Xでは「もしかすると来年は、ムー大陸やアトランティス大陸のガイドブックが出るかもしれません!!!」と投稿していた。


 まだ企画が具体的に決まっていない段階での投稿だったが、結果的に『月刊ムー』とのコラボが実現。地球の歩き方社長の新井邦弘氏が『月刊ムー』編集部の出身だったという縁もあった。古代遺跡やミステリースポットを取り上げた『地球の歩き方 ムー 〜異世界の歩き方〜』は14万部販売のヒットとなった。


 半田氏は「思いのほか相性がとても良かったです。例えばエジプトのピラミッドは『ムー』からすると「宇宙人の隠しシェルターか?」という見方になりますが、『地球の歩き方』では「何千年前に作られた遺跡である」と紹介しています。その組み合わせが読者に面白がられて売れました」と話す。


 旅行とは直接関係のないテーマにも、ガイドブックの形式を広げていった。『地球の歩き方 スター・ウォーズ』『地球の歩き方 ディズニーの世界』といった映画とのコラボや、投資信託「オルカン」の公式ガイドブックとして『地球の歩き方 オルカン』なども発売した。


 漫画『ジョジョの奇妙な冒険』とコラボし、物語の舞台を紹介した『地球の歩き方 JOJO ジョジョの奇妙な冒険』は17万部を売り上げた。


 コロナ前は、海外ガイドブックで4万部売れればヒットという状況だった。10万部を超えるガイドブックを出せるとは、思ってもいなかったという。『地球の歩き方』の主な読者層は50〜60代だ。コラボガイドブックでは、従来とは異なるIPのファンを取り込むことで、新たな接点も生まれた。


●書籍以外にも広がる『地球の歩き方』


 『地球の歩き方』といえば、黄色い背景に国ごとの名所を描いたイラストのある表紙が特徴だ。このおなじみのデザインを生かし、書籍にとどまらず、さまざまな商品やサービスとのコラボを展開している。


 カプセル玩具では『地球の歩き方』の表紙デザインのエコバッグ、クレーンゲームの景品ではポーチやバスタオルを展開。100円ショップでも、表紙をモチーフにしたクリアファイルや巾着袋、シールなどの文具・雑貨を販売した。ハワイ、日本などの『地球の歩き方』表紙デザインを採用した御朱印帳や、日本各地のご当地グルメや郷土料理を再現したおにぎりなども商品化している。


 バンダイと手掛けた「豆ガシャ本」は、『地球の歩き方』をそのまま約5センチのミニチュアサイズにしたカプセル玩具だ。マッチ箱よりもひと回りほど小さいサイズだが、中身は120ページ以上をフルカラーで再現。若年層には、ぬいぐるみに持たせて写真を撮るアイテムとしても人気を集め、SNSに投稿する人もいたという。


 食品とのコラボも複数展開している。半田氏は「旅行の楽しみの7〜8割は旅先で食べたり飲んだりすることなので、地球の歩き方というブランドと食べ物系の商品は相性がいいと思っています」と話す。


 ファミリーマートで2023年に発売した「グミ」(マンゴーラッシー味/杏仁豆腐味)は、『地球の歩き方 インド』の表紙をほぼそのままパッケージデザインにした。普段は書店で見かけるはずの『地球の歩き方』がコンビニに並ぶ姿はSNSでも話題になり、80万個を販売した。


 ホテルともコラボしている。H.I.S.ホテルホールディングスが展開している「変なホテル東京 羽田」では、「地球の歩き方コラボルーム」を2部屋オープン。ベッドカバーやカーテンに表紙のデザインを使い、壁一面には約100冊の『地球の歩き方』を並べた。


 「昔から『地球の歩き方』を読んでいるファンの方が、部屋をご指名で泊まりに来てくださっているようです。ベッドカバーも黄色くて、自分で言うのもなんですが落ち着かなそうですが(笑)」(半田氏)


 こうしたコラボは「何かご一緒できませんか」と企業側から地球の歩き方に、声がかかるケースも多いという。


 『地球の歩き方』の創刊45周年と雑貨店「3COINS」のブランド誕生30周年を記念したコラボ企画では、表紙イラストをあしらったステッカーやポーチ、パスポートケースなどを販売した。


 比較的若い女性を中心に支持される3COINSとのコラボ企画を持ちかけられた際には「われわれは、おしゃれじゃないけれども大丈夫ですか?」と聞いたという。3COINS側は「普段取り込めていない層にリーチできることを期待しています」と説明。実際にコラボ商品が発売され、店頭を訪れると、年配の夫婦が「これ、地球の歩き方とのコラボのやつよ」と商品を手に取る姿があった。


 ただし、コラボ先は何でもよいわけではない。重視しているのは「歴史・伝統がある」「安心・信頼できる」といった自社のブランドイメージに合っているかどうかだ。


 「中途半端なものは世に出したくないので、食品であれば『本場の味にこだわる』といった、われわれの気持ちに賛同していただける会社さんとご一緒させていただいています」(半田氏)


●なぜここまで「コラボ」を拡大できたのか


 なぜ『地球の歩き方』は、ここまで多くのコラボ商品を生み出せたのか。


 『地球の歩き方』は1979年の創刊以来、海外旅行を中心としたガイドブックを発行してきた。読者から「初めて海外に行ったときにお世話になりました」と言われることも多く、長年の積み重ねがブランドへの信頼につながっていると気付いたという。


 海外旅行には、慣れない土地を訪れる不安がある。そうした中で旅行者に情報を提供し、旅を支えてきたことが、「安心・信頼」というブランドイメージにつながった。


 もう一つの強みが、国ごとの名所を描いた表紙のイラストだ。


 「『地球の歩き方』といえば、このイラストだよね、という分かりやすさがあります。ネーミングもそうですが、カバーデザインのビジュアルも、ライセンス展開していく上での武器になると思いました」(半田氏)


 『地球の歩き方』の認知度や好感度について18歳以上の約1000人を対象に実施した調査では、「『地球の歩き方』を知らない」と答えた人は1人もいなかったという。若年層でも、親や祖父母が持っていたことなどをきっかけに認知されていた。


 ライセンス商品の売り上げは「出版販売の足元にも及ばない」という。しかし、PR面での効果は大きい。普段は書店でしか目にしない『地球の歩き方』が、コンビニや雑貨店などに並ぶことで、新たな接点が生まれる。


 編集部では「コロナで一度死んだような身だから、もう何でもやろう」という思いで、各国の料理を楽しめる飲食店や体験型のレジャー施設など、新たな事業への展開も構想している。半田氏は「『地球の歩き方って、旅行ガイドブックだったんだ』と言われるくらいに、コラボ商品からの入り口を増やして、バリエーションを広げていけたらいいなと思っています」と語った。



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