
米連邦取引委員会(FTC)と米22州の司法長官は8月31日(現地時間)、米Amazonが検索連動型広告のオークションで価格を秘密裏につり上げていたとして、ワシントン州西部地区連邦地方裁判所に提訴した。
訴状は、2019年以降、Amazonが米国内の約120万の広告主から組織的に過大な料金を徴収し、200億ドル超を不当に得ていた可能性があると主張している。提訴を承認する委員会の採決は2対0だった。
対象となるのは、Amazonの検索結果ページなどに表示される「スポンサープロダクト広告」「スポンサーブランド広告」「ディスプレイ広告」の掲載枠を争うオークションだ。訴状によると、Amazonは2012年ごろのオークション開始以来、広告主に対し、落札者は「次に高い入札額より1セント高い金額」だけを支払う「セカンドプライス(GSP)オークション」だと説明してきた。しかし2018年後半から2019年にかけて、Amazonはオークションの結果を上書きし、自社が設定したより高い価格を課金するようになったという。
この仕組みをAmazonは社内で「ソフトリザーブプライス」と呼んでいた。訴状によると、通常のリザーブ価格が入札前に設定される最低価格を指すのに対し、Amazonの仕組みはオークション終了後にGSPの算出価格をより高い価格に置き換えるもので、社内では「事後的な価格調整」と呼ばれていたという。広告部門を統括する上級副社長は社内で、Amazonのオークションでは2位価格が「実際の入札者によって決まっていない」とし、自社が算出する擬似的な2位価格だと説明していたとされる。
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スポンサープロダクト広告で広告主が自らの入札額を支払った割合は、2021年の30〜40%から2022年に70%、2024年には約80%に上昇したとされる。スポンサーブランド広告では、2024年時点でクリックの70%についてAmazonが価格を設定し、50%は入札額がそのまま課金されていたという。なお、上乗せ率そのものの数値は公開版の訴状では黒塗りになっている。
訴状はまた、Amazonが上乗せの発覚を避けるための対策を重ねてきたと主張する。価格上乗せを段階的に引き上げて検知リスクを試験し、報告データを集計値にとどめて広告主が個々のオークション結果を検証できないようにしていたという。プライムデーや年末商戦のような取引量の多い時期には上乗せ幅をさらに引き上げており、社内では、需要増による価格変動と区別がつかず「隠れみの」になるとの認識が共有されていたとしている。
価格急騰が表面化した際には、虚偽の説明で対応したとも主張されている。2021年12月にはクリック単価の急騰で大手広告主や広告代理店から20件近い苦情が寄せられたが、Amazonは広報部門と法務部門の確認を経た上で、広告主と買い物客の需要増が原因だとするメールを送ったとされる。
Amazonが自社サイトに「リザーブ価格」への言及を初めて追加したのは、FTCの調査を認識してから約1年後の2025年10月30日で、掲載箇所はサポートページ1カ所だったと訴状は指摘。2026年3月に記述を更新し、実際の課金額が2位入札額を上回る場合があると明記したものの、既存の説明を訂正する措置は取っていないと主張している。
FTCのアンドリュー・ファーガソン委員長は、多数の広告主が誤解したまま著しく高い料金を支払わされ、その負担の多くは米国の消費者に転嫁されたとの見方を示した。FTCはFTC法5条(a)違反として恒久的差し止めなどを求め、各州は州の消費者保護法違反に基づき、差し止め、賠償、不当利得の吐き出し、民事制裁金、弁護士費用などを求めている。
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提訴にはワシントン州のほか、アラスカ、アリゾナ、カリフォルニア、コロラド、フロリダ、ニューヨークなど計22州が加わった。ワシントン州のニック・ブラウン司法長官は、州内の多くの小規模事業者がAmazonに生計を依存しているとして、同社が公正かつ透明に、法に沿って事業者を扱うよう是正を求めていくと述べた。原告側は、対象となる広告主に50万社を超える中小企業が含まれるとしている。
Amazonは同日公開した声明で、今回の提訴を「見当違い」とし、強く異議を唱えた。同社は、訴状には消費者の価格上昇を示す証拠がなく、150ページを超える文書で消費者への言及はごくわずかだと指摘。スポンサープロダクトの検索広告のクリック単価は2019年から2024年までインフレ調整後で横ばいであり、コンバージョン率は2021年から2025年にかけて24%以上向上したと説明した。
Amazonによると、ソフトリザーブは広告枠の実勢価値を推定した最低価格で、業界で一般的な仕組みという。落札した広告主の入札額がハードリザーブとソフトリザーブの双方を上回る場合、支払うのは入札額より低いソフトリザーブとなり、入札額を超えて課金されることはないとしている。2024年にはスポンサープロダクトの掲載広告の約92%が最高額入札ではなく、関連性を重視する仕組みにより広告主は2021年から2025年に80億ドル以上を節約できたと試算する。
FTCが根拠とした説明資料についても、更新漏れとなっていた受講者数の極めて少ない古い研修コンテンツや動画を取り上げたものだと反論。法廷で主張を展開するとしている。
Amazonの2026年第2四半期の広告サービス売上高は198億900万ドルで前年同期比26%増だった。オンラインストア(売上高は15%増の704億3200万ドル)を上回る成長ペースで、アンディ・ジャシーCEOも決算発表で広告事業の好調に言及していた。
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