
A. 咲く時期や場所、別名、独特な生態が「怖い」イメージにつながっている
彼岸花が「怖い」「不気味」と語られがちなのは、いくつかの理由が重なっているためです。「死人花」「幽霊花」と呼ばれる理由
彼岸花の開花期間はおよそ1週間と短く、秋のお彼岸シーズンに重なるように咲きます。あの世とこの世が最も通じやすいとされるお彼岸に咲く花であることが神秘的な印象につながっています。また墓地や寺院などに植えられていることが多いため、「死人花」「幽霊花」「地獄花」という別名がついたとされています。
その背景には、昔の人の知恵があります。彼岸花には毒があるため、まだ土葬が一般的だったころモグラやネズミなどから守るという役目があり、怖い別名があることで、子どもたちが不用意に近づかなくなると考えたのです。
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「毒花」「痺れ花」という呼び名も
彼岸花にはアルカロイドという毒があることから、「毒花」「痺れ花」とも呼ばれます。もっとも毒は水にさらすことで抜けるため、昔は飢饉(ききん)の際に毒を抜き、デンプンを含んだ球根を食用にすることもあったそうです。田んぼのあぜ道に彼岸花が多いのも、モグラやネズミ除けとしてだけでなく、飢饉に備えて植えられたという説があります。
なお、彼岸花には赤だけでなく白や黄色の品種もありますが、いずれも根に毒を持っているので注意が必要です。
「妖しさ」のある姿かたち

開花時期の彼岸花には、葉がまったくありません。花が終わってから葉が出てくるという、一般的な植物とは逆のサイクルを持っているからで、「葉見ず花見ず」という呼び名もあります。
秋雨の頃に芽を出すと1日に10cm近くも茎が伸びて、瞬く間に50cmほどになり、真っ赤な花を咲かせます。そして1週間ほどで花や茎が枯れると、今度は球根から緑の葉が伸びてきます。
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本来は「天界に咲く花」を意味するおめでたい名前も
怖い呼び名の一方で、彼岸花にはサンスクリット語由来の「曼珠沙華(まんじゅしゃげ)」という別名もあります。これは仏教の経典に由来し、「おめでたいことが起こる兆しとして、天から赤い花が降ってくる」という意味があります。花言葉は「情熱」「悲しい思い出」
彼岸花の花言葉は「情熱」「悲しい思い出」「独立」「再会」「あきらめ」。不気味な別名とはまた違う、どこか切ない言葉が並んでいます。「怖い花」から人気の「絶景」スポットへ
「死人花」「幽霊花」といった怖いイメージの由来をひもといてみれば、そこには毒への警戒心や、子どもたちを守る知恵、お墓という特別な場所への畏敬の念がありました。最近では、「曼珠沙華」という美しい呼び名の通り、巾着田(きんちゃくだ/埼玉県日高市)や幸手権現堂公園(さってごんげんどうこうえん/埼玉県幸手市)、琵琶湖畔の桂浜園地(かつらはまえんち/滋賀県高島市)のような群生地には絶景を求めて多くの人が足を運びます。
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(文:三浦 康子(暮らしの歳時記ガイド))
