限定公開( 1 )

各テーマパークで、追加料金の支払いや高価なチケットの購入によって行列をスキップできる制度が普及している。
東京ディズニーリゾート(TDR)は2022年に「ディズニー・プレミアアクセス」を導入し、大阪のひらかたパークは2024年に「優先乗車券」を発売。ジャングリア沖縄はこの8月から、約3万円の高額チケットの販売を開始した。
アトラクションの長い行列に不満を感じる利用者は多く、お金でスキップできる制度は「早く乗りたい」ニーズに応える狙いがある。
●無料の「ファストパス」を廃止したTDR
|
|
|
|
TDRが2022年に導入したディズニー・プレミアアクセスは、有料で行列をパスできる制度だ。入園後、アプリから乗りたいアトラクションを時間指定で予約する仕組みで、導入当初の料金は1回2000円。当初はランドとシーにある各1アトラクションが対象だった。現在では25のアトラクションとショーまで対象が広がり、料金も1000〜3500円と幅がある(9月15日時点、以下同)。
TDRは無料で行列をパスできる仕組みを段階的に廃止してきた。2000年に導入した「ディズニー・ファストパス」はコロナ禍で休止となり、2023年に終了している。特定のアトラクションの前にある機械にパスポートをかざすと整理券が出てくるシステムで、整理券に印字された時間内であれば、そのアトラクションに優先的に乗ることができた。2019年からはアプリにも対応していた。
2023年には40周年を記念して、対象のアトラクションへ無料で優先入場できる「40周年記念プライオリティパス」を始めた。アプリなどから特定の人気アトラクションへの優先入場を予約できるサービスだ。
こちらは当初から期間限定としており、2026年8月にサービスを終了した。現在、行列をパスするにはディズニー・プレミアアクセスを利用する必要がある。プレミアアクセスを導入した理由について、運営元のオリエンタルランドは次のように公表している。
「両パークでは、1日当たりの入園者数上限を新型コロナウイルス感染症流行前よりも引き下げ、快適なパーク環境を目指した運営をしてまいります。今後も多様化するゲストニーズに柔軟にお応えできる施策を導入し、体験価値の向上に取り組んでまいります」
|
|
|
|
2010年代までTDRは過剰な混雑が顧客満足度を下げるという課題を抱えていた。コロナ禍以降、値上げや年間パスポートの廃止、価格変動制によって客数を減らす一方、客単価を上げる施策を進めている。プレミアアクセスの導入もその一環と言える。
●USJでは開業当初から販売していた
ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)は同様のサービスとして入場券とは別に「ユニバーサル・エクスプレス・パス」を販売している。期間限定のものを除くと、現在は4種類がある。
最も安い、特定の4つのアトラクションに優先的に乗れる「エクスプレス・パス4」は1万4800円〜だ。最も高いのは7つのアトラクションを選べる「エクスプレス・パス7」で2万1800円〜。優先入場できるのは1つのアトラクションにつき、1回まで。USJでは開業当初から、同様のシステムを導入していた。
同じく関西のひらかたパークでも優先乗車券を販売している。「混雑時にも時間を気にせず効率よく園内を回りたい」「子どもやお年寄りにとって負担が大きいアトラクションの待ち時間を短縮したい」などのニーズに応える狙いがあるという。価格は、ジェットコースター類の2アトラクションが1回500円、ウォーターアトラクションが1500円だ(オンライン上で購入)。SNSでは待ち時間を短縮できるとして、好意的な意見も多くみられる。
|
|
|
|
同様のチケットは、国内の他の施設でも見られる。富士急ハイランドは2008年、ナガシマスパーランドは2015年に導入していた。
●ジャングリア「約3万円の高級チケット」はどんな内容?
ジャングリア沖縄は8月、大人2万9700円の「ロイヤルチケット」を発売した。パークとスパを両方利用できる1日入場券と、特定アトラクションの行列をスキップできる権利、駐車場無料券などがついた商品だ。開業当時からアトラクションごとに購入する優先乗車券「プレミアム パス」を販売していたが、こちらは時間指定があった。ロイヤルチケットの購入者は一部アトラクションを除いて時間の制限を受けず行列をスキップできる。
ジャングリア沖縄は開業当初、300分待ちになるなど過剰な混雑が課題となっていた。根本原因は客数の多さよりも、少ないアトラクション数や1施設当たりの収容数不足にあったとされる。
TDRやUSJのようなテーマパークは、小型の乗り物をコンベア上で大量に動かすアトラクションや、1回当たりの収容力が大きいアトラクションを運営している。当初のジャングリアにはこうした施設が不足しており、待ち時間が長引いていた。現在でも「混雑している」というイメージを持つ人は多く、ロイヤルチケットは、タイパを重視する層を取り込む狙いがあるとみられる。
●優先乗車券が事業者にもたらすメリットとは?
国内の事例を振り返ると、お金で行列をスキップできる仕組みはここ数年で一気に普及したことが分かる。IPの人気や相次ぐテーマパークの閉園を背景に、TDRやUSJのような大型施設の来場者数は増加し、混雑が目立つようになったことが背景にあるだろう。TDRの事例で示した通り、長い待ち時間は顧客満足度の低下につながる。優先乗車券の販売は「待ちたくない」というニーズに応える狙いがある。
優先乗車券の導入による事業者側のメリットは、単に優先券の売り上げだけではない。行列をスキップした客は、行列に費やしていた時間を他の行為に充てられる。優先乗車でアトラクションを利用し終えた客が園内のカフェを訪れれば、飲食の収入が増えることになる。USJのように一部テーマパークの来場者数は増えており、優先乗車券の対象アトラクション数は増えていくかもしれない。
●著者プロフィール:山口伸
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。
|
|
|
|
|
|
|
|
Copyright(C) 2026 ITmedia Inc. All rights reserved. 記事・写真の無断転載を禁じます。
掲載情報の著作権は提供元企業に帰属します。