認知症ケア支える「優しいうそ」=広がる「バスの来ないバス停」―「また来ようね」で寄り添う・愛知

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2026年10月14日 15:02  時事通信社

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認知症の人らが交流するカフェ「アンキカフェ」に設置された「バスの来ないバス停」と待合室=7月28日、愛知県豊橋市
 認知症の人やその家族が交流するカフェ「アンキカフェ」(愛知県豊橋市)には、古びた「バス停」がある。時刻表もあるが、バスは来ない。「家に帰る」と施設から出てしまうのを防ぐために海外で生まれたアイデアを基に、日本に設置された「バスの来ないバス停」の先駆け的存在だ。「優しいうそ」とも呼ばれ、同様の取り組みが各地に広がっている。

 カフェを運営するNPO法人「ぽかぽかの森」理事長の杉野友香さん(56)によると、「バスの来ないバス停」はドイツで生まれた。認知症の人が入所する施設などに設置すると、家に帰ろうとする人がバスを待つうちに落ち着きを取り戻した事例があると知り、「優しいうそで寄り添う。これはいいと思った」と振り返る。

 アンキカフェに入居者はいない。ただ、「シンボルにしたい」と考え、豊橋鉄道(豊橋市)から廃棄予定のバス停の標識を譲り受け、2021年に設置した。

 取り組みが知られると、豊橋鉄道にはグループホームなどから協力依頼が相次いだ。これまでに標識を提供した施設は15カ所。「『バスを待ちましょう』と声を掛けると、自分の気持ちを受け止めてくれたと感じ落ち着くことがある」との声などが寄せられているという。事実と異なる状況を示すことへの慎重論もあるが、同社の担当者、赤川景子さんは「認知症の人のケアになり、介護者の負担も減る。今後も提供を進めたい」と話す。

 グループホーム「あいちの森」(豊橋市)も効果を感じている施設の一つだ。6月、豊橋鉄道の協力で「バス停」とベンチを設置すると、散歩する人を含め毎日10人前後が利用するようになった。日に3回訪れる人もいるといい、管理者の西口ひろみさん(64)は「『バスが来ないからまた来ようね』と声を掛けると部屋へ戻る。待っていること自体を忘れてしまう人もいる」と語る。

 「バスの来ないバス停」はいま、多くのバス会社の協力を得ながら全国へ広がっている。アンキカフェには、評判を聞いた子どもたちが訪れるようになり、認知症の利用者との世代を超えた交流も生まれた。「『バス停』が居場所にもなっている」。杉野さんは手応えを感じている。 

「バスの来ないバス停」について話すNPO法人「ぽかぽかの森」理事長、杉野友香さん=7月28日、愛知県豊橋市
「バスの来ないバス停」について話すNPO法人「ぽかぽかの森」理事長、杉野友香さん=7月28日、愛知県豊橋市

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