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「いまならマンション経営がオススメです」「オススメの戸建てもご案内できますよ」。こうした営業電話が連日のようにかかってきて、うんざりしたことはありませんか。
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東京都世田谷区の会社員男性(30代)のもとへは毎日2〜3回、日中にこうした営業電話が不動産業者からかかってきました。電話は、過去に物件を探していた時期に登録した業者から。
「もう間に合っていますので」と答えても、先方は電話をやめなかったため、「着信拒否」にしました。それでも別の番号を使って電話をしてくるしつこさ。男性は「ここまできたら悪質な嫌がらせ、何か犯罪にならないのか」と憤っています。
こうした業者の行為は法的に問題にはならないのでしょうか。坂野真一弁護士に聞きました。
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ーー業者の行為は刑事罰に問うことはできるでしょうか
「迷惑な営業電話行為それ自体を、直接取り締まりの対象として刑事罰を科している法律はないようです。しかし、あまりにも多く電話をかけて相手方の業務に支障をきたした場合等には偽計業務妨害罪(刑法233条)の適用が考えられます」
ーー悪質な、精神的ダメージを負わせようとする電話ならいかがでしょうか
「営業電話に名を借りて相手方を精神的に痛めつけるつもりがあったり、相手方が精神的に傷ついても構わないと思って電話を続け、相手方が精神疾患に陥ったりした場合は傷害罪(刑法204条)の適用も考えられます。
さらに営業活動がエスカレートして電話の内容が、相手方の生命・身体・財産などに害を加えるなどと脅す内容にまで至れば、脅迫罪(222条)の適用可能性もあります」
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ーー軽い気持ちによるイタズラ電話もありそうです
「はい。実際には処罰されることは考えにくいのですが、イタズラで電話をかけて相手の業務を妨害すれば軽犯罪法1条31号に該当する可能性もあります。
ただし、業者からの勧誘電話が刑事罰の対象に該当するケースは限られていると考えられますから、『しつこいな』というレベルでは、刑事罰の適用は困難と考えるべきでしょう」
ーーでは民事責任についてはいかがでしょうか
「民事的な問題で考えると、一般に営業電話は電話勧誘販売に該当するので、特定商取引に関する法律(特商法)で規制されています。特商法は17条で、契約を締結しない意思を表示した者への勧誘継続・再勧誘を禁止しています。
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この規定に違反した場合、業者は主務大臣の指示・業務停止命令の対象となります(特商法22・23条)」
ーーなるほど、不動産購入の勧誘についても同じように考えられますか
「本件のような不動産購入の勧誘については、宅地建物取引業者が行う場合は特商法26条で1項8号ロにより、特商法の規定が及ばないように見えるため問題となります。
しかし、特商法がこの場合に適用を除外しているのは、宅建業法で別途規制されているからです。
つまり、宅建業法47条の2第3項が禁止する行為については、宅建業法施行規則16条の12第1号ニにおいて具体的に定められています。
そこでは、『宅地建物取引業者の相手方等が当該契約を締結しない旨の意思(当該勧誘を引き続き受けることを希望しない旨の意思を含む)を表示したにもかかわらず、当該勧誘を継続すること』が禁止事項としてあげられています」
ーー要するに、不動産購入の勧誘に対しても契約を結ばない意思を示せば、勧誘行為をすることはできないということですね
「はい。そしてこれに違反すると指示処分、業務停止処分の対象となるだけでなく、情状が特に重い時は免許取消処分の対象となる可能性もあります。
なお、現実に犯罪が成立するほど悪質な勧誘電話であれば、不法行為として損害賠償責任を追及することも不可能ではないでしょう」
ーー現実的にはどのような対処をすべきでしょうか
「最も良い対応は、電話に出ない、着信拒否をすることです。それが不可能であっても、迷惑電話防止のため録音することを予めアナウンスする等の迷惑電話防止機能をもった電話機で対応することが次善の策です。
電話に出てしまった場合でも、ほとんどの場合は法令により、消費者に対し、勧誘に先立って事業者の氏名または名称、勧誘を行う者の氏名、商品・権利・役務の種類、勧誘をするための電話であること等を告げなければならない(特商法16条等)とされています。
したがって、勧誘目的だと分かった時点で、『勧誘に応じるつもりはありませんので、今後電話しないで下さい』と言って、それ以上話を聞かずに電話を切っても何の問題もありません」
ーー語気を荒げて話してくる場合はどうしたらいいでしょうか
「はい、例えば『なんだその態度は、そちらに行くぞ』と脅してくる場合は、『このことを警察に通報しますよ』と言って対抗しましょう。
ーー勧誘目的かどうか明言しない相手にはどう対応すべきでしょうか
「先ほど述べたとおり電話勧誘販売においては、特商法などにより、勧誘の目的であることを明示する必要があります。逆に言えば、勧誘の目的であると言わせれば特商法等の規定が適用できます。
そこで、詳しい話になる前に『このお電話は勧誘目的ですか?』と聞くのがよいでしょう。『勧誘目的ではありません』と返答されたら、『私には全く意味のない電話なので切らせてもらいます』といって切ればいいと思います」
ーーそれでは「勧誘目的です」と返してきたら、どうすればいいですか
「『勧誘目的です』と返答してくれば、『法律によって契約を締結しない意思を表示した者への勧誘継続・再勧誘は禁止されています。私は契約を締結する意思はありませんので、今後一切電話しないで下さい』と答えて電話を切るという方法が考えられます。
それでもしつこく話してくる場合は、本件の場合であれば、『御社が宅建業法で禁止されている勧誘継続行為をしていることを国交省にお伝えすることになりますよ』と伝えることも効果的かもしれません」
ーーあとは録音をして相手の音声を録っておくべきでしょうか
「そうですね。あとで証拠などに使える可能性があるので、いずれの場合でも、可能な限り録音しておいた方が良いでしょうね。
万一、気が弱くて押し切られて契約を申し込んでしまった場合でも、クーリングオフができる場合もありますから、あきらめずにすぐに消費者センターや弁護士に相談することが大事です」
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(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
坂野 真一(さかの・しんいち)弁護士
ウィン綜合法律事務所 代表弁護士。京都大学法学部卒。関西学院大学、同大学院法学研究科非常勤講師。著書(共著)「判例法理・経営判断原則」「判例法理・取締役の監視義務」(いずれも中央経済社)、「先生大変です!!」(EPIC社)、「弁護士13人が伝えたいこと〜32例の失敗と成功」(日本加除出版)等。近時は相続案件、火災保険金未払事件にも注力。
事務所名:ウィン綜合法律事務所
事務所URL:http://www.win-law.jp/
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