画像提供:マイナビニュース ●涙ぐみながら見守っていた
アニソンファン必見の音楽番組『オダイバ!!超次元音楽祭』が、フジテレビできょう2日(24:50〜26:50 ※関東ローカル)に放送される。水樹奈々やAqoursなどの比較的音楽番組になじみのある面々に加え、音楽番組での歌唱がレアな花澤香菜や、音楽番組初出演となるClariSといった全17組のアーティストが歌唱を披露。しかもそれを、あの『FNS歌謡祭』の制作チームが本気で担当する。
この番組では、昨年、放火殺人事件で多くの犠牲者を出した京都アニメーションが制作した『涼宮ハルヒの憂鬱』の挿入歌「God knows...」を平野綾が歌唱する。その点をはじめ、今回のアーティストの人選や選曲の狙いなどを、企画・演出を担当する浜崎綾氏に聞いた――。
○■「アニソンファンが納得する顔ぶれ」最優先に
――今回のアーティストさんの人選についてお聞かせください。どのような基準で選ばれたのでしょう?
やはり1回目なので、アニソンファンやアニメファンが「こう来られたら、文句言えないな」というような方々はそろえたい、という気持ちはありましたね。自分が本当に好きな方に出てもらいたいし、その方々を集められたら納得してくれるはずだっていう自負もありますし。そのうえで、私がこれまで築いてきた人間関係なども踏まえてお声がけをさせていただきました。
――そういった意味も含めて声をかけられたのは、たとえばどなたでしょう?
しいて1人挙げるなら、平野綾さんですね。今や舞台女優としても成功されている方ですけれど、昔『ピカルの定理』という番組でご一緒していた縁で個人的に交流も続いていたんです。『FNS歌謡祭』が近年ミュージカルを扱うようになったこともあって、平野さんが出演するミュージカルを観に行かせていただいたりしていました。
2019年、アニメファンにとって非常に心を痛める悲しい事件がありました。そのときに「歌に祈りを込めて届けるっていうのが、私たちに今できることだと思うんだけどどう思う?」と平野さんに相談したら、平野さんも「今、自分が『ハルヒ』の曲を歌うことで少しでも力になれるなら、歌いたいです」と言ってくださり、このタイミングで出演していただけることになりました。正直、今「God Knows...」を歌うのは勇気が必要だったと思います。
でも、「すべての思いを歌に込める」と言ってくださった平野さんには本当に感謝していますし、それが伝わるパフォーマンスだったと思います。しかも、「God Knows...」を作編曲した神前暁さんも収録にいらっしゃってくださったんです。他にも当時『ハルヒ』に関わっていた関係者の方が何人かスタジオにいたのですが、涙ぐみながら平野さんのパフォーマンスを見守っていました。それぞれがそれぞれの思いを馳せながらの収録になりました。
○■“必殺曲”から勢いのある面々まで
――平野さんも含め、出演される方々の年代も結構幅広い印象があります。
「特定の年代が偏らないようにする」というのも意識しました。テレビでアニソン特集をやっているとき、「作り手がそこをわからずに作ってるな」ってわりとバレてしまうと思うんです。それこそ、昭和のアニソンに偏っていたりとか。でもこの番組は、そういうものではなくて…もちろん歌っていただく曲は、テッパンはテッパンです。たとえば「星間飛行」とか「ETERNAL BLAZE」って、発売から10年以上経ってもカラオケランキングの上位に入っているんですよね。「God knows...」もそうです。そういういわば“必殺曲”と、水瀬いのりさんのように「今、めっちゃイケてます!」みたいな人を同時にお届けしたかったんです。
あと考えたのは、声優さんとアニソンアーティストと、AqoursやRoseliaみたいなコンテンツ発のユニットのバランスですね。一口に“アニソン”と言ってもいろいろジャンルがあるので、そこのバランスは考えました。
――声優ユニットとしても、TrySailがいますし。
そうですね。雨宮天さんには、5年ぐらい前に『MUSIC FAIR』に出ていただいたことがあるんです。
――『一週間フレンズ。』のEDでカバーされていた「奏」を歌われていましたね。
はい。ただ、当然ユニットだと曲調もまた全然違うので、今回はどんなパフォーマンスを見せてくださるのか楽しみにしています。
●「顔を出さない人でもテレビに」モデルケースへ
――前編のインタビューで、「アニメにそれほど興味がなかったりアニソンに詳しくない人にとっての、いい“見本市”のような番組にしたい」とおっしゃいましたが、今回がテレビ初出演や音楽番組への出演がまれな方がたくさんいらっしゃるのも魅力のひとつです。特に衝撃だったのが、やはりClariSが出演するということで。
ClariSはテレビの音楽番組初出演なんですけれど、私、ずっと好きで。ガラケーのときにメロディコールってあったじゃないですか。あれをずっと「コネクト」にしていたくらい好きなんですよ。ただ、顔出しをしないユニットなので「出てくれないよなぁ…」と思ったりもしたんです。
――そこで諦めずに声をかけたのは、なぜですか?
今って、まふまふくんとか浦島坂田船、広く言うと米津玄師さんもそうだと思うんですけれど、ライブ以外のメディアに顔を出さないっていうブランディングが結構当たり前のものになってきていると思うんです。そんな中で「『顔を出さないからテレビ出れません』っておかしいんじゃないか?」と思ったので、今回は「顔を出さないなら、出さないまま出演していただいて大丈夫ですよ」という感じにして、「顔を出さない人でも普通にテレビに出られるんだ」っていう新しいモデルケースを作ろうと思いました。だから、ClariSももちろん仮面は外しませんし、CHiCO with HoneyWorksもオンエアで顔は出しません。「それでもやっぱり、この番組に出てほしい」という気持ちが勝ったからなんですよ。
――それは、前編でおっしゃっていた「いい音楽を地上波でいろんな人に知ってほしい」という想いから。
はい。それが何よりも、最優先です。
○■必ず爪痕を残してくれるはず
――花澤香菜さんも民放の音楽番組に出演するのは初めてですよね?
そうなんですよ。NHKさんには出てらっしゃると思うんですけれど。実は、花澤さんもオファーしたのは初めてではないんです。
――以前にオファーされたことが?
はい。私、KinKi Kidsの番組を16年やっていて、KinKi Kids20周年記念回のときに「もう一度観たかった!レア映像グランプリ」という企画をやったんですけど、「『今トップ声優として活躍する花澤香菜が、実は昔、ドラマで堂本剛と共演していた!』というネタで出ていただけませんか?」とお声がけしたことがあったんです。そのときは叶わなかったんですが、その後もお仕事させていただく機会を虎視眈々とうかがっていて、ここでやっと…という感じですね。
――その他、アニソンや声優に詳しい人にはおなじみでも、そうでない人にはそこまで知られていないかもしれない方もたくさん出演されますね。たとえば、小倉唯さんとか。
たぶんそこは、バナナマンさんがいい感じでキャラを引き出してくれると思うんです。小倉さんってキャラクターも含め、めちゃくちゃテレビ映えする方。今回もきっと爪痕を残してくれるはずです。
●作り手の熱意で押し切れるような番組を
――おそらく放送中から、Twitterなどですさまじい反響があると思いますよ。
やっぱり今のフジテレビって、「これをやってた」ことすら知られずに終わっていくものが多すぎると思うので、爪痕残せるコンテンツが必要だと思うんです。それは視聴率がどうこうではなくて…それこそTwitterでバズるのもそうですし、この番組に出たアーティストが2020年どうテレビで露出していくのかも含めて“ここから始まった”感はすごく出したいですね。たぶん、自然と出るんじゃないかなと思いますけれど。
――最近のフジテレビさんは新しい試みの番組がまた増えている印象もあります。個人的には『超逆境クイズバトル!! 99人の壁』が大好きで。
あれは当時入社2年目だった千葉(悠矢)が、社内のプレゼン大会を勝ち抜いて実現した企画なんですけれど…ただ、最初はこれ、番組として成立するのかなって(笑)。でも、やたら千葉のプレゼンが熱かったんですよね。だからその熱に押されて投票した人も多かったんだろうなと思うんです。
――そこは、今回の浜崎さんとも通じる部分があるかもしれませんね。
そうかもしれないですね。作り手が「これ、自分やりたいんです! 間違いないんです! あなたは分からないかもしれないけれど、任せてくれたらなんとかなります」みたいな企画がもっと増えていくと、フジテレビもいい感じになっていくのかなって思います。
○■第2弾の展望は…
――そんな熱意から生まれた今回の番組ですが、評判を呼んで「第2弾も」となったら、出ていただきたい方はいらっしゃいますか?
今回オファーした中でスケジュールの都合などもあって叶わなかった方はもちろんですけれど、特に今年で言うと個人的には「お願いマッスル」ですね。「ボディビルダー20人ぐらい呼んで、やりませんか?」みたいな話もしていたんですけれど、残念ながら実現せず…。他にも、ずっとお声がけさせていただいている『ヒプノシスマイク』とか。あと、2020年に改めて面白くなりそうだなと思っている『新サクラ大戦』の「檄!帝国華撃団<新章>」とかもやれたらきっと面白いでしょうし。
――「檄!帝国華撃団<新章>」は、iTunesチャートで総合1位もとっていましたね。
J-POPだとカバーブームとかもありましたけれど、テッパンソングを掘り起こして今一番売れている若手声優さんが歌うというのは、アニソンというジャンルでもあると思うんです。2020年に「ゲキテイ」が生まれ変わるのは、なかなかアツいと思います!
――カバーといえば、『FNS歌謡祭』のようにコラボを連想される方もいると思います。今後はそういったものも取り入れていきたいですか?
はい。今回はあくまでテッパン曲にこだわりましたけれど、もし第2弾ができるならやっぱりコラボもやりたいです。アニサマも毎回OPはコラボで盛り上がりますし、「え、ここ組んじゃうの!?」みたいなことをできるのも、ある意味テレビの良さだと思いますから。コラボは『FNS歌謡祭』を作っている我々が、一番得意とする部分でもあるので、第2弾があればそういう新しいこともどんどん実現させたいですし…やりたいことは、尽きません!
●浜崎 綾1981年生まれ、北海道出身。慶應義塾大学卒業後、04年にフジテレビジョン入社。『堂本兄弟』『僕らの音楽』『FNS歌謡祭』で演出を担当し、08年から『MUSIC FAIR』、14年からスタートした『KinKi Kidsのブンブブーン』を担当。
■著者プロフィール
須永兼次(すながけんじ)
群馬県出身。中学生の頃、ラジオを入り口にアニメソングにハマり、会社員として働く傍らアニソンレビューブログを開設。2013年フリーライターとして独立し、主に声優アーティストやアニソンシンガーへのインタビューやレポート記事を手掛けている。
Twitter:@sunaken(須永兼次)