限定公開( 25 )
『お笑いマンガ道場』が帰ってくる。漫画を使った大喜利というスタイルの面白さを広めた伝説の番組が、8月上旬から全6回予定でネット配信される『復活!令和もお笑いマンガ道場』として復活。レギュラー回答者だった車だん吉や、2代目司会者の柏村武昭に加え、『アオイホノオ』の島本和彦や野性爆弾のくっきー!ら新たな回答者を得て、ネット時代ならの強烈でバズりやすい漫画を送り出してくれそうだ。
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5月、地方紙の愛媛新聞に載った、ひとりの漫画家の訃報は、瞬く間に全国へと広がって、読売新聞や朝日新聞といった全国紙が掲載するまでになった。訃報を知った人たちからは、続々とお悔やみの言葉がSNSなどに上がったが、そこでは別の漫画家との因縁浅からざる関係が、セットで語られることが多かった。
亡くなった漫画家は富永一朗。セットで挙げられた漫画家は2004年に亡くなった鈴木義司。テレビ番組『お笑いマンガ道場』に出演し、憎まれ口をたたき合うような漫画をぶつけ合って番組を盛り上げた両人だ。1976年に放送が始まった『お笑いマンガ道場』は、名古屋の中京テレビが制作したローカル番組だったが、首都圏や関西圏、そして全国で放送されるようになったこともあり、番組名物ともいえる富永と鈴木の掛け合いは、全国の人が知るところとなっていた。
蝶ネクタイ姿の鈴木をエセ紳士のようにとらえた富永が、鈴木を土管に家族で暮らす貧乏人として描けば、鈴木も富永を太って下品な人物に描いてディスり合った。どちらもプロの漫画家だけあって絵は巧くアイディアも多彩。司会者が出すお題に従って、回答者たちが漫画で答えを書いていく大喜利スタイルの番組で、お題に即した漫画でいじり合う姿は、時代的に重なる『笑点』での三遊亭小圓遊と桂歌丸のようだった。伝統の話芸が見せるいじり合いの面白さを、漫画でやってのけたふたりがいたから、漫画が持っている“笑激力”が全国に広まったと言える。
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『復活!令和もお笑いマンガ道場』では、派手な色彩と迫力たっぷりの造形で知られるのくっきー!と、写実的な馬や騎手の絵を描くナイツの土屋伸之が参戦。かつての富永と鈴木のようなバトルを見せるのか、それはレジェンドメンバーの車だん吉と、熱い作風を持った島本に任せ、お笑い界ならではの発想を、得意の漫画に載せて見せるのか。注目したいポイントだ。
『お笑いマンガ道場』にはアイドルグループ「ゴールデン・ハーフ」のエバや、後に女優となって大活躍する川島なお美が出演して、漫画が巧いのはおじさんたちだけではないことを見せてくれた。バラドルの走りでもあった。『復活!令和もお笑い漫画道場』にはタレントの重盛さと美が出演するが、バラエティ番組などで披露している似顔絵はとてもユニークなタッチのものばかりだ。古い『お笑いマンガ道場』ファンなら、ずうとるびの江藤博利が担った、アバンギャルド漫画の枠に誰が収まるかも気になっている。重盛はそこにハマるのか。想像するだけでワクワクしてくる。
手塚治虫の『ブラック・ジャック』や藤子・F・不二雄の『ドラえもん』が連載されていた時代とはいえ、『お笑いマンガ道場』が始まった1976年当時、漫画は今ほどポップカルチャーの最先端を行くものといった捉えられ方はされていなかった。そんな時代に堂々と「マンガ」という言葉をタイトルに使い、漫画の面白さを前面に出した番組が放送されたことで、世間の漫画に対する意識に影響があったかもしれない。
結果、漫画があらゆる場面に登場するようになった時代に、『お笑いマンガ道場』が再登場しても、ノスタルジーの中で消費されかねない心懸念がある。もっとも、TwitterやInstagramやTikTokといった、短い中にインパクトの大きな表現を盛り込むことで、広範囲にバズって注目を集められる時代でもある。
『お笑いマンガ道場』で行われていたフリップに描いたひとコマの漫画で驚かせ、面白がらせて感じ入らせる手法は、番組放送当時にはなかったSNSというプラットフォームを使って、バズる表現を行うためのヒントをもたらしてくれるかもしれない。
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(文=タニグチリウイチ)
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