歴史ある祭りに外国人や県外の観光客も参加 「伝統文化を絶やさない」継続へ工夫重ね

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2024年12月01日 17:10  まいどなニュース

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火の粉を散らして松の木に投げられるたいまつ(8月14日夜、日野町上野田・口之宮神社)

 夜空に火の粉をまきちらし、たいまつが宙を舞う。8月に開催された滋賀県日野町の奇祭「火振り祭」。担い手不足で存続の危機に直面する中、住民有志が「伝承の会」を設立し、地域外の人に参加してもらったり地元企業の力を生かしたりするなどの試みを重ねた。継続が難しくなっている地域の歴史ある祭りを、住民主体で継承する一つのモデルケースとも言えそうだ。

【写真】火振り祭の前に伝承の会メンバーから歴史などの説明を受けるツアー客

 午後7時過ぎ、神事の営まれた五社神社で長さ約3メートルのたいまつの点火が始まった。地元住民に加え、法被姿の観光ツアー客ら約140人が約700メートル離れた口之宮神社へ行列後、クライマックスの火振りが行われた。松の木を目がけ、次々と投げられるたいまつ。松に多く引っかかると豊作になるとされ、枝にのるたび周囲の観衆から拍手が起きた。

 観光ツアーはスーパー平和堂(彦根市)の街歩き旅行企画で、伝承の会に協力する日野観光協会が持ちかけた。「伝統行事体験で学びから伝承へ」と銘打ち、2日間で県内外から計21人が参加。岐阜市の内海春代さん(73)は「たいまつを持って歩くのは疲れたけど、勇壮なお祭りで素晴らしい」。同社地域共創事業部の山本真弓さんは「どの地域も伝統行事の運営は厳しい。今後も一緒に盛り上げていきたい」と話した。

 火振り祭は従来、上野田(こうずけだ)、里口両地区の住民が運営やたいまつ製造を担ってきたが、少子高齢化と新型コロナウイルス禍の影響で参加者に加え、たいまつの数も減少。「近年は昔の半分ほどの火振りとなり、いつまで続けられるかとの危機感が強かった」(事務局)

 岩手県奥州市で千年以上続いた黒石寺の「蘇民祭」が担い手の高齢化を背景に幕を下ろすなど、全国で伝統行事が岐路に立つ。火振り祭伝承の会は昨年夏以降、上野田の住民有志が中心となり、同協会や町文化懇談会に呼びかけて発足。6月の初集会で歴史や意義を地元住民に知ってもらう専門家の講演会を開き、7月のたいまつ製作講習会では約40人が古老から作り方を学んだ。地区外から参加した井上清さん(65)は「人手不足と聞き、お手伝いに来た。日野の奇祭が未来に伝わってほしい」と願った。

 人口減少社会の中で祭りを維持するため、ボランティアや外国の人ら域外の人に手伝ってもらう動きは各地で見られる。火振り祭でもオーストラリア人男性(44)が「森の多い母国で考えられない行事」と異文化に敬意を示しながら参加した。

 伝承の会事務局長の呉竹駒次さん(70)は「今年は昨年の倍以上のたいまつ200本以上用意できた。ただ、活動内容や資金面など課題もある。一過性にならないようにしたい」。来年以降の継続を見据えた模索を続ける。

 日野町が本年度策定する「文化財保存活用地域計画」では日野祭とともに、無形民俗文化財に指定されていない火振り祭など地域の宝をどう生かすかも焦点だ。町教育委員会生涯学習課参事の岡井健司・近江日野商人ふるさと館長は「旧市街地の空洞化が進む中、他地域の人に町の伝統行事に関心を深めてもらう施策が大切。関係交流人口が増えれば持続可能なまちづくりにもつながる」と語る。

 人と人をつなぎ、人や愛郷心を育む祭り。活用次第で、にぎわい創出や観光資源になる。その継承は一筋縄ではいかないが、「伝統文化を絶やさない」と熱意をもった住民主体の動きこそ鍵を握る。こうした地域の人材・組織の確保や自走できる仕組み、活動を支える体制づくりが求められる。

(まいどなニュース/京都新聞)

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