昔は当たり前のように使われていたのに、現在ではあまり馴染みがなくなってしまった表現にまつわる投稿が、先日X(旧Twitter)で話題になりました。
「タバコを“のむ”」
現在では、タバコを“吸う”という表現が一般的で、タバコを“のむ”という表現を知らなかった人もいるかもしれません。しかし、この表現も確かに存在しているといいます。
この件について、大阪大学大学院・生命機能研究科教授の平岡泰さん(@HiraokaYasushi)が言及。8万のいいねが付く反響を呼びました。
|
|
現在はあまり使われなくなった?“喫む”という表現
平岡さんはX上でこのように発言しています。
「『たばこ喫む』ですね。喫む(のむ)、もう聞かなくなりましたが、明治生まれの人は言ってました」
“喫(キツ)”には「のむ、たべる、すう」といった意味合いがあります。「喫茶」や「満喫」という言葉はおなじみでしょう。また、タバコに関しても「喫煙」という表現はよく用いられています。
そして、この“喫”を音読みから訓読みにすると、“喫(の)む”になります。つまり、「喫煙」は「タバコを喫む」という表現にもなるということですね。
世代や地域によっても使う使わないがある?
平岡さんの指摘に、Xのリプ欄にも多くの反応がありました。
|
|
「昭和50年代くらいまでは普通に言ってました」
「じーさまばーさま世代なら伝わるフレーズじゃないかな」
「現代でも本を読んだり落語などを聞いたりしていれば知れる表現ですね」
「昔の漫画とかだと出てきますね」
他にも、
「80越えの祖母は未だに『のむ』と言いますね」
「70代の親は今も使います」
「今の60代くらいはまだ使ったりするよ」
といった、世代による使われ方を指摘する方。
「浅草出身ですが、年配の方は使いますね」
「青森県ならまだ"タバコのみ"とか言われますね」
「ワイの地域だと未だにタバコを喫むって言うで」
|
|
など、地域によってはまだ使われているという方。さらには、
「茶をしばく」、「弁当をつかう」、「蕎麦をたぐる」のように、その他の言い回しについて紹介される方。
実にさまざまな方向からのコメントが寄せられ、リプ欄は盛り上がりをみせています。
「今でも使う」「聞いたことがない」人によってさまざま
リプ欄の反響を受け、平岡さんはさらにアンケートを実施。「タバコを喫む」という表現について、「今でも言う・聞く」か「聞いたことはあるが、今は使わない」か「聞いたことがない」かについて、Xユーザーに向けて質問したところ、こちらにも多くの方からの反響が。
「聞いたことがあるが今は使わない」という方が約60%といちばん多かったものの、「いまでも言う・聞く」「聞いたことがない」の回答者もそれぞれ20%ほどあり、回答が分かれる結果となりました。
平岡さんにお話を聞きました。
――平岡さん自身は、「たばこを喫む」という表現を聞いたことが?
平岡さん:明治生まれの祖父が言っていたのですが、彼が亡くなって以後は、私自身は耳にはしていないので、1990年ごろまでかと思います。私自身は煙草を吸わないので、使う機会は少ないですが、「喫む」ではなく「吸う」と言っていました。
――リプ欄でも多くの反応がありました。
平岡さん:現在でも使うという人が結構いたのが印象的でした。正確に分析はしていませんが、東北地方と北海道が多かったように思います。
――「弁当をつかう」、「茶をしばく」といった言い回しを紹介された方もいましたね。
平岡さん:「弁当をつかう」は使ったことはありません。「茶をしばく」は、高校生の頃、おもしろ半分に仲間うちで使ってましたが、それ以外では使っていなかったです。
――平岡さん自身は喫煙についてどう思いますか?
平岡さん:タバコが遺伝子の変異を起こす仕組みは明確で、発がん性が高いので、無くすべきものと考えます。うちの大学は構内全面禁煙で、喫煙ブースが所定の場所にあります。これが公共施設の標準ではないかと思います。
◇ ◇
「喫煙(タバコを喫む)」について、言葉の文化という点で興味深いお話をされながらも、生命科学の専門家の観点から、それ自体には厳しめの見解も示された平岡さん。
喫煙をされる方は、自己責任という自覚をもちつつ、周囲への配慮を忘れずに、分煙等のルールやマナーを守ることが大切ですね。
平岡さんは、現在大阪大学の“細胞核ダイナミクス研究室”にて、染色体と細胞核の構造と機能を研究されています。
「染色体がどのように細胞核内に収納され、細胞機能を調節して個体の生命を維持し、次世代に遺伝情報を継承していくかを理解することが目標です」(平岡さん)
(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・竹中 友一(RinToris))