「こんな痛いと思わなかった」…のどだけじゃなく、『餅が詰まって腸閉塞』にもご注意を

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2025年01月01日 07:03  TBS NEWS DIG

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お雑煮や焼き餅など、年末年始になると餅を食べる人は増えるだろう。そのため、「餅による窒息事故に注意」という呼びかけや、「のどに詰まって救急搬送された」といったニュースを目にすることも多い。

【写真を見る】CT画像には詰まった餅がはっきりと…

しかし、餅はのどに詰まるだけではないようだ。実際に、のど以外に詰まらせた人がつらかった状況を教えてくれた。

餅を食べて腸閉塞に?「『ちっちゃな四角いものが詰まっているみたい』って」

普段から餅を食べている“餅好き”のAさん(70代)。ある日、鍋の中に焼き餅を入れて食べたところ、便秘の症状が表れ、翌日には腹痛に襲われた。痛みを我慢できず救急外来に行くと、レントゲンを撮ることに。すると、医師にこう告げられた。

「腸にちっちゃな四角いものが詰まっているみたい」

「ちっちゃな四角いもの」とは餅のこと。鍋に入れていた消化の悪いえのきたけと餅が引っ掛かり、コンクリートのように固まって腸で詰まってしまったのだという。

Aさんは「腸閉塞」と診断され、「即入院」に。治療のため、10日間の絶食と点滴を受けるはめになった。

Aさん
「腸閉塞ってこんなに痛いものだと思わなかったから、びっくりしました。下痢の時のような痛みでもなくて…。退院しても胸から腸にかけて詰まった感じがして、本当につらかったです」

餅は窒息しやすいだけでなく、腸にも詰まってしまう…。

ならば食べない方がいいのでは…?とよぎる一方で、筆者のように正月に食べるお雑煮を楽しみにしている人も多いはず。

では、何に気を付けながら食べたらいいのか、内科医に聞いてみた。

CT画像にも白い塊がはっきりと…粘着性のある餅は腸にもくっつきやすい

答えてくれたのは、北品川藤クリニックの石原藤樹院長。石原院長のもとにも年末年始になると腹痛を訴え、餅による腸閉塞だと疑わしい患者が訪れるという。

そもそも、なぜ餅で腸閉塞が起こるのだろうか。

石原院長によると、餅は体内に入ると消化酵素との関係で硬くなりやすく、塊のまま腸まで流れていきやすいという。しかも粘り気があるため、腸の一部にくっついて一時的に腸が詰まった状態となってしまうのだ。

また、石原院長は「餅には悪い条件が重なっている」と話す。

北品川藤クリニック 石原藤樹院長
「お餅ってちょっと大きいままでも食べてしまいやすく、割と丸飲みしやすいんですよね。高齢者にとっては嚙み切りにくくて、少し硬めの餅だと歯ごたえもあるし、歯や顎の力が必要になってくる。伝統食だから高齢者の方が好みやすいし、悪い条件がそろっているかな」

餅による腸閉塞は窒息事故ほどの発生件数はないが、毎年数人はいるようで学術論文での言及もいくつかある。香川大学・今滝修さんの論文「Rice cake ileus」には、実際に餅が腸に詰まっているCT画像も掲載されている。

CT画像には、白い4cm程度の細長い形状のものが写っている。これが体内で硬くなった餅で、腸の流れが悪くなって「餅による腸閉塞」になるのだという。

ここまではっきりと画像で餅が詰まっているのがわかるとは、驚きである。

新年早々、腹痛で苦しみたくはない。石原院長によれば、特に注意が必要な人がいるという。

高齢者はもちろん、手術歴のある人は注意 腸閉塞は命にかかわることも

北品川藤クリニック 石原院長
「ご高齢の方、お腹の手術をした方はより注意が必要ですね」

窒息事故と同様、餅を食べる人は高齢者が多いこともあり、石原院長のクリニックでも腸閉塞になりやすいのは50代以上が多いという。また、高齢者に限らず、お腹の手術をしている人も起こりやすいと話す。

石原院長
「例えば腸を手術で切って繋いだら、その部分は無理に繋いでいるから運動機能が落ちてしまい、動きが悪いから詰まりやすくなる。だからリスクがありますね」

ただ、基本的に餅による腸閉塞は、固まった餅が腸に引っ掛かったことによって起こるため、比較的軽症で、ほとんどの人は数日間入院し、絶食と点滴による治療を行う。そうするとだんだん固まった餅が腸を流れ、肛門から出ることで落ち着くことが論文「Rice cake ileus」でも記されている。

自分は若いし、手術もしていないから大丈夫…と思ったが、どんな人でも腸閉塞になる可能性はゼロではない。

石原院長
「腸閉塞は一時的に詰まるものですが、本当に詰まってしまうと腸に栄養が届かず、壊死することもあり、馬鹿にできるものではないと思います。命にかかわることもあるので、軽いから大丈夫とは言えません」

では、対策法はあるのだろうか。石原院長によれば、やはり窒息の対策と同様に、小さく切って食べた方がいいという。

石原院長
「餅は切りにくいものですけど、過信せず小さく切ってゆっくり食べましょう。その方が安心ですよ」

腸に餅が詰まったことがあるというAさんも、高齢で手術歴があったというため、腸閉塞になりやすい条件がそろっていた。普段から窒息には気をつけていたが、餅で思いがけず腸閉塞になり、つらい思いをしたが、やはり餅は好きなので、最近はよく噛んで、恐々と食べているという。

Aさん
「お餅はおいしくて、みんな食べるでしょうけど、詰まらせないようにしないと。のどだけじゃなくてね。お餅を甘く見ないように」

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<取材協力>
北品川藤クリニック 院長 石原藤樹
医学博士。大学卒業後、信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科で研修の後、1998年より「六号通り診療所」所長。2015年、「北品川藤クリニック」を開設。診療の傍ら「北品川藤クリニック院長のブログ」でほぼ毎日情報を発信。著書に『健康で100歳を迎えるには医療常識を信じるな!』(KADOKAWA)、『実年齢56歳、血管・骨年齢30代の名医が実践!コーヒーを飲む人はなぜ健康なのか?』(PHP研究所)などがある。

このニュースに関するつぶやき

  • きちんと咀嚼する習慣を身に付けなくては(;^ω^)自分もヤバいなぁ。
    • イイネ!9
    • コメント 2件

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