限定公開( 6 )
「いちばん近いハワイ」をコンセプトに掲げるハワイアン カフェ・レストラン「コナズ珈琲」の快進撃が続いている。
トリドールホールディングスから分社化したKONA’S(東京都渋谷区)が同事業を運営しており、2013年12月に1号店の「コナズ珈琲 ふじみ野店」(埼玉県ふじみ野市)がオープン。その後も順調に店舗数を増やし、全国に45店舗を展開する(2025年2月下旬時点)。
2025年3月期 第2四半期の決算では、売り上げが前期比で12億2600万円増、事業利益も2億5800万円増となり、増収増益となった。
どの店舗も行列ができる人気ぶりで、時に3時間待ちになることも。一番の特徴は“圧倒的なハワイ空間”で、外観や内装にこだわりがうかがえる。パンケーキやロコモコなど定番のハワイメニューも多く取りそろえる。
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メイン顧客は30代以上の女性だが、最近では女子高生など10〜20代も増えているという。2024年10月にオープンした板橋店を訪れ、KONA’Sの社長 阿部和剛氏に「業績好調の理由」を聞いた。
●大行列でも「時間制限なし」を貫く
コナズ珈琲は、ハワイにある地元のサーファーが集まるような古民家風のカフェを再現することにこだわっている。「敷地に入った瞬間からハワイを感じてほしい」との思いから、ヤシの木などを取り入れた南国らしい庭をつくったり、カラフルなアートを外壁に施したりしている。
あえて都心ではなく郊外を狙い、90坪以上の店舗面積や約50台分の駐車場を用意できる場所に出店。ハワイにいるようなリラックスした気分を味わえるよう、体験を設計している。
内装にも、ハワイを想起させるカラフルな家具にハワイアンキルトなどの雑貨、サーフボードなどを使用。座席は他の客と目が合いづらいように配置している。BGMは一般的なカフェやレストランに比べると大きめに設定されており、これもハワイらしさの演出に一役買っている。
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「BGMを大きめにすることで、お客さまの声のボリュームが自然と上がりますよね。それが店舗全体の活気を生み出し、ハワイらしい陽気な空間を演出します。スタッフには、店内の活気を上回るボリュームの声で元気にあいさつしてほしいと伝えています」
さらに、オープン当初からコナズ珈琲が大事にしているのが、「時間制限」を設けないこと。ハワイ空間を満喫してもらうため、たとえ大行列が起きていても店内の客に退店を促さない。平均滞在時間は約2時間だという。
「裏側の業務効率化は推進していますが、回転率の向上は求めません。週末やランチタイム、ディナータイムなどを中心に待ち時間が発生するのは申し訳なく思いますが、時間制限を設けると私たちが提供したいサービスではなくなってしまうので。ただし、待てないという方には次回お越しいただけるようなお声がけなど、しっかりとケアをするよう意識しています」
●板橋店は初めて“マラサダ専門店”を併設
行列ができる繁盛店だが、単に出店数を伸ばすのではなく、目的来店を促すための店舗展開を大事にしている。2024年10月には、東京23区で2店舗目、全国で45店舗目となる「コナズ珈琲 板橋店」がオープンした。
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「都内の1店舗目は足立店で、2018年にオープンしたのですが、いまだに多くの待ち時間が発生しています。そのため近場にもう1店舗を出店したい気持ちがあり、たまたま100坪の店舗面積を設けられるこの場所が見つかり、出店を決めました」
板橋店は以前にサイゼリヤがあった場所で、居抜き物件となる。最寄りの志村坂上駅から徒歩7分と全店舗のなかで最も駅から近い。さらに、全国で初めてマラサダのテークアウト専門店「PALM WAGON(パームワゴン)」を併設している。
パームワゴンはKONA’Sが展開する新ブランドで、2024年8月に1号店を沖縄県のアメリカンビレッジに出店。同時に、アサイー専門店「Berry Brown Bowls(ベリーブラウンボウルズ)」も同じエリアに出店した。マラサダもアサイーボウルもすでにコナズ珈琲で販売しているが、専門店としてブランド化したわけだ。
マラサダとは、ハワイで人気のドーナツで小麦粉やイースト菌などを混ぜた生地を発酵させて油で揚げるのが一般的だ。日本のドーナツにはイースト菌を発酵させて膨らませる「イーストドーナツ」とベーキングパウダーで膨らませる「ケーキドーナツ」があり、マラサダの製法は前者にあたる。
「マラサダはパンに近い製法で、一次発酵の後に成形して二次発酵させるため、ケーキドーナツと比較して手間がかかります。パームワゴンはハワイで大人気の『Leonard’s BAKERY(レナーズベーカリー)』をベンチマークにしつつ、同店のマラサダよりも口どけをふわっと軽くして差別化しています」
日本人には重くしっかりした食感より、やわらかくモチモチした食感が好まれやすいため、生地に水分をできるだけ多く含ませ、低温発酵させることで軽い口どけを実現したという。店舗は目の前で揚げる様子が見える設計としており、エンタメ的な要素も付加した。
「パームワゴンは非常に好調です。特に2024年10月のオープン当初は計画値の約2倍の売れ行きで、私も店内でドーナツをひたすら揚げていました。コナズ珈琲に滞在されるのは女性の方が多いのですが、パームワゴンは男性のお客さまも多いですね」
●アサイーボウル人気で、10代女性が増加
マラサダと同じく、専門店として展開している「アサイーボウル」(1490円)も、コナズ珈琲の人気に拍車をかけている。コナズ珈琲では、2013年の1号店オープン当時からアサイーボウルを販売しているが、2024年の夏頃からSNSの影響で人気が急激に広がったそうだ。
アサイーボウルはアサイーのスムージーの上にグラノーラやバナナ、イチゴなどのフルーツをトッピングしたブラジル発祥のデザートで、2013〜14年頃に最初のブームが訪れ、2024年に第2次ブームが到来している。
「2024年7月頃から、『コナズ珈琲のアサイーボウルがおいしい』といった投稿が広がり始め、10〜20代の女性のお客さまが急増しました。店内で飲食する以外にテークアウトする方も多く、ウーバーイーツなどのフードデリバリーサービスでは、アサイーボウルが最も売れ行きがいいですね」
アサイーボウルをきっかけに来店した若年女性層は、リピート率が非常に高いという。
「平日の午後3時過ぎに制服姿のまま複数人で訪れる方が多く、内装も含めて写真をたくさん撮影してSNSにアップしているようです。あとは、ご家族と一緒に来店するケースも見られます。これまで20代の女性層は獲得できていましたが、アサイーボウルをきっかけに10代の女性が急増し、若年層のSNSの影響はすごいと実感しました」
アサイーボウルの人気を受け、板橋店オープンのタイミングで、「フルーツボウル」の名称で全4種類にバージョンアップした。「アサイーボウル」「マンゴーボウル」(1598円)、「ピタヤボウル」(1382円)、「パインココナッツボウル」(1382円)を販売し、春夏を中心に全店で展開していくという。
●出店加速にあたり「人材育成」が課題
次々と新たな一手を投じ、マラサダやアサイーボウルなどヒット商品も生み出しているコナズ珈琲。週末やランチ、ディナータイムには、どの店舗でも待ち時間が発生しており、席数が少なめの店舗では特に長くなりやすい。出店を加速させていく考えだが、「人材育成」が課題だという。
「規模の大きな飲食店を前進させていくには、誰よりもお客さまを喜ばせたい気持ちを持つ人材が欠かせません。現在、急ピッチで採用を進めていますが、出店計画に応じた人員を採用・育成していくことは一番の課題です」
接客に定評があるコナズ珈琲では、新店舗を出店する際にアルバイトを募集すると、最近では400人以上の応募があるという。客として来店したことがある人が、感じのいい接客の様子を見て「働きたい」と考えるためだ。そのためアルバイトの人材確保はしやすい状況だが、店長や社員となると採用が難しくなる。
「顧客満足度を担保するために、笑顔や元気の良さだけでなく、お客さまへの思いやりを持てる方を求めています。それは教育してすぐに身に付くものではなく、その方が積み重ねてきたものが生かされるところなのかなと。人手不足のご時世ですが、採用は妥協しない方針です」
コナズ珈琲は全国的な拡大を予定しており、来期の出店計画もある程度、固まっているとのこと。板橋店が好調であることから、パームワゴンを併設して出店する可能性もあるという。パームワゴンやアサイーボウル専門店の単体での出展拡大も見据えている。
(小林香織)
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