大谷翔平効果で「お〜いお茶」販売数量9%増 伊藤園副社長に聞く海外戦略

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2025年03月09日 13:20  ITmedia ビジネスオンライン

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伊藤園の本庄周介副社長

 1989年の登場以来、緑茶飲料市場のトップシェアを走り続けている伊藤園の「お〜いお茶」。2024年の統計を見ても、伊藤園の市場シェアは36%で、2位の22%に14ポイントの差をつけている。


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 お〜いお茶は1月、メジャーリーグベースボール(MLB)とロサンゼルス・ドジャースとのパートナーシップ契約を締結した。既に2024年4月からお〜いお茶グローバルアンバサダーを務める大谷翔平選手を軸としたもので、同社が進める海外展開を加速させる狙いがある。


 伊藤園の本庄周介副社長も、「大谷選手は、日本にいた時からのお〜いお茶の愛飲者。まさに相思相愛の関係であり、理想のアンバサダー。今回の契約を通じ、お〜いお茶を世界中に広め、健康的な食生活へ貢献していく」と期待する。


 実際に2024年7月には数量限定で大谷翔平選手の顔写真入りのお〜いお茶ボトルを発売。「7〜8月は販売数量で対前年比9.2%アップ、大谷選手の生まれ故郷である東北ではさらに売れた」(本庄副社長)という。「緑茶飲料といえば何を想起するか」というマインドシェアの調査でも、発売前の3月に比べて10ポイント程度高まった。


 パートナーシップ契約により、2025年シーズンからお〜いお茶は、MLBの公式グリーンティとして打ち出す。海外展開の狙いとトップシェアであり続けられる理由を、本庄副社長に聞いた。


●日本茶の「青臭み」が課題 「大谷翔平で全てが解決するわけではい」 


――お〜いお茶の海外展開の経緯について教えてください。


 当社の海外展開は、2001年に米ニューヨークに現地法人を設立してから本格的にスタートしました。そこから約四半世紀がたち、現在は国際本部を中心に海外事業の課題や今後の展開について検討を重ねています。中長期の計画にこれらの課題を織り込み、克服しながら愚直に進めていくしかないと考えています。


 例えば、大谷翔平選手との取り組みもありますが、それだけで全てが解決するわけではありません。彼とともに歩む部分もありますが、一つ一つ着実に進めることが重要だと考えています。


――海外展開にあたっては、日本茶特有の「青臭み」が課題になると聞きました。どのような対策をしているのでしょうか。


 確かに英語で「グラッシ」(grassy)と表現される、日本茶の青臭みは課題です。日本人は幼少期から慣れ親しんでいるため受け入れやすいですが、海外では違います。そのため、海外では青臭みを抑える商品開発を進めています。例えば、米国市場では「お〜いお茶」ブランドとは別に、この青臭みを抑えた別ブランドを展開しています。このブランドは青臭さを抑えた設計にしていて、ほうじ茶なども取り入れています。こうした工夫により、米国人にも受け入れられる商品を提供しています。


――国内市場は人口減社会を迎え、縮小する一方です。海外市場の手応えはいかがですか。


 世界市場を相手にする上で、いきなり成功するとは思っていません。一つ一つ足元を固めながら「ゆっくり急ぐ」という姿勢で取り組んでいます。この慎重かつスピーディーなアプローチが重要だと考えています。


●海外企業でも進む緑茶の採用


――2024年12月には、FDA(アメリカ食品医薬品局)によって、緑茶に対して「ヘルシー」という表記の認証を受けました。この健康効果の認定は追い風になりますか。


 大きな追い風になると考えています。われわれもそのニュースを聞いた瞬間、「すごいことだ」と感じました。この認定は海外市場での信頼性向上につながるため、非常に意義深いものです。


――GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)のカフェテリアでも、お〜いお茶の採用が進んでいると聞きます。


 これは若手営業担当者の飛び込み営業がきっかけでした。和食店などを経由して紹介され、その後オフィスのカフェテリアで試飲会を開くなどして広まりました。このような草の根的な活動が功を奏し、GAFAのカフェテリアでもお〜いお茶が採用されるようになりました。


――大谷選手を通じてどんな展開に期待しますか。


 まず野球好きには間違いなく訴求できると考えています。また、大谷選手自身の存在感は、今や野球という枠を超えてきています。野球ファンに限らず、さまざまな方面に対するアンバサダーになれるのではないかと、その影響力に非常に期待しています。


――本庄副社長はCDO(チーフ・デジタル・オフィサー)も務められ、伊藤園のデジタル化を推進されています。ITやAIなどのテクノロジーを、伊藤園の経営にどのように活用していますか。


 AIやデジタル技術のインパクトは非常に大きいと感じています。当社はDX推進委員会を設置し、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入によって業務効率化を進めてきました。米Microsoftとの関係も深く、「Azure」や「Microsoft 365」を活用しています。これらの技術は業務時間短縮など目に見える成果を上げており、今後も積極的に活用していきます。


●35年トップシェアの要因


――お〜いお茶の海外展開の歴史で、最初のブレークスルーとなった出来事は何ですか。


 米国では2004年に大手スーパーのホールフーズ・マーケットでお〜いお茶の扱いが始まったことが大きな転機でした。その後、コストコなど他の大手量販店でも展開し、特に米国における大きな市場拡大につながりました。


――国内市場で競合他社との差別化についてどうお考えですか。


 お〜いお茶がトップシェアを維持できている理由として、品質と味へのこだわり、畑から取り組む生産体制、そしてブランドイメージがあります。この3つが相互に作用し合い、ロイヤルカスタマーを獲得できていることが要因だと分析しています。


――35年以上にわたる展開で、最初のユーザーは今や高齢者になっている人も少なくありません。新しい世代にも受け入れられ続けている要因は何なのでしょうか。


 例えばマクドナルドなどと同様に、子どもの時から慣れ親しんでいる製品というのが大きいと思います。10代後半や20歳前後になって1回ブランドを離れるユーザーもいます。しかし、その一度離れた人たちをどう再び捕まえるかを大切にしています。


 今のZ世代向けのマーケティングも怠っていません。例えば、Z世代など新しい世代への訴求として、若者と一緒に開発した、まろやかなあまみが特徴のお〜いお茶シリーズなどの商品を展開しています。


――副社長として経営で大切にしている考え方をお聞かせください。


 私が大切にしているのは武田信玄の「風林火山」の精神です。「疾きこと風の如(ごと)く、徐かなること林の如く」といった言葉の通り、市場環境や競争状況に応じて柔軟かつ迅速に対応することが重要だと考えています。


――1989年の登場以来、お〜いお茶はトップシェアをずっと維持し続けてきています。他分野だと、先行者であってもトップから陥落してしまうことは珍しくありません。何を重視しているのでしょうか。


 お〜いお茶は登場してしばらくは大きな競合製品がありませんでしたので、最初はシェア100%と言えます。そう考えると、今は36%まで落ちてきている、という見方もできますね。


 お〜いお茶ブランドは、お茶本来のおいしさをお客さまのライフスタイルに合わせて変化させ続けてきたことがブランド価値となっています。日本を代表するお茶として、営業力やマーケティング力、原料調達力、製造技術力などを結集して真摯に挑戦し続けること、そしてこれらをバランスよく推進することが肝要ですね。今後は、グローバルスタンダードなブランドを目標に、戦略を講じていきます。


(河嶌太郎、アイティメディア今野大一)



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  • スタバでは、ティーバッグですけれどもほうじ茶を飲むことができます。
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