知床事故訴訟に臨む遺族の思い

　北海道・知床半島沖で乗員乗客全26人が犠牲となった観光船「KAZU　Ⅰ（カズワン）」の沈没事故で、乗客家族らが運航会社「知床遊覧船」と桂田精一社長（61）に計約15億円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が13日、札幌地裁で開かれる。

　カズワンに乗船していた家族を亡くした原告たちには「自分たちの命を懸けてでも世の中に知ってほしい」と願うことがある。書面につづられた、そんな遺族らの思いを紹介する。

　書面は昨年7月の提訴時、報道陣からの質問に答える形で、原告29人中14人が寄せた。

　訴訟の参加理由で最も多かったのは「責任の所在と事実の明確化」だ。事故で娘（当時42歳）を失った男性は「ずさんな経営の結果、甚大な被害を被らせたことを明らかにしたい」。50代の母親は「息子の死はあまりに悲惨で、許せない事実ばかりであることを、命を懸けてでも知ってほしい」と記した。

　事故当日の出航判断にかかわった桂田被告に対しては、強い遺族感情が示された。「心ない謝罪で私たち家族の気持ちを逆なでするのであれば、謝罪はいらない」。また、「（船長や国に）責任転嫁してほしくない」という意見も相次いだ。

　「毎日が苦しい」「会いたい。声が聞きたい。触れたい」。大切な人を失った切実な思いも、書面にはつづられた。訴訟を通し、「被告に責任を認め、真摯（しんし）に謝罪し、償ってほしい」。この思いは、原告全員に共通している。【伊藤遥】

息子の死あまりに…　知床観光船事故、訴訟に臨む遺族がつづった思い