インタビューに答える視覚障害者の宇佐亮さん=3日、東京都渋谷区 昨年4月施行の改正障害者差別解消法では「合理的配慮」の提供が義務化された一方、設備充実を図る「環境整備」は努力義務にとどまる。デジタル化の進展に伴い店舗などでセルフレジの導入が広がるが、タッチパネルの操作が難しい視覚障害者が苦慮する場面も多い。当事者団体は「障害者の意見を踏まえた環境整備も進めて」と訴える。
緑内障による弱視者でモデルの宇佐亮さん(23)=横浜市=は最近、行きつけのドーナツ店にセルフレジが導入され、タッチパネルの画面がよく見えずにうろたえた経験を持つ。店内は大勢の客でにぎわい、店員も忙しそうだったため、1人で端末を操作しようとしたが、点字もなくやり方が分からない。たまたま店員を呼ぶパネルに触れたため、対応してもらえたという。
「セルフレジでも読み上げ機能があったり、お金を入れる場所が統一されていたりすれば」と悔しい表情で振り返る宇佐さん。手持ちの白杖(はくじょう)に気付いて助けてくれる人も多いが、コンビニなどでもセルフレジが広がり、「気軽に使えるはずの場所で不便さを感じている」と不満を募らせる。
日本視覚障害者団体連合(東京都新宿区)が2022年に実施したアンケートでは、行政や事業者のデジタル化に68.4%が「困っている」と回答した。セルフレジ以外にも、インターネットバンキングなどでの画像認証や、一度きりのワンタイムパスワードを使ったログイン操作を挙げる回答も目立った。
同連合情報部長で自らも視覚障害を持つ吉泉豊晴さん(67)は「デジタル化が進む中でわれわれは取り残されている」と指摘。無人店舗の増加も懸念の対象といい、「店員がいなければ合理的配慮も受けられない。事業者も大変だとは思うが、視覚障害者でも設備を使えるように環境整備も進めてほしい」と話した。