業界1位「丸亀製麺」と2位「はなまるうどん」の序列が決まったワケ。「資さんうどん」はうどん業界の序列に変化をもたらすか

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2025年05月03日 09:20  日刊SPA!

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丸亀製麺
 うどんチェーンで全国的な知名度を獲得しているのは、業界1位の「丸亀製麺」と、2位の「はなまるうどん」でしょう。両者とも2000年に創業して以降、地位を脅かす新興勢力は現れませんでした。
 しかし、雲行きが変わるかもしれません。外食大手のすかいらーくHDが24年に北九州地盤の「資さんうどん」を買収したからです。すかいらーくは、既に同チェーンの関東4店舗目をオープンしており、全国展開を狙っています。丸亀・はまなる・資さんの店舗数はそれぞれ約860・420・80店舗。資さんの店舗数はまだまだ少ないとはいえ、勢いのままに業界は三つ巴時代に突入しようとしています。

◆丸亀製麺とはなまるうどんを比較してみた

 まずは丸亀製麺とはなまるうどんの「うどんメニュー」を比較してみましょう。両者とも「かけ」や「ぶっかけ」、「ざる」などを提供しており、大きな違いはみられません。また、温かいものと冷たいものを選べる点も共通しています。価格を比較すると、「かけうどん」の場合、丸亀製麺の並が税抜420円であるのに対し、はなまるうどんは税抜520円と少し高めです。

 トッピングの天ぷらに関しては分があるのは丸亀製麺。丸亀は8種類あるのに対し、はなまるにはカボチャやレンコンなどは無く、5種類と少なめです。ただし、コロッケや唐揚げを提供しており、追加トッピングの種類は両者とも同程度でしょう。ご飯ものは、丸亀は主におむすびしかありませんが、はなまるではカレーやミニ豚丼・牛丼などを提供しています。

 肝心の味については、讃岐うどんの再現性ではなまるを評価する意見が聞かれます。しかし、そもそも本場の味を当てられるほど、讃岐うどんを食べた事のある消費者は多くありません。両者ともチェーンとしては標準的な味ではないでしょうか。店舗数は丸亀がトップですが、後述する通り、“ブランド力”で差が生まれ、丸亀が勝者になったと考えられます。

◆「資さんうどん」はうどん屋よりも和食屋?

 関東では新興勢力として存在感を示している「資さんうどん」ですが、その歴史は古く、1976年に北九州市で1号店をオープンしました。工場の多い立地柄、労働者に合わせ、ボリューミーな料理を増やしました。商号に「うどん」と付いていますが、蕎麦やカツ丼、スイーツも提供するなど、和食屋のような存在です。

 店舗によってメニューが異なるものの基本的な構成は同じです。北九州市内の店舗を参考にすると、うどんの「かけ」は税込390円。肉とごぼ天が入った人気メニュー「肉ごぼ天(3本入り)」は760円です。

 トッピングの種類は丸亀、はなまるよりも多く、各種天ぷらのほか、肉や生たまご、納豆やカレールーといった商品を選べます。「おでん」も資さんうどんの特徴の一つで、コンビニのように定番のおでんを数種類置いています。

 ご飯物も多く、カツとじ丼や親子丼、牛とじ丼など、まるで丼ものチェーンばりの品揃え。甘味の「ぼた餅」も看板メニューの一つとなっています。このように資さんのメニュー構成は丸亀・はなまるよりも、富士そばに近く、牛丼御三家やかつ丼チェーンもライバルになりそうです。

◆丸亀がはなまるに勝ったワケ

 うどん業界でなぜ丸亀がトップとなったのでしょうか。200店舗を突破したのは、はなまるが2007年であり、丸亀は2009年と出遅れました。しかし、丸亀は2009年中に300店舗を達成し、以降トップの座を維持し続けています。丸亀が勝った背景には、ブランド力の違いが関係しているのではないでしょうか。

「丸亀」という商号自体が本場感を印象付けるほか、国産小麦の使用をアピールすることで、品質の良さを訴求しました。本場の讃岐うどんとは違うと、丸亀を批判する人もいますが、一般的な消費者が味を利き分けるのは難しく、極端にまずくなければ店の雰囲気やイメージに評価が左右されがちです。

 値段の違いもブランド力に影響しました。はなまるは当初、かけうどんの小を税抜100円で提供していました。しかし、集客のための安売り戦略がブランドイメージを毀損させ、相対的に丸亀の良さをひき立ててしまいました。後にはなまるは値上げをしましたが、消費者の間では「安い」というイメージが定着していたため、値上げにより成長が鈍化しました。一方で丸亀は当初から極端な安売りをせず、ブランド力を維持し、ロードサイドで勢力を拡大しました。

◆ガストが「資さんうどん」に切り替わっていく

 このような丸亀一強の状況下で、すかいらーくは「資さんうどん」を全国展開しようとしています。関東ではロードサイドの千葉・八千代店に続き、都市部の両国店を出店しました。ロードサイドと都市部の両方を模索する動きがみられます。ただし3、4号店目はロードサイド店なので、都市部ではなく道沿いとの相性が良いようです。もともと資さんは、九州において市街地のロードサイドを中心に出店していました。

 そしてすかいらーくHDは新規出店の他、従来の「ガスト」を「資さんうどん」に業態転換する計画です。人口減少が進む地方でガストは苦戦しています。また、コロナ禍以降で外食業界は好調ですが、業績が伸びているのはラーメンや回転寿司、丼ものといった専門店業態。和・洋・中何でも選べるファミレスは、もはや消費者にとって魅力は薄く、すかいらーくは転換先を求めていました。

 資さんは客単価が800円台とガストより低いため、集客に期待がかかります。全国にあるガストは約1200店舗。近い将来、資さんが丸亀を超える日が来るかもしれません。

<TEXT/山口伸>

【山口伸】
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 Twitter:@shin_yamaguchi_

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  • 埼玉の山田うどんが黙っちゃいないだろ
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