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埼玉県蕨市の蕨郵便局で2023年10月に起きた人質立てこもり事件で、殺人未遂などの罪に問われた住所不定、無職、鈴木常雄被告(88)の裁判員裁判の被告人質問が28日、さいたま地裁(佐伯恒治裁判長)であった。鈴木被告は動機について「事件前日に病院と郵便局とのこと(トラブル)を思い出し、嫌がらせをしようと思った」と述べた。
被告は自身の生い立ちについて、4人兄弟の次男として生まれ、「あまり親に構ってもらえない人生」と振り返った。小中学校ではほとんど人と関わりを持たず、高校は人間関係のトラブルで約3カ月で退学。建設業界で約5年間働いた後、友人に誘われて暴力団に入った。事件で使った旧ソ連の軍用拳銃「トカレフ」は、暴力団に所属している時に入手したものだった。
事件前日の23年10月30日。過去に起きた蕨郵便局のバイクとの接触事故や、戸田中央総合病院(戸田市)の受付対応を巡るトラブルを思い出し、「嫌がらせをしてやろう」と考えたという。
当日は自宅からバイクで病院に向かった。午後1時過ぎ、人通りが少ない場所を探して周囲を2、3周した後、バイクを降りて、病院の窓ガラスを目がけて銃弾を放った。
その後、郵便局へ。当初は「(事故の保険対応に関わる)担当者を捕まえて脅かしてやる」と考えていたという。だが、通報を受けて到着した警察官から「銃を捨てろ!」と言われ、警察官の後方にあった自動販売機を目がけて引き金を引いた。局内の職員らが銃声に驚いて、外へ逃げていくのが見えた。
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逃げ遅れた女性職員2人のうち、1人から「具合が悪いので(外に)放してください」と言われたが応じなかった。再び「銃を捨てろ」と叫ぶ声が聞こえ、郵便局敷地内からパトカーを狙って撃った。被告はいずれの発砲も「人を狙ったわけではない」と主張した。
午後7時ごろ、女性職員から「(具合が悪い)女性を帰してくれたら私は残る」と提案されて応じた。残った女性は自力で脱出した。午後10時20分ごろ、警察官が突入してきて手足や首を押さえつけられたが、「いずれ捕まると思っていた」ため抵抗しなかった。
逮捕後、病院で医師ら2人が負傷したことや、監禁された職員2人が心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症したことを知った。公判では被害者に「悪かったと反省している」と述べた。
裁判は29日に論告求刑公判、6月4日に判決の予定。【加藤佑輔】
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