本社移転が活発化、「東京脱出」の傾向顕著に 7割が黒字企業

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2025年06月04日 08:20  ITmedia ビジネスオンライン

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東京商工リサーチは、2024年度「本社機能移転状況」調査を行った

 東京商工リサーチの調査で、2024年度に他都道府県に本社・本社機能を移転した企業は1万6271社で、前年度比18.7%増と大きく増加したことが分かった。コロナ禍の落ち着きに伴って経済活動が回復基調に乗ったことで、本社移転の動きも活発化している。


【画像】本社機能移転企業数年度推移・資本金別本社機能移転企業数


 本社移転した「資本金1000万円以上」の企業は2809社(同17.4%増)で3年ぶりに増加、「資本金1000万円未満」は1万3462社(同19.0%増)と3年連続で増加した。前年度は小・零細企業の本社移転が件数を押し上げたが、今年度は中堅規模以上の企業でも移転が増えた。


 本社が多く移転したエリアはどこか。転入超過数のトップは「九州」で148社だった。TSMC(台湾積体電路製造)の九州進出で製造業を中心に活況が続き、設備・IT投資も活発化した影響が考えられる。製造業と情報通信業の2業種は、九州の全8県で転入超過となった。半導体に加え、自動車の主力工場の進出が関連企業や取引先の吸引力を強めた。


 次に「中部」が147社と続いた。関東、近畿どちらへも商圏を広げやすく、特に関東からの転入が目立った。中部5県のうち、愛知県(20社減)を除く4県で転入超過だった。


 一方、転出超過だったのは、関東(284社減)、近畿(96社減)、四国(3社減)の3地区だった。特に関東の転出超過数が多く、地方への流出に歯止めがかからず、4年連続で転出超過となった。


 県別でみると、転入超過1位が「埼玉県」だった。転入が1507社に対し、転出は1257社で、差し引き250社の転入超過であった。主に東京都からの転入が多く、2年連続で転入超過数が大幅に増加。産業別では、「サービス業他」が100社増で転入超過数が最も多く、「農・林・漁・鉱業(超過数ゼロ)」を除く9産業で転入超過となった。


 転入超過2位は、「千葉県」で192社増となり、前年度1位から2位にランクダウンした。埼玉県と同様に東京都からの転入超過が中心で、産業別では、「卸売業」が56社増で転入超過数が最多。「金融・保険業」と「運輸業」を除く8産業で転入超過だった。


 転出超過数1位は「東京都」で、1158社減という結果に。産業別では10産業すべてで転出超過となった。転入数は2022年度3723件、2023年度3983件、2024年度4584件と増加が続く一方、2023年度に減少した転出数が再び2024年度に増加に転じ、東京都から隣接する埼玉県、千葉県、神奈川県への流出が強まった結果、転出超過数が再び増加した。


 ほかに、「大阪府」は264社減、「愛知県」が20社減と、大都市圏の中心部から周辺都市に転出する傾向が目立った。


●本社移転した企業の7割は黒字企業に


 他の都道府県に本社・本社機能を移転した企業のうち、移転年度から遡って2年以内の最終利益が判明した企業を抽出し、黒字と赤字企業の構成比を算出した。2024年度の移転企業では、黒字企業が構成比67.1%(1805社)と、約7割を占めた。


 東京商工リサーチは、「赤字を解消するためのコスト削減を目指した本社移転より、商圏拡大や需要、人材獲得を狙った『攻め』の移転が増えた可能性がある」と指摘している。

このニュースに関するつぶやき

  • 固定費が馬鹿みたいにかかるからねw そしてすぐ後に人件費も追いかけるように!?!
    • イイネ!9
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