長崎県警佐世保署の男性警部補(当時41歳)が2020年10月に自殺したのは、当時の上司2人のパワーハラスメントと長時間労働が原因として、遺族が県に計約1億3870万円の損害賠償などを求めた訴訟の判決で、長崎地裁は10日、ほぼ請求通りとなる約1億3587万円の支払いを命じた。松永晋介裁判長は、警部補の死亡前に月200時間前後の時間外労働が常態化していたとして、県側の安全配慮義務違反を認めた。
判決によると、警部補は20年3月から佐世保署の交通課交通捜査係長を務めていたが、約半年後の10月3日、課長や署長からパワハラを受けたとする遺書を残して単身赴任先のアパートで自殺した。
判決は、警部補が自殺する直前の時間外労働は「過労死ライン」とされる月80時間を大幅に超えており、死亡直前は月233時間に達していたと指摘。上司からは時間外労働の過少申告を招くような不適切な指示もあったとし、そうした過酷な職場環境では「職員が心身に不調をきたし、死に至ることもあり得ることは予見可能だった」と判断した。
一方で判決は、県側が長時間勤務の抑制やパワハラ防止を適切にしていなかった責任は認めていたため、パワハラの有無や内容にまで踏み込んで言及しなかった。また、国家賠償法は公務員が職務中に故意や重い過失によって他人に損害を与えた場合、国や自治体が対象者に賠償請求できるとの規定(求償権)があるため、遺族側は当時の上司の過失の度合いについても判断を求めたが、判決は触れなかった。
判決を受け、県警の松本武敏首席監察官は「判決内容を確認し、対応を検討していく」などとコメントした。【樋口岳大、百田梨花、添谷尚希】
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