ゼンリン「有人離島カード」がまさかの即完売 推しは“人口9人以下”の島?

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2025年07月30日 06:20  ITmedia ビジネスオンライン

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“離島304のうち70島”を厳選! ゼンリンのトレカ

 推し活市場に新たなジャンルが加わるかもしれない――。地図の調査・制作を手がけるゼンリン(福岡県北九州市)が、日本全国の「有人離島」をテーマにしたトレーディングカードを発売した。その名は「Map Design GALLERY CARD/有人離島」。7月18日に発売したところ、オンライン限定のコンプリートBOXは即日完売となるなど、話題を呼んでいる。


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 同商品は1パック7枚入り550円で、第1弾では全国304の有人離島のうち70島を収録。レア度は島の人口に応じて設定している。人口1〜9人の島(10種)が最高レア度の「R(レア)カード」、10〜99人の島(20種)が「U(アンコモン)カード」、100人以上の島(40種)が「C(コモン)カード」だ。


 地図大手のゼンリンがトレーディングカード市場に参入したのは、市場の拡大が背景にある。日本玩具協会によると、国内のカードゲーム・トレカ市場は、2024年に3000億円規模に成長している。「ポケモン」や「遊戯王」など定番商品のほか、マンホールやダムなどをテーマにした変わり種も人気を集めている。


 同社は地図をデザインした文具や雑貨を販売する「Map Design GALLERY」を運営しており、トレカもその一環として企画。2024年11月から約7カ月の開発期間を経て発売に至った。


 商品企画を担当した高橋圭佑さんは「後発として参入するなら、ゼンリンが持つ精度の高い地図データという強みを生かしたコンテンツをつくりたかった」と説明する。


●「有人離島」をテーマにした理由


 ゼンリンは、今回のカードを通じて「離島への関心を高めてほしい」という思いを込めている。カードをきっかけに島の存在を知り、どんな気候や暮らしがあるのかを想像してもらう。そんな知的好奇心を刺激することが狙いだ。


 ちなみに、同社が掲げる理想は「カードで知った島を訪れてもらうこと」だという。


 日本には約1万4000の離島があるが、そのうち人が住んでいるのは304島である。この304という数は、以下のように算出している。


 まず、離島振興法の対象となっている256島に、沖縄や奄美群島、小笠原諸島などの特別措置法の対象となっている50島を加える。さらに、一般の立ち入りが制限されている硫黄島と南鳥島の2島を除いた結果、304島となる。


 今回、第1弾として70島を選定。北海道から沖縄まで全国に分布するよう配慮し、レア度のバランスも考慮して絞り込んだ。304の島を一気に発売しなかったのは、コンプリートの難易度を下げると同時に、第2弾以降の展開を視野に入れた判断でもあった。


 島に住む人口の少なさをレア度に採用した理由は、人口が少なければその島に接する機会も少なくなり、文字通り「レア」な存在になるからだ。


 加えて、304島のうち人口1桁の島は約10%であり、レアカードの比率としても適切だったという理由もある。


●開発時の苦労とデザインへのこだわり


 開発では、正確な情報を記載することに苦労した。離島によっては、新潟の佐渡島(「さどがしま」「さどしま」)のように複数の呼び方があるケースもあれば、人口が変動して突然無人島になることもある。最終的に日本離島センターの情報を基準とし、カード下部に出典を明記することで情報の信頼性を高めた。


 デザインでは、通常の地図にある建物名や地域名などの注記を排除し、等高線と道路、建物、水域だけに絞った。「情報を載せすぎると、ライトユーザーには関心を持たれにくくなる」とデザイン担当の長縄樹里さんは狙いを説明する。


 同社は離島についても、家屋などの情報を含めて地図を整備している。今回のカードにも家屋の形を小さく載せ、建物の集まりから人の居住地が直感的に分かるようにした。地形と人口分布を重ね合わせることで、標高の低い平らな部分や海沿いに人が集まっている様子が一目で把握できる。


 また、島の縮尺はカードによって異なるため、人口と面積を明記し、距離のスケールを表示。大きい島では道路線が見えづらくならないよう、線の太さを調整している。カードの裏面には島のシルエットを表現し、クイズとして楽しめるようにした。


 「興味を持つきっかけになりそうな部分だけを残した」と長縄さんが説明するように、記載する情報やデザインをできるだけシンプルにすることで、ライトユーザーから地図愛好家まで幅広く楽しめるように仕上げた。


●コンプリートBOXは即日完売


 発売から1週間がたち、売れ行きは好調だ。ゼンリンの公式Xアカウントで開封動画を投稿したところ、同社の強みを生かした商品として話題を呼んだ。


 具体的な数字は非公表だが、オンライン限定で販売した全70種のコンプリートBOX(5500円)は、発売日に完売した。


 コンプリートBOX完売後には、全種類をそろえたいという顧客が単品を10個購入するケースもある。トレカならではの開封を楽しむ購入者や、自分が知っている島が入っていることを喜ぶ声も寄せられている。


 また、実際にカードの島を訪問するユーザーも現れた。長崎の壱岐島を訪れた様子を、カードと一緒に撮影してSNSに投稿するなど、聖地巡礼のような楽しみ方をしている。こうした反応は、ゼンリンが期待していたものだ。「思い描いていた理想的な楽しみ方を実践してくれている」(高橋さん)


 好調な売れ行きを受け、同社は完売したコンプリートBOXの再販も検討している。


●販路の拡大と、シリーズ第2弾の展望


 好調なスタートを切った一方で、課題も見えている。現在の販売チャネルは自社が運営する九州の4店舗と、オンラインショップに限られている。この課題に対応するため、ゼンリンは販路拡大にも乗り出した。


 まずは、東京にある地理系専門店「日本地図センター」と、地理系のブックカフェ「空想地図」での取り扱いが始まる。どちらも地図と親和性の高い店舗だ。


 今後は、こうした店を起点に、さらに販路を広げていく予定である。担当の高橋さんは「友人同士で開封を楽しんだり、かぶったカードを交換したりと、トレカならではの楽しみ方も広げていきたい」と話している。


 全体で304ある有人離島のうち、今回カードになったのは70島だけ。まだ234島が残っており、第2弾以降の準備も進められている。さらに、今後は有人離島以外のテーマでも、シリーズとして展開していくことも考えているという。


 カードがきっかけとなって島に興味を持つ人が増え、実際に足を運ぶ人が出てくれば、地域の活性化にもつながるはずだ。1枚のカードが、新しい島との出会いを生み出すかもしれない。


(カワブチカズキ)



このニュースに関するつぶやき

  • 全体が私有地のところもあるから、行けないところもあるね。若い頃、沖縄県の全有人島制覇にチャレンジしたが、いろんな事情で水納島と大神島だけは行けてないわ
    • イイネ!5
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