店頭に並んだ花王の「ビオレ呼吸感ベールUV」(同社提供) 東京都心の猛暑日の日数が9月に入ってからも過去最多を更新し、通算29日に到達するなど、終わらない酷暑が続く日本。強さを保つ紫外線(UV)と歩調を合わせ、日焼け止め商戦も過去最大だった2024年の市場規模を上回る勢いだ。「『夏の長期化』で日差しの強い期間が増え、消費が支えられている」(調査会社)といい、各社は日焼け止めだけでなく、日傘やUVカット効果のある衣料品など関連商品も積極的に投入し、売り上げを急増させている。
花王が3月に発売した日焼け止め「ビオレ呼吸感ベールUV」は、膜の厚みが湿度に応じて変化するのが特長。販売計画比で1.4倍の売れ行きを記録し、「一時は店頭で欠品した」(広報)ほどだ。資生堂が2月に投入したブラシ一体型のUVカットパウダーも、年間の出荷目標32万個にわずか2カ月で到達。一時品切れとなり、追加増産に踏み切った。コーセーコスメポート(東京)の人気ブランド「サンカット」の「パーフェクトUVシリーズ」の売り上げは、「前年の3〜8月と比べ2ケタ増」(広報)という。
紫外線対策の商戦は化粧品以外にも拡大中だ。遮光性とUVカット効果を持つ東レの生地「サマーシールド」は、日傘需要の高まりを受け、生地の使用製品の売り上げが2割強伸びたという。ワークマンが今年3月に発売した、速乾機能とUVカット機能を組み合わせた「汗が染みても目立ちにくい半袖Tシャツ」も好調だった。
調査会社のインテージによると、17年に約590億円だった日焼け止めの市場規模は、24年に過去最大の約775億円に拡大。今年は24年を上回るペースで推移している。日焼け止め以外でも「日傘普及率はまだ2〜3割」(東レ)と、さらなる伸びを期待する声は多い。
気象庁の定点観測データ(茨城県つくば市)によると、地表に届く紫外線量は1990年以降増加傾向が続く。国立環境研究所は「環境規制で大気汚染が改善され、紫外線が届きやすくなった」(中島英彰シニア研究員)と分析する。止まらない紫外線とともに、各社の戦いも続く。