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ドライヤー市場で、高価格帯製品の存在感が増している。パナソニックは2024年9月、家庭向けの高価格ドライヤー「nanocare ULTIMATE」(ナノケア アルティメイト)を発売。上位モデル「EH-NC80」が8万4150円、下位モデル「EH-NC50」も5万9400円と高額だが、2025年3月時点で計画比約2倍の売れ行きだという。
ベッドのマットレスや音質の良いオーディオ機器、カメラなどと同様に、一度高価格で品質の良い製品を使うと、価格の低い製品には戻りにくい。ドライヤーも同様の傾向が見られる。
調査会社の富士経済は、ドライヤーの国内市場規模が2025年に715億円に達し、2022年に比べ68.2%増加すると予想。そのうち、3万円以上の製品が市場の4割以上を占める見込みだ。パナソニックによれば、同社ドライヤーの平均単価は2022〜23年度で約10%上昇したという。
高価格帯への動きは他社にも広がっている。シャープは2023年に希望小売価格が4万4000円前後の「プラズマクラスタードレープフロードライヤー」を発売。米ダイソンは2024年に、髪をストレートにする機能を備えたドライヤー「Dyson Airstrait ストレイトナー」を4万〜5万円前後で販売している。
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●約8.4万円、「nanocare ULTIMATE」の狙いは?
パナソニックが投入したnanocare ULTIMATEは、水分を含んだイオンを発生させる「高浸透ナノイー」の第2世代を搭載。従来モデルに比べ水分発生量が最大10倍、髪への潤いが最大1.2倍になったという。
開発で着目したのは、近年のヘアケア市場で注目されているキーワード「パーソナライズ」だ。ヘアケア市場では、髪質や悩みに応じてオーダーメイドの成分を配合するシャンプー「MEDULLA」や、複数のシリーズを組み合わせて使えるヘアケアブランド「Aujua」など、個人のニーズに応じた商品が登場している。
ナノケアシリーズ利用者からも、「ふんわり乾かしたい」「さらさらに仕上げたい」「仕上げまでドライヤーで完結したい」といった多様な声が寄せられていた。こうしたニーズを踏まえ、ULTIMATEには「MOIST」「STRAIGHT」「AIRY」「SMOOTH」の4つのパーソナルメニュー(EH-NC50は3つ)を搭載。選択したメニューに合わせて高浸透ナノイー、ミネラル、マイナスイオンの発生量を調整し、髪質や気分に合わせて、理想の仕上がりを選べる仕様にした。
●約8.4万円でも消費者に受け入れられたワケ
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nanocare ULTIMATEの好調の背景には、「効果を実感できるものにはお金をかけたい」という消費者心理があるそうだ。また、美顔器など美容家電の場合、「購入後に使わなくなったらもったいない」との不安があるが、ドライヤーは「毎日使うので費用対効果が高い」といった安心感や、家族で共有できる点も購入を後押ししているという。
購入者層は30〜50代が中心。高所得者層や美容意識の高い層が多く、従来モデルと比べての髪への関心が高いという。「壊れたから買い替える」のではなく「もっと良いものを使いたい」という理由での買い替えが目立ち、同シリーズからのリピーターも多い。また、ナノケアシリーズ全体の購入者の約3割は男性で、nanocare ULTIMATEでも同様の比率だ。黒を基調としたシンプルなデザインや速乾性が男性層に支持されているそうだ。
パナソニックは今後も、ドライヤー市場の拡大を見込む。家電量販店では既に1万円を超える製品が増えている。同社のマーケティング担当者は、「一度良い製品を使うと、ランク下げることはなかなかできない面もある。ナノケアとしては“潤いと速乾”の 2つのコンセプトを大事にしながら、nanocare ULTIMATEのように気分やなりたい髪に合わせて使える製品の開発を進めていきたい」と意気込んだ。
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