
世界的に有名なアメリカのスミソニアン博物館ですが、トランプ大統領は「リベラル寄りで、アメリカの悪い部分ばかり取り上げている」と主張し、展示を改めるよう強い圧力をかけています。
アメリカの首都・ワシントンの「スミソニアン博物館」。21の施設を運営し、去年はおよそ1680万人が訪れた世界的に有名な博物館ですが…
記者
「トランプ政権はスミソニアンの展示内容の調査を始めていて、必要に応じて修正を求めるとしています」
アメリカ トランプ大統領
「スミソニアンの問題もあったので、博物館に少し関わることにしたんだ。アメリカの悪いことばかり取り上げているから、もう少し良いことも取り上げてほしい」
トランプ大統領は、スミソニアンの展示内容が▼「リベラル寄りで、多様性を重視しすぎている」、▼「アメリカの悪い部分ばかり取り上げている」などと主張。8月には、問題だとする作品のリストを公表しました。
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その一つが、国立肖像画美術館に展示されていた絵画です。移民の家族が国境の壁にはしごをかけ、メキシコからアメリカに不法に入国しようとする様子を描いています。
ホワイトハウス
「国立肖像画美術館は、南部の国境から不法入国する行為をたたえる作品を展示するだけでなく、賞の最終候補に選んだ」
ホワイトハウスが主張するとおり、この絵には「不法な入国をたたえる」メッセージが込められているのでしょうか。
南部テキサス州に絵を描いた画家を訪ねました。
画家で、大学で教鞭もとるゴンザレスさん。メキシコで生まれ、9歳の時に両親とともにアメリカに移り住みました。いまもメキシコ国境近くの街に暮らし、「国境」や「移民」を題材にした絵を多数、描いています。
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画家 リゴベルト・ゴンザレスさん
「移民の人たちには、みな、驚くべき物語があります。砂漠を旅し、川を越え、過酷な環境で生き延びるために本当に苦労した物語です」
ホワイトハウスはスミソニアンに展示されたゴンザレスさんの作品について、「不法入国をたたえている」と指摘しましたが…
画家 リゴベルト・ゴンザレスさん
「私が強調したかったのは、移民の家族が向かうアメリカには“反移民”の感情が満ちていて、多くの危険が待ち受けているということです」
ゴンザレスさんはアメリカ国内の「反移民」の風潮に危うさを感じていて、そうした自らの思いを込めて絵を描き続けています。
ホワイトハウスに名指しされた画家の間では、展覧会の会場が借りづらくなったり、資金援助が打ち切られたりといった問題も起きていますが…
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画家 リゴベルト・ゴンザレスさん
「恐れることは何もない。少し不確実性があるというくらいです。絵は描かれなければならない、描かれる必要がある。物語は語られなければならないんです。それがどんな結果を招いたとしても」
ゴンザレスさんは政権から圧力を受けても、自身が描きたい絵を描くと言い切りました。
ただ、トランプ氏は年明けにもスミソニアンの展示を変更するなどして、文化や芸術の分野にも一段と統制を強めたい考えです。
多様性が尊重されてきたアメリカ、「表現の自由」はどのように変わっていくのでしょうか。