画像はXより 繁華街やショッピングセンターで目にする「おかしのまちおか」は、2025年に店舗数が200を超えました。少子高齢化で人口減少が続いているにも関わらず、業績は堅調に拡大しています。
ドラッグストアが安売り攻勢をかける中で、お菓子特化型の小売店「おかしのまちおか」が成長できるのはなぜでしょうか。消費者の意識の変化と販売戦略にその秘密があります。
◆子供の数は減少しているのに、競合は増加するお菓子販売業界
「おかしのまちおか」を運営する、みのやの2025年6月期の売上高は前期比6.6%増の240億円。期中に合計17店舗を新規出店しています。毎年10店舗程度を出店して成長してきました。今期は1割程度の増収を計画しています。
日本の人口は減少を続けています。2024年は10年前と比べて343万人減りました。15歳未満の子供の数は231万人も少なくなっています。しかし、「おかしのまちおか」は2023年6月末に150店舗を達成し、その後も出店を重ねてきました。2025年6月末時点の店舗数は208です。
人口減少という悪材料に加え、お菓子販売という業界の競争環境は苛烈さを増しています。ドラッグストア最大手の「ウエルシア薬局」は10年で1400以上も店舗数を拡大してきました。
ダイソーは1998年に1000店舗を突破しましたが、今や国内だけで4000店舗を超えるまでに成長しています。
レッドオーシャンでも勝ち残れる背景に、「おかしのまちおか」には明確な目的を持った顧客が来店していることがあります。その誘引力を作っている要素は3つ。お菓子に特化していること。価格が安いこと。珍しい商品を販売していることです。
◆デフレ期を抜けて消費者の意識が変化
実は日本の人口は減少しているものの、お菓子の市場そのものは成長しています。2024年の菓子小売金額は3.8兆円で、10年前と比べて6263億円増加しました。特に2023年からの増加が顕著。インフレによって1人当たりの購入額が増えたのです。
2014年は1人当たりがお菓子に支払う金額は年間2万5560円でしたが、2024年は3万1328円でした。
つまり、お菓子は度重なる値上げを行いましたが、価格高騰に対して需要が減退することがあまりなかったということになります。
◆節約したいと思いつつ、抑えきれない?
日本生活協同組合連合会は「「節約と値上げ」の意識についてのアンケート調査」を行っています。それによると、「現在節約しているもの、今後節約しようと考えているもの」との質問で「菓子・おやつ」の回答はトップの41.8%でした。一方、「直近3か月で、値上がりによって購入頻度や量が減ったもの」との回答では、デザートや果物が上位を占めており、「菓子・おやつ」は25.7%でした。
消費者は、お菓子については節約したいと強く思っているものの、実際には購入頻度を抑えきれない実態が浮かび上がります。
足元ではコンビニの苦戦が目立ちます。こうした調査からは、消費者がより安い場所を選んで購入している実態が浮かび上がってくるのです。すなわち、目的を持った顧客の来店を促せる店が強みを発揮する時代になったと言えます。
「おかしのまちおか」はお菓子に特化し、安いという特徴があります。インフレ下の今、消費者がわざわざ足を運ぶ理由があるのです。
◆注目したい「スポット商品」と「陳列」
「おかしのまちおか」は低価格であることが競争力の源泉ですが、その背景にあるのがスポット商品。スポット商品とは賞味期限が迫ったものや季節性のある商品、製造過多となったものを指します。
これらはメーカー側で過剰在庫になりやすいため、「おかしのまちおか」は安く仕入れ、店舗網を使って大量に販売することができます。
「おかしのまちおか」のスポット商品は売上全体の50%。定番以外のお菓子の比率が高く、安さと珍しさが集客フックになっていることがわかります。
そして、ドン・キホーテのように商品を積み上げた陳列方法も特徴的。路面店やショッピングセンターでそれを見かけると、わくわく感が醸成されます。家族で近くを通りかかれば、子供たちが引き寄せられて思わず購入することもあるでしょう。
最近では外国人観光客が、非日常的な店の雰囲気に引き寄せられて購入する姿を見かけるようになりました。目的を持った来店客の他にも、お菓子特化型という独特な店舗が通りがかりの人々の誘引力にもなっているのです。
◆未開拓エリアに切り込むことができるか?
「おかしのまちおか」はドミナント出店を基本戦略としており、2026年6月末時点で関東圏に161店舗、関西圏に28店舗、中京圏に27店舗あります。まだまだ出店余地は残されているように見えます。
ただし、薄利多売を続けていると息切れをする懸念があります。「おかしのまちおか」の粗利率は37.6%。ウエルシアは、食品は18.6%ですが全カテゴリーでは30%を超えています。ドラッグストアは安い食品を集客フックにし、医薬品や化粧品で稼ぐというビジネスモデル。この価格競争に正面から挑むとやがて体力を失うのは明らか。
取引先を開拓し続け、「おかしのまちおか」でしか買えない商品がある、この場所でしか体験できないものがある、という消費者意識を醸成できるかどうかが、今後の成長のポイントとなるのではないでしょうか。
<TEXT/不破聡>
【不破聡】
フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界