「活字離れ」「レンタルショップ苦戦」なのに、ブックオフとゲオはなぜ成長? 「祖業」だけじゃない巧みな稼ぎ方とは

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2025年11月06日 06:01  ITmedia ビジネスオンライン

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リユース店「BOOK OFF」(同社公式Webサイトより)

 レンタルショップを祖業とするゲオホールディングス(HD)は、ゲームの買取販売やCD・DVDレンタルの「ゲオ(GEO)」を展開する。同業のチェーンに「ブックオフ(BOOKOFF)」があり、こちらはブックオフグループHDが展開している。


【画像】ゲオHDの決算推移


 近年は活字離れ、CD・DVD需要の低下が進むなか、両社を取り巻く環境は厳しい印象を受ける。しかしそうした逆境を跳ねのけ両社の業績は伸び続け、いずれも売上高がコロナ禍以降に過去最高を更新した。リユース市場の拡大とともに両社は祖業とは別の新しい商材で事業を伸ばしている。


●コロナ禍をものともせず、成長したゲオ


 ゲオHDは1986年に創業したビデオレンタルショップをルーツとする。1989年からゲオの展開を始め、2000年代からはCD・DVDのレンタルで台頭する。競合のTSUTAYAと同様、品ぞろえやサービスの質に課題がある個人店や零細業者の店舗を駆逐し、全国に勢力を拡大した。


 1990年代後半からはリユース事業にも注力。DVDレンタルのほか、DVDやゲームソフトの買取販売店として展開していく。近年はスマホや家電にも商材の幅を広げ、オペレーションを強化するため直営店比率を高めている。


 とはいえ、このような事業だけを継続していた場合、業績は悪化していたかもしれない。CD・DVDは音楽・動画配信サービスなどに淘汰され、国内の家庭用ゲーム市場もスマホゲームの台頭で軟調に推移している。だが、ゲオHDの売上高は2020年3月期に3000億円を超え、2024年3月期まで増収増益が続いた。


●ゲオが成長できた理由とは?


 業績をけん引したのが古着を中心とするリサイクルショップの「2nd STREET(セカンドストリート)」である。もともとは別会社が運営していたが、2010年に完全子会社化した。


 セカンドストリートは近年のリユース市場の拡大とともに、店舗網を広げ、古着ブームや古着に対する抵抗感の低下も追い風になった。直営店が中心でありながら、店舗で買い取った商品をその店舗で売る「地産地消」を基本としており、個店ごとに特徴がある点も消費者の支持を集めている。


 店舗巡りをする消費者もいるなど、掘り出し物を探す楽しさも提供する。古着屋とはいえ安いものだけでなく、10万円ほどする革ジャンや貴金属類などの高額品も取り扱っている。


 同社の2025年3月期決算を見ると、セカンドストリート関連の商材が全体の4割超を占める。ゲオが得意とするメディア系商材の売り上げは2割ほどで、祖業のレンタルにいたっては10%に満たない。ゲオはレンタルから、何でも扱うリユース業態に変革したわけだ。


●古本屋をアップデートしたブックオフ


 ブックオフグループHDは1990年に古本屋のブックオフとして開業し、翌年からチェーン展開を始める。ブックオフが成功した理由は、入りづらい街の古本屋をコンビニのような明るい店舗にしたことにある。


 一般的に古本屋といえば、特定のジャンルに強みを持つ店が多く、品ぞろえも店舗によってまばらだ。また、長時間の立ち読みが嫌がられる場合もあった。一方でブックオフは駅前などに入りやすいコンビニのような店舗を構え、立ち読みも受け入れた。駅前など目立ちやすい場所に出店したことで、新品に近い古本も仕入れられるようになり、チェーン展開が好循環をもたらした。


 だが、書籍市場の縮小が古本市場を襲う。1990年代に2.5兆円超あった出版市場の規模は2024年時点で紙媒体だけだと1兆円ほど。主な要因は電子書籍の普及や娯楽の多様化による雑誌売上の減少だ。


 しかしブックオフはゲームやDVDにも商材を広げた。


●今やトレカ・ホビーが主力の一つに


 ゲオと同様、家庭用ゲーム機やDVDも衰退期にあるが、ブックオフの業績は好調である。本やソフトメディア以外の商材が伸びたからだ。各年ともトレーディングカード・ホビー、アパレルなどの売り上げが好調だった。


 国内店舗における書籍販売の構成比が減少する中、これまでひとケタ台だったトレーディングカード・ホビーの構成比が2025年5月期には21.1%まで拡大した。都内にある秋葉原や中野のホビー店のように、アニメキャラクターのフィギュアが充実した店舗もある。


 ポケモンカードの転売や高額取引が話題となっているように、トレカの市場規模は拡大し続けている。2010年代まで1000億円前後を推移していたが、2020年以降に急成長し、2024年度は3000億円を突破した。ブックオフではトレカ人気に合わせてコーナーを拡大し、店内の一部はまるでカードショップのような構成になっている。


●今後もリユース市場は拡大見込み


 本やソフトメディアなどの商材は市場規模が縮小しているが、中古市場全体は拡大が続く。リユース経済新聞によると、市場規模は2000年代を通じて拡大し、15年連続の拡大となった2024年は3.2兆円。2030年には4兆円に達する見込みだ。鶏と卵の関係といえるが、市場規模拡大は買取販売店の増加によって、消費者の中古品に対する抵抗感が薄れたことが背景にある。メルカリなど自ら売買できるプラットフォームの登場も、中古品に触れる機会を増やした。


 賃金の上昇以上に可処分所得が減っていることも関係している。税金ばかりが話題となるため目立たないが、健康保険料や厚生年金保険料など社会保険料の増額は、消費者の手取りを減らし続けてきた。一般的な会社員の場合、社会保険料が所得税をはるかに上回る。インフレで物価が上昇し、新品に手が届きにくくなっている中で、自動車や都内の住宅と同様、衣類や娯楽品でも中古品へのシフトが進んだ。


 リユース市場全体が拡大するなか、ゲオHDとブックオフグループHDは商材を切り替えて成長できた。人気商品のトレンドは変わる可能性があるが、今後も両社は商材を変えて乗り越えるのかもしれない。


●著者プロフィール:山口伸


経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。



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