
クマによる人的被害が後を絶ちません。10日も各地でクマが目撃され、富山県や山形県でも緊急銃猟で駆除が行われました。クマとどう向き合うのか、ある自治体の対策が注目されています。
相次ぐクマ被害 注目される兵庫県の対策井上貴博キャスター:
短期的な視点では自衛隊や警察の皆さんに頼るという対策が可能ですが、中長期的には自治体が何か知恵を絞る必要があるでしょう。何かヒントはないかと調べてみると、ある自治体の対策に行き着きました。
JNNのまとめによると、クマによる被害は10日時点でけが人が206人。亡くなった方は13人と、2006年からの統計開始後、過去最多となっています。
クマによる被害の統計を取り出したのは結構最近だということから、日本はクマのことを案外よくわかっていないのではないかというところにも行き着きました。
“災害級”のクマ被害となっていますが、兵庫県が行っているクマ対策に注目しました。個体数の正確な把握をする対策です。
まず、仕掛けた檻の中にクマが入ったら、麻酔で眠らせます。その眠らせたクマの首根っこのところをぐっと掴んで、1頭1頭にマイクロチップを入れていきます。
このマイクロチップを入れることで、クマの正確な個体数を管理していきます。どうやって管理していくのでしょうか。
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檻を設置して、年間何十頭と捕獲します。その捕獲したクマ全頭にマイクロチップを入れていきます。そして、山に放ちます。翌年、罠を設置して捉えたクマの中でマイクロチップが入っているクマが多ければ、全体のクマの頭数は少ないだろうということが推測できます。
逆に、捕獲したクマの中にマイクロチップが埋まっているクマが少ないとなると、全体の数は増えたのではないかと推測できます。
これを20年間繰り返していくと、延べ3500頭ぐらいにマイクロチップを入れているので、もう少し細かく個体数の差が把握できるようになります。
兵庫県立大学の横山真弓教授によると、正確な個体数を把握することで「クマが増加傾向であれば駆除する」。ただ、単に駆除するのではなく、何頭ぐらい駆除するかを計算できるので、「減少傾向なら山に放すという適切な判断ができる」ということです。
兵庫県が行っているのは、クマを駆除して数を減らそうということではなく、クマを保護するためにしっかりと管理していくという対策です。
スポーツ心理学者(博士)田中ウルヴェ京さん:
実態調査ということですよね。数だけでなく、おそらくこの場所に、このマイクロチップを埋めたクマが増えたのなら…など、地域によっても対策は変えられますよね。
また、マイクロチップのデータの精度によって、違う実態調査もできるようになると思うので、クマと人間との共存のためにもいいことですよね。
井上キャスター:
驚いたのは、兵庫県がこの取り組みを始めると毎年15%程度、クマが増えているということです。単純計算すると、5年で2倍になります。
兵庫県でこのような実態がわかったものの、他の自治体では人が足りないこともあり、この対策を行えていません。また、クマの生息場所は広いので、行うお金もありません。
知恵を絞って兵庫県のような取り組みを他の自治体でどうできるのかというのは今後の話なのかもしれません。
井上キャスター:
もしかすると、クマがいろいろと知恵をつけているかもしれないという話もあります。
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北海道猟友会砂川支部長の池上治男さんは、40年以上猟師をしていて初めて見た光景があるといいます。
2025年7月の北海道・砂川市にて、クマが檻の中に入ろうとしていたのですが、クマは檻の上にいたというのです。
檻の中に餌が入っているのでクマが中に入れば捕獲できるのですが、仲間が捕獲されているのを見て学習したのか、クマも知恵をつけているようなので、人間もいろいろと対策を考えなければいけません。“イタチごっこ”というところも見えてくるわけです。
田中ウルヴェ京さん:
当然、動物ですから学ぶ可能性はありますよね。ただ、お子さんや高齢者が住んでいる場所の近くにクマが来ています。森の中にどのような食べ物をちゃんと残しておくかなど、本当にいろいろな対策をやらなければならないということですよね。
井上キャスター:
どう共存していくのかというところが、本当に問われる時代なんだろうと思います。
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<プロフィール>
田中ウルヴェ京さん
スポーツ心理学者(博士) 五輪メダリスト 慶応義塾大学特任准教授
アスリートの学び場「iMiA(イミア)」主宰
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