レストランの「1名予約」が5年で9.2倍 “おひとりさま”アフタヌーンティーが人気のワケ

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2025年11月28日 06:30  ITmedia ビジネスオンライン

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急増する“おひとりさま”の裏側

 レストランやホテルなどの予約機能を備える女性向けWebメディア「OZmall(オズモール)」は、1名でのレストラン予約の利用者数が2019年から2024年にかけて9.2倍に伸長したと発表した。2025年も増加傾向で、10月末までの利用者数は昨年同期比で約1.2倍となっている。


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 同媒体に掲載されている約4000のレストランのうち、 2300以上が1名予約が可能で、近年こうした店舗が増加傾向にあるという。


 1名利用が増えた最大のきっかけは、コロナ禍だった。オズモールでは、日時や店舗を指定して、参加者がそれぞれ1人で参加するイベント「おひとりさま貸切DAY」を2021年7月に開始。


 店舗を貸し切ったり、おひとりさま貸切用エリアを設定したりして、1人用の空間を作ることで、安心して外食を楽しんでもらうことを狙った。同時に飲食業界を応援する意図もあったという。同企画が好調に推移したことから、コロナ禍が明けた現在も不定期で継続している。


 1名利用で特に人気が高いのは、「アフタヌーンティー」や「ランチ」だ。オズモール編集部の横内啓子氏は「1人でレストランを訪れることが『特別』ではなく、『自然な選択肢』として受け入れられるようになった」と話す。


 なぜ、“おひとりさま”でのレストラン利用がこれほど拡大しているのか。横内氏に「おひとりさま貸切DAY」の戦略と成果を聞いた。


●「おひとりさま」が定番企画に


 2026年で30周年を迎えるオズモールは、主に「レストラン」「ビューティー」「トラベル」の3領域で、「コンテンツ配信」と「予約」のサービスを展開。20〜30代の女性を中心に幅広い層が利用している。


 ここでしか予約できない限定プランを販売しており、中でも「レストラン」領域に強みを持つ。プレミアム予約やポイント付与などの特典がある無料の会員サービスもあり、現在の会員数は450万人を超える。


 そんなオズモールでは、外食を控える風潮がまん延するコロナ禍で「おひとりさま貸切DAY」を発案。ザ・ペニンシュラ東京とヨコハマ グランド インターコンチネンタル ホテルの「アフタヌーンティー」、米沢牛上杉 銀座本店の「焼肉」の3プランを女性のみ、2021年7〜8月内で日時を限定して販売した。価格帯は5200〜6000円の高級プランだ。


 「1名での利用が少ないと思われるレストランを選んで、計49人分を販売したところ完売しました。想定以上の人気で、ザ・ペニンシュラ東京には3日間の追加日程を用意いただきました」


 この反響から、「おひとりさま貸切DAY」は定番企画になった。2023年9月頃までは、毎月10〜15店舗で日程を決めて実施した。内容はアフタヌーンティーが最も多く、ビュッフェ、焼肉、カウンターでの寿司、天ぷらなど多様なカテゴリーで展開していたという。


 「参加者は40〜50代が中心で、自由な時間と経済的余裕があり、アクティブに動ける方が多いですね。毎月異なるお店が登場するので、リピーターの方も一定数いました。男性も利用可能なイベントでは、チラホラと姿が見られました。男性利用者の年代はバラバラで、スーツ姿の方もいれば、カジュアルな装いの方もいました」


●会員向け企画は、倍率最大17倍


 感染対策が収束してきた2023年後半以降は、季節のイベントや店舗のキャンペーンに合わせて、「おひとりさま貸切DAY」の実施回数を絞っている。予約が取りづらい人気店や景観のいいエリアを選んだり、通常よりお得な割引を提供したり、魅力的なプランを厳選して好評を得ているという。


 特に人気が高かったのは、オズモールの利用が30回以上の「ダイヤモンド会員」向けの企画だ。いずれも4つ星以上のホテル内レストランで実施し、「ザ・ペニンシュラ東京」のPeter(ピーター)、「東京ステーションホテル」のThe Atrium(アトリウム)、「帝国ホテル東京」のインペリアルラウンジアクアなど。2023年後半から2024年にかけて複数回実施したところ、毎回抽選となり、当選倍率が17倍の企画もあった。


 「一般発売前の新メニューを先行試食できたり、1万円以上するアフタヌーンティーを約半額で提供したり、オズモールの編集部メンバーが現地でトークセッションを行ったりするなど、特別感のある企画を提供したところ、大きな反響がありました」


 コロナ禍では1人席のみを提供していたが、最近では「相席」も取り入れている。ダイヤモンド会員向けの企画は基本的に相席で、過去の利用履歴などを参考に、趣味が合いそうな会員同士を相席にしている。一方で、会員向けではないイベントで相席にする場合は、店側に配置を任せることが多いそうだ。


 「相席になる場合は、予約段階で注意書きを入れています。相席の場合の過ごし方は、人それぞれですね。同じテーブルの利用者と会話が盛り上がり連絡先を交換する方もいれば、1人で食事に集中する方もいます」


●なぜアフタヌーンティーが人気なのか


 4年以上にわたって「おひとりさま貸切DAY」を開催するなかで、特に人気のある企画はアフタヌーンティーだ。2024年の1名利用者数は2019年比で20%増となり、ビュッフェやランチよりも増加率が高かった。これまでは「2名以上の予約」が主流だったが、近年は1名予約ができるアフタヌーンティーのプランが増えている。


 「コロナ禍以前、アフタヌーンティーは1人で利用できる店舗が非常に限られていました。というのも、スイーツなどを乗せるティースタンドは、通常2名分を1枚の皿に盛り付けます。1名分だと見栄えがさみしくなるので、店舗にはあまり歓迎されません。ですが、おひとりさま貸切DAYを企画するなかで、1名用でも見栄えのいい盛り付けを一緒に考えるなどして、1名利用ができる店舗が増えていきました」


 同企画を始めた当初は、2人席を1人で使うことによる効率の悪さからも、1名利用に消極的な店舗が少なくなかった。しかし、「1名予約により予約機会が増える」というオズモール側の提案を受け、おひとりさまを歓迎する店舗が増えていったという。


 その結果、”おひとりさま”のアフタヌーンティーが高い支持を得るようになった。その理由として、横内氏は「物価高」や「価値観の多様化」を挙げた。


 「コロナ禍の感染対策を機にアフタヌーンティーの1名利用が増えましたが、最近は一緒に行く相手を見つけるのが難しい方が多いようです。物価高の影響で『高額の食事に友人を誘ってもいいのかとためらう』という声が多く聞かれます。


 また、今までは周囲の目が気になっていた方も、好きなものを1人で楽しむ文化が定着したことで行動変化が起きたのかなと。とはいえ、それでも1人では利用しづらい方もいると思います。より利用しやすい環境作りとして、おひとりさま貸切DAYは引き続き実施していきたいですね」


●おひとりさま「クリスマスプラン」も好調


 これまでカップルでの利用が定番だった「クリスマス」や「バレンタイン」にも価値観の変化が見られている。


 2024年には、12月上旬の平日日中に「クリスマスアフタヌーンティー」のおひとりさま貸切DAYを企画。三井ガーデンホテル横浜みなとみらいにあるレストラン「RISTORANTE E'VOLTA -Unico Polo-(リストランテ エボルタ イル チェーロ)」で、5500円のアフタヌーンティー(通常価格の20%オフ)を提供したところ、用意した枠が完売したという。


 「同ホテルでは、2名以上の予約でも20%オフのアフタヌーンティープランを提供していました。平日なので集客に懸念はありましたが、フタを開けたら好評で、当初は6席限定だったところを15席まで増やしました。オズモールは記念日や誕生日などカップル利用が強いため、以前はクリスマスやバレンタインは“カップルで過ごすイベント”として訴求していましたが、近年は多様な打ち出しをしています」


 店舗には土日祝日は2名以上で利用してほしい考えがあり、予約が埋まりづらい平日やランチとディナーの合間のアイドルタイムに、「おひとりさま貸切DAY」を設定することがよくある。このクリスマスアフタヌーンティーも、まさにそうだった。予定の調整が難しくなる懸念はあるものの、中には「有給を取って来た」という人もいたという。


 直近の企画では、2025年10月末の平日に、虎ノ門ヒルズの高層階にあるアンダーズ 東京の「ザ タヴァン グリル&ラウンジ」で実施した「ブランチビュッフェ」が特に好評だった。用意した70席は、発売当日に完売したそうだ。


 「普段は週末だけ実施しているビュッフェで、年内予約は全て埋まっています。そうした人気店が特別に平日開催したことと、2000円引きの6970円で提供したことが反響につながった要因だと思います。『特別な体験がしたい』というニーズは、1名でも2名でも変わらず、店舗選定はかなりこだわっています」


 オズモールでは、今後も「おひとりさま貸切DAY」を継続する方針で、2025年12月は領域を広げて1名利用を後押しするという。横浜でのライブチケット付き宿泊プラン(12月24〜25日)を1名用で発売するほか、毎月20〜26日に実施している「ご褒美セール」ではレストランに限らないホテルやビューティーサロンなどの1名プランを多く用意するとしている。気ままな「ソロ活」のニーズは、ますます高まりそうだ。


(小林香織、フリーランスライター)



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  • 1人時間も、気のおけない仲間との時間も楽しめるおばちゃん…(将来は「おばぁちゃん」)でありたい…。一人が孤独でさみしいと好き勝手にあーだこーだ決めつけられるのは…こっちは心外よね。
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