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教諭から嫌がらせやセクハラを受けて不登校になったとして、埼玉県桶川市立中学に通っていた男性(19)と家族が市と教諭に約4400万円の損害賠償を求めた訴訟は、22日に判決が確定した。市に約110万円の支払いを命じるさいたま地裁判決を受け入れ、控訴を断念した男性は毎日新聞の取材に応じ、「判決内容に納得できたわけではないが、過去に縛られるよりも前に進む決意をした」と語った。
判決によると、中学で国語を担当していた男性教諭は、原告の男性が入学した2019年4月以降、授業中に吃音(きつおん)の症状が出て文章をスムーズに読めない話し方をまねて嘲笑するなどした。また、男性の耳たぶや腹を触ったり、好きな異性を聞いたりしたことも認定した。
吃音を笑った行為をさいたま地裁は「教育目的とは無関係で、尊厳を傷つけた」として、違法性があると認めた。この点について男性は「自分が受けてきた苦しみを認めてくれたのはうれしい」と話した。
一方、教諭の行為で心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症したとする主張が退けられたことに対しては、「納得できない気持ちは正直ある」と悔しさをにじませた。
控訴を断念した理由について、「(教諭の行為と)PTSDとの因果関係を認定するハードルの高さを実感した。訴訟が続けば費用や時間もさらに必要になる」と説明する。
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男性は、教諭の行為を突然思い出すフラッシュバックなどに悩まされる中、今年4月に証人尋問で法廷に立った。音読の際に何とか言葉を発しようと体を揺らすと、その様子や口調をまねされて笑われたことなどを証言した。「あの時、自分にできる限りのことはした。裁判で闘ったこと自体は後悔していない」と振り返った。
男性が今、心を痛めているのは、昨年市内の別の中学で相次いで判明した問題だ。
市立桶川中ではバスケットボール部の男子生徒が試合中にあごを骨折したにもかかわらず、顧問が保護者に連絡せず病院も受診させなかった。また、同校では授業中の水分補給のタイミングを制限する校則を定めていた。男性は自身の体験と重ね合わせながら、市に対し「これ以上、悩み苦しむ子どもを増やさない学校組織にしてもらいたい」と訴える。
男性は現在も一人で外出することが難しい日々が続く。それでも裁判の途中で人生の目標を持つようになった。「いつか普通の日常を送れるようになったら大学に行きたい。将来は医療分野で自分と同じように吃音に悩む人の力になりたい」。夢の実現に向け、PTSDの治療を続けながら一歩ずつ社会復帰を目指す考えだ。
吃音の当事者でつくるNPO法人「全国言友会連絡協議会」の斉藤圭祐理事長は、今回の判決について「教諭が吃音をまねて笑うなどした行為に対し裁判所が明確に違法性を認めた判断はこれまで聞いたことがなく、大きな一歩だ」と評価する。
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一方で、「学校での経験で深いトラウマを抱える当事者は多い。PTSDとの因果関係が認定されなかったのは残念」と指摘。教育関係者に対して、「判決を重く受け止め、当事者に寄り添う学校現場の実現に取り組んでほしい」と求めた。【加藤佑輔】
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