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早いもので、2025年も「『現代用語の基礎知識』選 T&D保険グループ新語・流行語大賞」の季節がやってきました。ノミネートされた言葉を見ると、「ぬい活」の文字があります。
ぬい活(ぬいかつ)とは、「ぬいぐるみ活動」の略称です。数年前からぬい活をしている人達はたくさんいたのですが、2025年になり、一気に認知が広まりました。
日本玩具協会が発表した2024年度の玩具市場規模を見ても、ぬいぐるみは前年比で115.3%の伸びを見せており、2025年年度はさらに跳ね上がると予想されます。
ぬい活の「活動」は、ぬいぐるみと一緒にお出かけすることがメインです。好きなアーティストなど「推し」を模したぬいぐるみや、好きなキャラクターのぬいぐるみなどをバッグに付けたり、専用ポーチに入れたりして持ち歩きます。出先では、きれいな景色や映えるスイーツと一緒にぬいを撮影し、SNSに投稿します。
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普段からもぬいとの暮らしを楽しみます。ぬいの服を着替えさせたり、ベッドに寝かせたり。オリジナルの洋服やグッズを手作りして着せる人もいます。「外に連れ出すと汚れてしまう」と考え、家だけでぬい活をしている人もいます。
SHIBUYA109エンタテイメントが15歳から24歳の女性を対象に行った調査では、ぬい一体あたりにかかる金額として3282円、年間でぬいやぬい活にかける金額(収納やぬいの洋服など)として6644円が平均額となっています。
また、持ち歩くぬいは、「推しぬい」と「キャラぬい」がほぼ同じ割合で多く、「名前のないぬい」も約3割います。
●若者がぬい活に夢中になる理由
ぬい活をする理由としては、大きく分けて「ファッションアイテム」「推し活」「いやし」が挙げられます。
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ファッションアイテムの代表格が「ラブブ」(LABUBU)です。ラブブはモフモフしたうさぎのような着ぐるみを着ている、ちょっといたずらっ子のような笑顔を浮かべている人気キャラクターで、新語・流行語大賞にもノミネートされています。
ラブブは、香港在住のアーティストであるカシン・ロン氏がデザインしたキャラクターで、販売元は中国の玩具メーカー「POP MART」です。あまりの人気に完売状態が続いており、高額な転売や偽造品も作られる事態になっています。POP MARTの実店舗は抽選に当たらなければ入場もできず、オンラインショップへ入荷されることがあっても瞬時に完売します。
さらにラブブ人気に火をつけたのは、韓国のガールズグループ「BLACKPINK」のメンバー、LISA(リサ)だといわれています。リサは高級ブランドのバッグにラブブをぶら下げるだけでなく、コンサートの衣装にもラブブ風にデザインを採用するほど、ラブブを愛しています。
彼女以外にも海外セレブに人気があり、英国の元サッカー選手であるデビッド・ベッカムさんも、愛娘にもらったラブブをバッグに付ける様子をInstagramに投稿し、話題になりました。
一見すると子供っぽいアイテムであるぬいぐるみが、セレブのファッションアイテムとなったため、バッグにラブブをぶら下げることが最先端のおしゃれとなったわけです。
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ラブブの人気にはSNSも一役買っています。TikTokなどの動画共有サービスでは、ラブブの「開封動画」が人気です。ラブブは「ブラインドボックス」と呼ばれる、中身の見えない箱に入って売られています。開封するまで、欲しいカラーが買えたのか、分からないのです。
そこで、大量購入したインフルエンサーなどがブラインドボックスを1つずつ開け、一喜一憂する様子を配信しています。視聴者も一緒になってドキドキ感を味わえます。
ラブブ以外でも開封動画は人気があり、同じく中国の玩具メーカー「TOP TOY」で扱っている「クレヨンしんちゃん」や「おぱんちゅうさぎ」、サンリオのキャラクターなどのブラインドボックスの開封動画も公開されています。こうしたSNSでの後押しも現在のぬいぐるみブームを勢いづけているのだと思います。
●推しの「ぬい」ならいつでも推しと一緒
さらに、推し活という意味でも、ぬい活は重要です。推しのぬいぐるみをバッグに下げれば、「私はこの人(キャラクター)のファンです」と表明しているも同じ。推しを支えることにもつながります。
大切なぬいぐるみが汚れないように、ぬいぐるみが透明ポケットに入る「推し活用バッグ」や、ちょうどぬいぐるみを入れられる「推し活用ポーチ」も人気です。「3COINS」(スリーコインズ)や「WEGO」(ウィゴー)だけでなく、「タワーレコード」も推し活に使えるバッグを販売しています。
ぬいぐるみをびっちり並べて入れていると、「痛バ」(痛いバッグ)と呼ばれることもありますが、推しへの熱い思いを表現できます。
また、推しと一緒に旅行したい──そんな思いを抱く人のためにホテルチェーン「東横イン」は、ぬいぐるみにベッドやガウンを貸し出す宿泊プランを提供しています。推しもホテルのガウンに着替えて一緒に眠れるのです。
また、ぬいぐるみと一緒にいることは「いやし」にもつながります。どこへ出掛けても、ぬいぐるみがいつも一緒。観光スポットや喫茶店では、ぬいぐるみを入れて写真を撮ります。
季節に合わせてぬいぐるみの服を着替えたいと思ったら、ぬいぐるみ専用の服を取り扱っている雑貨ショップもあります。また、手作りしたい人のために手芸用品専門チェーン「ユザワヤ」では、ぬいぐるみ用の手芸パーツや撮影用の「ぬい用ステージ」も用意しています。
●自分の代わりにぬいで自撮り──分身としての役割も
最近はSNSでのルッキズムが加速していることもあり、自撮りをSNSに上げたくない人も増えています。でも、ぬいぐるみを写せば、ただの風景の画像よりもずっと自分らしくなります。そこでの体験や思い出も、自然な形で投稿できます。ぬいぐるみが自分の分身の役割を果たすのです。
ある20代女性は、友人とぬいぐるみを持って旅行に行き、ぬいぐるみの集合写真を撮っているそうです。自分たちの集合写真ももちろん撮りますが、SNSにはぬいぐるみだけの写真を投稿します。プライバシーも守れる上に、かわいい写真もたくさん撮影できて大満足の旅行だったそうです。
それぞれの目的がありつつも、ぬいぐるみと一緒に行動するぬい活は盛り上がる一方です。一部では、ぬい活の撮影マナーが悪いなどの声もあるようですが、ほとんどのぬい活をしている人はマナーの範囲内でぬい活を楽しんでいます。やってみたいけど勇気が出ない、という方は、こっそりぬいぐるみを忍ばせてお出かけすることから始めてみてはいかがでしょう。
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