夫婦が死亡した個室サウナ店を調べる警視庁の捜査員=16日午前、東京都港区 東京・赤坂の個室サウナ店「サウナタイガー」で夫婦が死亡した火災から22日で1週間。これまでにサウナ室のドアノブが外れ、非常ボタンも通じない中、2人が必死に脱出を試みた形跡が確認されている。警視庁捜査1課は業務上過失致死容疑も視野に、店側の管理態勢を調べている。
火災は15日正午ごろ発生。サウナ室内のベンチなどが燃え、美容室経営の松田政也さん(36)と、妻でネイリストの陽子さん(37)が死亡した。
サウナ室のドア付近で倒れている2人が発見された際、L字型の木製ノブは外れて床に落下。連動する「ラッチボルト」という突起が引っ込まなくなり、ドアを開けられない状態だった。ドアガラスにはこすられたような跡があり、松田さんの手にはガラスをたたいたとみられる皮下出血が確認された。
室内の非常ボタンは繰り返し強く押されたのか、プラスチック製カバーが破損。ただ、1階事務室にある受信盤は電源が入っておらず、店のオーナーは同庁に対し「2年前に店を引き継いで以降、電源を入れたことがない」と話したという。
室内には焼けたタオルが残されており、同課はガラスを割ろうとタオルでサウナストーンをくるんだか、室外の煙感知器を作動させようとあえて出火させたとみている。床に敷かれたすのこで熱風を避けようとした形跡もあった。
同店は「大人の隠れ家」とうたい、非会員は2時間で1万9000円から、会員は月額最高39万円の高級店。業界関係者は、サウナ室のドアについて「体調が悪くなっても押せば開けられる形状が常識だ」と指摘。「非常ボタンの電源が入っていないのはあり得ないし、高温多湿な環境では定期的な点検が必要だ」と憤った。
みなと保健所(港区)によると、同店は2022年7月、旅館業法に基づく営業許可を受けた。これまでに複数回、現地で検査したが、ドアノブや非常ボタンは項目外で、担当者は「課題があったことは認識している。今後検討しなければいけない」と話した。
警視庁は、オーナーや従業員らに話を聴くなどし、非常時の対応規定や、設備の点検状況などを詳しく調べる方針。